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シゴノセカイ《改訂版》  作者: 福乃 吹風
105/108

105話 現世大戦争⑤

 颯楽さんがいろいろと試してもらっているものの、まったく効果が現れなかった。それでも私のために助けようとしていたところ、凪嬉さんがやってきて来れる。二人が並ぶと分かりづらいなと感じてしまった。


「てっきり、兄さんも思穏くんの家にいるのかと思った」

「思穏くんの家に行ってるのは叔父さんのほうだよ。それより僕はだめみないなんだけど、解除できそう」


 うんと凪嬉さんはカステクラインを起動させる。


「カステクライン!葉、葉桜の鍵!」


 葉桜でできた鍵が現れ、それを持ち普通に鍵を開ける風にやるとカチャッと音が聞こえた。出ておいでと凪嬉さんに言われたから、出てみると普通に出られる。

 ありがとうございますと感謝を述べていたら、あちこちに邪人が現れてしまった。


「厄介の来たね、兄さん」

「そのようだね、凪嬉。ここは僕が祓っておくから、龍ノ姫を頼むね」


 気をつけてと凪嬉さんは言い、私の手を握って一緒に脱出してくれるみたい。邪人が現れているのに、ここは神様がいるはずだから大丈夫じゃないのと思ってしまう。

 私は真実を聞かされていないから、状況が読めないと建物から出たら、あちこちに邪人が放浪していた。凪嬉さんは術を込めながら、私の手を握って走ってくれる。


 凪嬉さんの術で邪人が襲って来ようとも弾かれ光となって消えていく。これが葉桜家の力と思っていると、凪嬉さんが急に足を止め、私も足を止めた。 

 もう戻って来たのかと思いきや、神社をでた光景が、あまりにも酷い状況だったからだ。


 あちこちからは煙が漂っていて、どこからなのか放送が流れ、地震が起きていることがはっきりする。龍桜神社に揺れがなかったのはおそらく龍が守っているから地震の影響がないんだと知った。


「あちこちで何かが起きてる…。もしかしたら雫ちゃん」

「なんですか?」

「アンジくんが雫ちゃんをここに閉じ込めていたのは理由があるのかもしれない。芽森が今逃げてる最中だから、芽森がいない間は雫ちゃんが役目を果たすことになってる。そう言われていたよね?」

「…私がこの領域から出れば、これよりもっと大きな災害が起きるってことですよね。凪嬉さん、私ここに残ります。どうすべきなのかわからないけど、私が逃げれば現世は終わっちゃう」

「アンジくんに事情を聞かないとならないけど、僕もここに残るよ。想心ならこの状況わかってくれるはずだし、アンジくんのことずっと考えていたのは、僕もわかってたから」


 想心のことを考える凪嬉さんの微笑みは、いつも以上に柔らかく、想心のこと想ってくれているお兄さんなんだなと感じた。


◆


 りんご農園へと入り、どれも美味しそうと思いながら、ある人を探していた。どこにいるのかなと探し回っていると、りんごを頬張っている弧美山美麗(こみやまみれい)を見つけた。

 わが来たことで美麗は最後の一口を飲み込んだとしても、わと目を合わせることはしない。


「美麗」

「璃子じゃなくて、違う人が来るのかと思ってたよ。で何しに来たの?」

「狐柱ど聞いで、何がなもかも美麗ど話すておがねぐぢゃなねごどがあったはんで来だんだよ」


 喋ると美麗は表情を変えずに黙りとしてしまい、伝わったかなと少しどきどきしてしまう。すると机に置いてあるりんごジュースを飲んで、手を合わせてごめんと謝罪された。


「最初は理解できたんだけど、後半何言ってるのかわからなかった。もう一回聞いてもいい?」


 ですよねと私の喋り方が標準語じゃないから分かりづらいよね。なんとか標準語に喋れるように伝えてみる。


「美麗と話しておかなくちゃならないことがあったから来た」


 今度は普通に伝わるよねと美麗の表情をみたら、もう一回と言われ、揶揄ってるでしょと、ついりんごを投げてしまう。ただそのりんごを普通にキャッチしてくれる美麗。

 まるで現世でやり取りしていた時とそっくりで、美麗とわはつい笑ってしまった。美麗はわのもう一人の姉妹でもある。わは焔という兄がいて、離婚をしてばらばらになっても、お母さんがあそこにお兄ちゃんが来てるって教えてくれてた。

 それでもその時はすでに再婚相手の子ども、つまり美麗がいたから、たとえ来ていたとしても美麗と遊んでいたな。


「ここに来たのは」

「璃子、帰ってほしいの。それにここにいてほしくなかったよ」

「だとしてもわは美麗を失いたくない」

「魂がここに来たらもう私たちは赤の他人。放っておいて、焔のところに行ってあげたらどう?そもそも私、妹なんてほしくなかったよ」


 美麗にそう言われて、グッと堪えながら、これが嘘だってことぐらいわかってるよ。わを傷つけて遠ざけようとしているんでしょ。一度家族になった絆は簡単に壊れるはずがない。


「てっきり弧美山としてやってくれていたなら、妹として見てた。だけどここではお母さんの旧名を使ってる。どういうことなの?」

「…言いだくねえ」

「そう。ならもう話は終わり。さっさと大好きな焔のところに帰れば!カステクライン!光、狐の虚偽!」


 美麗と一緒にいる狐がわに幻覚を見せ、何が真実で何が嘘なのか見極める必要があった。過去の記憶が現れ、どれもこれも懐かしい思い出。離婚をしていなかったら、わは美麗と巡り合うことはなかった。

 わが小さい頃から離婚していたとしても、大きくなっても焔と一緒に過ごしている姿を見せられ、全て嘘だと主張したら、現実に戻る。


「案外早いのね」

「あだり前だよ!こったの見せらぃでも、意味がね!姉妹になれで嬉すくてあったばって、なすて大事なごどしゃべってけねがったの?」

「言えるわけないでしょ!だって私たちは本当の家族じゃないから言えるわけがない!本当の兄妹がいるからこそ言えなかった」


 再婚したとしても、子供はときに疑いを感じてしまう時がある。わのおがが再婚したとき、その時はまだ三歳だった。ただ上の姉ができたというだけだったけれど、美麗はそうじゃなかったのかもしれない。

 美麗はわと仲良くしてくれていたのは、きっとおどが喜ぶと思っていたから、一緒に遊んでくれたりしていたのかな。


「こんな思いするんだったら、お母さんのところに行きたかったよ」


 その言葉を聞いてもわの心は悲しみを持たないようにしている。よくお母さんが言ってたから。

 ネガティブなことを考えすぎると、よくないことが起き続ける。だから璃子はネガティブなことは考えず、前向きに、ポジティブに切り替えてほしい。そうすることで、良いことが巡りにめぐってくるからねって。


「美麗のおがは美麗のように、美すいおがなんだびょんな」


 伝えていたら口元とお腹を押さえて笑っていて、伝わっているんだろうけど、あえてわの言葉をスルーされてしまう。


「璃子の言葉はわからないけど、そういうことだから帰ってよ」

「帰りだくね」


 美麗は笑いを必死に堪えているものだから、そろそろ標準語で話したほうがいいかな。そう思っているとそこにアンジくんが現れた。ただいつものアンジくんじゃないことで、美麗は表情を変える。


「随分と楽しそうな会話をしてたようだけど、美麗さん。美麗さんの役目はなんだった?」

「狐柱の役目は、龍ノ姫と関わりを持つ者に、真実を嘘とすり替えること」

「そう、その通り。それなのに見た感じ、その役目を果たしきれていないようだけどなんでかな?」


 美麗はそうねとアンジくんがこちらに来ようとした瞬間、トラップ魔法が起動し、萩の花がアンジくんに巻きついた。美麗はアンジくんに、今まで見たことがなかった表情で言い放つ。


「私はずっとこの時を待ってた。アンジくん。いいえ、邪神と言ったらいいのかしら?そろそろ冰春くんの体からいなくなってもらってもいい?」


 するとアンジくんは高笑いをして、まさかとカステクラインを起動させる準備をする。


「やっぱり狐柱には見抜かれていたか。真実と嘘を見抜ける狐柱には気をつけていたんだけどな。それでこんなので僕を拘束できると思った?」


 萩の花が枯れてしまい、拘束が解けてしまって、カステクラインを起動させようとしたら、美麗に止められてしまった。


「それにしても、璃子さんはいまだにわかっていない」

「えっ?」

「璃子さんは天の世界に来た時から、美麗さんの術にかかり、茜の団で過ごしていたってことだよ。そろそろ解いてあげたらどうなの?」


 どういうことと美麗の顔をみるも、美麗は表情を変えず、解くつもりはないと言っていた。そしたらアンジくんは、へえと冷たい笑みを浮かべながら言おうとすると、美麗はカステクラインを起動させる。


「カステクライン!光、狐の虚偽!」


 アンジくんに向けてその魔法を唱え、数秒アンジくんが固まるもすぐ動き出した。


「最悪な場面見せないでもらえるかな」

「最悪な展開が好きなんじゃないの?」


 そんなことはないよと言いながら、アンジくんがなにかを仕掛けそうと感じた瞬間のことだった。美麗がいきなり苦しみ出して、アンジくんはやっと入ったと冷笑する。

 美麗の姿がみるみると邪人となってしまい、そしてわは美麗にかけられていた魔法が解けていく。


 これは美麗の記憶と美麗が生まれてくる姿をみることに。生まれた瞬間、産声がなく美麗のおがとおどが心配をしていた。少しして遅れたけれど産声を発し、美麗のおがもおども安心をする。

 そこからは美麗の成長を見届け、そして美麗のおがとおどは離婚をし、わとわのおがと家族になった。懐かしいと思っていたけれど、美麗は一人の時、泣いていた。お母さんに会いたいと言っていても、わは知らなかった。美麗がいる場所はお母さんのお墓の前で泣いているからだ。


 離婚をしなくてもよかったんじゃないのかなと思うも、美麗が寝ている間におがとおどが話し合っている姿。


「これでよかったのかなって今でもっ」

「あなた。美麗のためにと思って、私との再婚を選んだ。もちろん、私も璃子のために再婚を選んだ。まだ二人は幼すぎる。もう少し大きくなったら、打ち明けましょう」


 それで美麗が少し大きくなった時、おがとおどは真実を美麗に話した。おがは無理にお母さんと呼ばなくていいよと。おどは美麗のおがと約束した意味を伝え、美麗はすっきりした笑みで前向きに過ごしていたが、美麗は難病を持つことに。

 ここははっきりと覚えてるし、何度もお見舞いに行ったな。


 病室をのぞくとそこにはなんと焔がいて、美麗はあることを言う。


「私が亡くなったら、璃子のことお願いね。お母さんから聞いてた。璃子に会おうと思って林檎農園に来てること。それでも会わないのは璃子を悲しませたくないからなんでしょ?」

「そうだ。生き別れの兄がいると教えてもらったら、璃子の笑顔は消えるかもしれない。それだけは一番に避けたいし、璃子の笑顔が大好きだから、その笑顔を守りたいんだ」

「素直じゃないお兄ちゃんだこと。そろそろ会ってあげなきゃ、余計に混乱しちゃうよ」


 焔はんーと考えていて、もうと美麗は笑っていた。そして悲劇が起きる。それは大きな地震によってわと焔、それ以外の人たちも災害で亡くなった。

 おがとおどに聞かされた美麗は絶望な顔をして、涙は止まらず、衰弱をしていく。おがはおどに言っていた。大好きな二人を失って、美麗が衰弱をしている姿を見るのが辛いと。


 そして美麗は次の年で、亡くなった。


 災害は誰も止めることができないから仕方がない。それでも現世に残っている人たちの痛みは、わたちにも影響が出る。なぜなら聞こえるから。仏壇に手を合わせて、想いを伝える言葉がわたちに届いていることを。

 美麗はわに伝えはしなかったけれど、おがは毎日のように言葉を届けてくれていた。


 美麗が迷わないように、見守っててあげてほしい。美麗が長生きできるよう、見守っててあげてほしい。もし叶うなら、そばにいてあげてほしい。


 そういう言葉がいつも届いていたのに、おがの言葉はいつの間にか聞こえなくなっちゃった。聞こえなくなった時期に、美麗が天の世界に来たとしても、美麗はシロノ国。

 ううん、わもシロノ団員で美麗が獣柱になった時点で、わは美麗に魔法をかけられ、りんごという意味でホノオノ国にいることになったんだ。わを巻き込ませないため。


 邪人になってしまった美麗がわを襲いかかろうとしていて、アンジくんはいつの間にかいなくなってしまった。美麗を救うにしても、どうやって救えばいいのと効果がない魔法を次々と唱えていく。

 どれも美麗には効果が現れなくて、さっき美麗が唱えていた魔法は萩魔法だったような気がする。萩魔法で美麗を救えるのかなと思っていたら、焔と育が来てくれた。


「遅くなって悪い、璃子」

「だいじょぶだ」


 二人が来てくれたことで、一緒に美麗を救うことに。


 ◆


 天の世界を くるめに任せて璃子がいるところへと行ったら、同時に育も登場して、一緒に来たという感じになってしまった。まあいいと邪人になってしまった美麗を助けるために来たが、予想以上だな。


「育、なにかを知っているんだろ?」

「邪人は萩の花が苦手だぁ。だから萩魔法を唱える」


 本当に救えるのか正直わからないが、全員が植物魔法を取得しているため、カステクラインを起動させる。


「カステクライン!植物、萩の思案!」  


 美麗が混乱をしている隙に、それぞれ得意魔法を当てていく。本当は傷なんてつけたくはないがやるしかない。やっていると焔副団長と想心の声が聞こえた。

 育がなにかを感じたのか想心の盾となり、なぜ美麗は真っ先に想心のほうへと行ったのか不明だ。


「ありがとうございます、育さん」


 育が援護をし、自分のところに来て、まず最初に謝られた。


「焔副団長、デステクライン使いになってしまってすみません」

「謝らなくていいから、状況を説明しろ」


 想心は包み隠さず全てを自分に報告をしてくれて、そういうことかと、もう一度萩魔法を唱え、美麗を混乱させる。みけ太が璃子に萩の首かけを三つ渡した。


「萩の首かけをかければ、邪人を追い出すことはできるかもしれないけど、獣柱の邪人は」

「わかってる。想心は妹のところへと急げ。駆けつけた時にはすでに、美麗は邪人になっていた。つまり時間は残されていないということ」

「はい。行ってきます」


 想心とみけ太は自分にお辞儀をして先へと進み、璃子が萩の首かけを分けてくれる。育ももらったことでまずは育が美麗にかけようとも、うまくいかず萩の首かけが枯れてしまった。

 今度は璃子がやると言い出して、自分と育が援護をしつつ、璃子がやろうとした時に、美麗の狐が璃子の瞳を見つめる。それによって璃子が動かなくなり、まずいと思い、育がデステクラインを起動させた。


「デステクライン!闇、タコの逆鱗!」


 タコが現れ爆発しその隙に璃子を非難させるも、璃子は完全に固まってしまっている。璃子、璃子と叫んでいたとしても、動いてはくれなかった。

 それによって育が暴走しそうであっても、育はわかっているから、怒りはない。


 璃子を安全な場所に移動をし、育いけるかと聞いたら、任ぜておげと言われたから、大丈夫だろう。時間はあまりないと自分と育は行動を移し、育の援護で美麗に萩の首かけをかける寸前だった。

 あと一歩のところでかけることができたのに、萩の花が枯れてしまい、美麗の攻撃を受けることになってしまう。


 そしてあちこちに生えている草や木々、花たちが枯れ始めていった。

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