103話 現世大戦争③
父さんと母さんに言われた通り、今大きなことが現世で起きている。けれど現世にいる人たちにとっては、災害的なものだと認識しているころだと思う。近くではないけれど、さっき地震が起きたから、始まっているんだ。
芽森ちゃんは無事、あの場所へと辿り着くことができると信じてる。あそこだけは龍桜家が知らない土地でもあるから、そこの土地さえ入れば僕らの勝利。ただどうなるかは不明な部分がある。すでに龍桜家の者が芽森ちゃんを見つけて、追いかけている場合もあった。
できれば僕も芽森ちゃんと一緒に行きたかったが、僕は待ってなきゃならない人物がいる。その人物に見つかってしまえば、僕らの敗北となるわけで、だから芽森ちゃんのご両親にその土地に連れてってもらうことにした。
ただ問題なのが、芽森ちゃんのお母さんだ。こっちの味方のか、あるいは龍桜家の味方なのか最後まで見抜けなかった。ただただ無事を祈るだけと窓を眺めていたら、久しぶりだね、楓と言われる。
振り向くと獣柱の格好をした李好がいて、気分はどうだいと言われたから、まあまあかなと伝える。
「芽森ちゃんをどこに逃したの?」
「さあ、わからない。お得意のもので調べたり、爽と一緒にいるんじゃないかな?」
「リヴィソウルで追えることができなくなった。つまり芽森ちゃんは覚醒したということ。こちらで引き取ることとなってる。今がた、龍桜家の長男が、君の弟とやり合っているのが見えた。どこにいる?」
「だから知らないよ。僕のところに来て、治してくれたらさっさと帰ったから、居場所なんて僕には」
見えてるはずだよと蛇が複数現れ、おそらく紅葉川家に代々受け継がれているものが、今も尚、紅葉川さん夫婦が見えていると思っているんだろう。時代は変わり、その能力はもうとっくに消えている。緋土家もそうだから、奏介を養子にしたんだから。
案の定、奏介は寅萩家と比べ物にならないほど、威力が存在しているから、外出があまりできない僕の代わりに、奏介に手伝ってもらっている。
「何度も言うけど、僕は芽森ちゃんの居場所はわからないよ、李好」
「わかったよ。もう時期くると思ってたんだけど、しぶといね」
「まあね。芽森ちゃんのおかげで、もう少し長生きできそうだよ。言っとくけど、僕はこれからもこの先も、蛇見家を許すつもりはないから」
それを告げると李好はそうかと少し寂しげな顔立ちをして、楓兄と叫ぶ奏介の声で、李好は消えた。消えたタイミングで奏介が大丈夫と来てくれる。
「平気だよ。辰弥くん来てる?」
「うん。予想通りに動いたよ。虎さんが雷大好きなの知らなかったみたいで、固まっちゃったから来ちゃった」
そうなんだねと奏介の頭を撫でてやり、辰弥くんが固まっていたとしても、父親がすぐ動き出しそうな予感だな。
「奏介、爽くんはまだいた感じ?」
「うん」
「じゃあ爽くんのこと手伝ってあげて。僕はやらなければならないことがあるから」
はいと元気よく返事をしてもらい、行ってもらって、僕はある場所へと向かうことにした。
◆
はぁはぁと息を切らしながら、公園にある山形遊具に座って亀を撫でている子を見つけた。
私はずっと探していた娘をようやく見つけた時、娘は亀柱として動いていたことにショックのあまり、デステクライン使いになった、初期に少し現れていたチーガと申す。
覚えてない人もいるだろうがと公園の中に入ると、兎は目をぱっちりさせて、パパと私を呼びながら亀を撫でるのをやめた。
「兎、一緒に帰ろう。ママも待っててくれてる」
「ごめんなさい。それはできないよ、パパ。兎はね、お姫様を守らなくちゃならない使命があるんだって。だからパパとママと一緒に旅立つことはできないって、この前言ったよね?だからパパとやりたくないなから、帰ってほしいな」
なぜよりによって兎が柱となる対象となってしまったのか、常に考えていた。どうせなら代わってやりたいという想いがあるも、拒否されてしまう。そのせいで妻は精神をやられていながらも、兎の帰りを待ち続けていた。
今度こそ連れ戻せるとしたら、ここしかないと思い、セブラに伝え、私は今、ここにいる。
私たち家族は、キャンプをしている最中に、兎が川に流されてしまったことで、私も妻も助けようとしたところ、溺死した。それぞれ好きな色が違ったから、それぞれ扉を開けてバラバラとなった時は焦ってしまったよ。
まさか兎がシロノ国に選ばれていただなんて、信じたくはなかった。兎は大きな罪を犯したわけでもないのに、なぜという言葉が離れることはなく、兎を見ていたら呼ばれる。
「ねえ、パパ」
「ん?」
「兎が溺れなかったら、パパとママと一緒に暮らせてたのかな」
その言葉を聞いておいでとやるも、昔みたいに来てはくれない。兎は再び謝罪をして、兎はカステクラインを起動させる。
「カステクライン!光、亀の甲羅!」
兎が撫でていた亀が段々と大きくなって、そして亀の甲羅が眩しく光り出す。私はデステクライン使いでもあるから、影響が出るのは当たり前で、怪我をさせたくないから、兎の前では魔法は唱えない。
結構、火傷を負ってしまい、兎が帰ってよと弱々しく言い出す。これくらい、どうってことないと火傷の部分がみるみる消えていった。獄の世界では、時に激しい行いが行われていることで、こういうのは慣れている。
兎は自分がやったことで、心を痛めているのはわかっている。兎の目が怯えていることも、この役目がどれほど辛いのか。まだ兎は五歳だ。
両親に甘えたい思いがありながらも、必死に頑張っている姿。本来ならば見守ってやりたいという思い。兎の成長を見ることはできなくなってしまったが、一緒にいられる時間はできてる。だから
「兎、覚えてるかな。あの時のこと」
兎はえっとと思い出そうとしていて、兎が答えを出すまで、答えを出さない。兎はこれかなという表情をしていて、答えを出す。
「キャンプに行った時?兎がまんまるのお月様、近くでみたいって言ったから、キャンプに連れてってくれたんだよね?」
「そうだよ。獄の世界で、綺麗に見えるお月様があるんだ。だからここで兎を失うわけにはいかない。私たちの娘なんだから、最後まで一緒にいさせてくれ」
兎は悲しそうな、寂しそうな笑顔を作り、パパありがとうと感謝される。ただ兎の気持ちは変わることはなかった。
◆
パパは必死に兎を取り返したいという気持ちは伝わってくるよ。だって兎はパパの娘だもん。でもね、でもね、パパ。兎は亀柱となった以上、避けられない運命なんだよ。どうしてパパとママと一緒にいられないのか、最初は不安もあった。
だけどパパとママがいなくても、強くいられたのは他の獣柱のみんながそばにいてくれたから、怖くても、寂しくても、その穴を埋めてくれた。兎だけが残るだなんて、嫌だよ、パパ。
兎はたった五年間しか現世で過ごせなかったけど、その五年間は兎にとって宝物であり、兎を強くしてくれる武器になってくれてる。たとえパパが兎を止めようとも、兎はそれに応え抗うことに決めた。
もしもあの時、パパとママがまだ生きていられてたらとなん度も思うよ。兎を失ったとしても、ちゃんと前を向いてくれてるって信じてくれてたから。それとおんなじことなんだよ。
一緒に天の世界で暮らせていたとしても、いずれ別れが段々と辛くなっていくなら、兎はパパから離れることを選ぶ。
パパ、そんな顔で兎を見ないで。いつもみたいに笑っててほしいよと、次の魔法を唱えようとしたら、パパが苦しみ出す。
「パパ!」
「来るな!」
パパの姿がみるみると邪人となっていき、パパはもしかしてずっと抑えていたのかもしれないと、カステクラインを起動させた。
「カステクライン!光、亀の甲羅!」
亀ちゃんお願いと亀ちゃんがもう一度光を放ってもらうも、邪人には効果が現れず、兎は邪人になってしまったパパに吹き飛ばされてしまう。
パパは兎が獣柱に選ばれた時から、邪人が侵入していたのなら、手強いかもしれないな。亀ちゃんが兎を守ってくれて大きな怪我は起きてない。ふうっと汚れた部分は魔法で綺麗にする。
獣柱のみんなの友達も邪人になっている可能性はあるよね。そうだとしたら、李好お兄ちゃんはどう考えるんだろう。みんなが無事でいてほしいと思っていたら、冰春さんがやって来る。
「意外とチーガは早くなったんだ」
「冰春さん、一緒にパパを助けて」
「兎ちゃん、君の亀柱の役目はなんと言われてたかな?」
「…お姫様の盾となり、襲ってくるデステクライン使いを祓うこと」
ちゃんと覚えてるねと冰春さんはパパに何かをしそうで、ついパパの盾となってしまった。冰春さんはどいてもらってもいいと言われるも、断る。
「パパに何かをする気でしょ?」
「兎ちゃんが助けを求めたから、助けてあげようとしているだけだよ。どうして怯える必要があるの?怖いことはしないよ?」
「絶対にする!冰春さんもその顔何?いつもの顔じゃないから、ここをどかない!」
これが僕の顔だよと冰春さんの魔法で、身体が動かなくなり、パパ逃げてと思っていても、パパの叫び声がした。
「やめてーーー!」
いやだ、嫌だよと涙が地面に垂れた瞬間、爆発が起きて周囲が煙に覆われる。冰春さんの舌打ちが聞こえ、なにがどうなってるのと冰春さんの魔法が消えたから、パパと叫ぶ。
パパの返事はなく、ただ一人はケホケホしながら兎を抱っこして、煙から出た。
「ふう。やっぱり、兎ちゃんのところにいた」
「えっと?」
「覚えてるわけないよね。兎ちゃんが赤ちゃんの頃、会ってた人って言えばいいかな。今はみんなからライゼ先生って呼ばれてるから、ライゼでいいよ」
ライゼ先生という人はパパから距離を離しつつ、兎を下ろしてくれた。煙が消えてもパパは邪人のままになっていて、ライゼ先生は手榴弾を投げ、カステクラインを起動させた。
「カステクライン!雷、蜜蜂の手榴弾!」
さっき投げたものが爆発し、蜜蜂がたくさん出てきて、パパに近づくと雷が出た。ライゼ先生の魔法でもパパは邪人のままとなっていて、カステクラインを起動させようとした時のことだ。想心さんとみけ太さんがやって来て、兎たちのところへと来てくれる。
「ライゼ先生、それから亀須兎ちゃん。芽森のところに行かなくちゃならないので、みけ太」
みけ太さんが萩の首かけを三つくれた。
「これをかければチーガさんは元に戻ると思いますが、邪人には注意してください」
「感謝するよ、想心くん。気をつけて」
お二人もと言い、お姫様のところへと向かっていく想心さんとみけ太さん。無事に辿り着くといいなと萩の首かけをどうやってパパにかけよう。
「兎ちゃん」
「ライゼ先生」
「僕が引きつけているから、その間にできそう?」
「兎は獣柱だから、ライゼ先生がやったほうがいいと思う」
それを告げるとライゼ先生はしゃがんで、兎を撫でてくれながら、あることを言われる。
「あの時、実は僕たちの家族もキャンプをしていてね。兎ちゃんが溺れてしまったところを目撃してたんだ。なんとかね、僕たちも助けようとしたんだけど、川の流れが速くて、三人を助けることができなかった。悔しかったよ。その悔いをここで果たしたいと思って。いいかな?」
そこで思い出したことがあって、そうだった。兎はライゼ先生の娘さんたちと遊んでて、娘さんたちに注意されていたのに、兎は川の中にあるキラキラをとりたかったんだ。まんまるでお月様のような形をしていたから。
「ライゼ先生の娘さんたちは?」
「新しい命となって楽しく過ごしてる。ずっとここに残ると決めていたのは、兎ちゃんが柱となっているから、兎ちゃんがピンチの時、助けられる存在になりたいなって。それが僕がやり残したことだから」
ライゼ先生は救えなかった兎たちの家族を、今度は助けられるように、ずっといただなんて思わなかった。一緒に救おうと言ってくれて、そこにライゼ先生の奥さんも、ママも現れる。
「びっくりした。てっきり獄の世界でみんなを守っているのかと」
「ライゼ、私の娘を泣かせないでもらえる?」
「いたたた。引っ張るのやめてよ。兎ちゃん、ポカンってしてる」
ママは少々怒っていて、ライゼ先生の奥さんは笑っていた。ママは兎のほうに体を向けて、ごめんねとぎゅっと抱きしめてくれる。
「ライゼはパパのお友達で、一緒にキャンプに来てたのよ。兎が柱となったと通知された時、一番に相談したのがライゼだったの。そしてパパはデステクライン使いになってしまったけど、私たちは兎がいるまでここにいようって決めてた。だから兎」
ママの優しい手が私の頭を撫で、一緒にパパを救おうって言ってくれて、うんと答える。
ライゼの奥さんもデステクライン使いで、ライトノ団員でパパと一緒にいたって、さっき教えてくれた。絶対にパパを元に戻すんだからと、それぞれ魔法を唱えて、最初はライゼ先生がパパにかけようとするも失敗しちゃう。
残っているのは兎とママだけで、なにかいい方法はないかなと考えていたら、夏海ちゃんが来てくれる。
「よかった。まだ兎ちゃんは邪人になってない。ライゼ先生、邪人の狙いは獣柱のみんなです。兎ちゃんを離れさせてください」
「どういうことなの?」
「兎ちゃん、言いにくいことなんだけど、冰春の狙いは獣柱のみんなを邪人に変えることみたい。藍雅と滾好も邪人になってみんなを襲ってる」
「…教えてくれてありがとう。覚悟はできてる。だから夏海ちゃん、他の獣柱のみんなにも伝えてあげて。兎はパパを救ってから、どうするか決めるから」
夏海ちゃんは心配そうな表情でも、ライゼ先生に兎のこと頼みますと言って、他の獣柱のところへと言った。ママもライゼ先生も、ライゼ先生の奥さんも大丈夫と兎を抱きしめてくれて、パパに挑む。
ライゼ先生が作ってくれた爆弾を使って、その間にママが試してみるも、パパが払って破けてしまった。残るはあと一つと三人がパパに拘束魔法を唱えて、兎は思いっきり走る。
行け、兎とママの声とともにジャンプをして、パパの首にかけられることができた。パパは元の姿に戻って倒れてしまい、呼びかける。
「パパ、パパ!」
それでも起きようとはせず、失敗だったのとママたちもそばに寄って呼びかけていると、ゆっくりと目を覚ます。兎は思いっきりパパに抱きついてよかったと伝えると、パパの大きな手が背中に回って、助けてくれてありがとうと言ってくれた。
ただまだ終わってないとパパから離れて、邪人が再びパパに入らないように邪人を倒さなくちゃならない。
そう思った時のことだった。油断をしていたわけじゃないのに、侵入されて、兎はパパたちから離れる。兎とママが叫んで来ようとするから、来ないでと叫んだ。
邪人になんか負けないんだからと抵抗し続けていると、またパパのところへ行くよと囁かれ、その隙に兎の体は邪人に乗っ取られちゃって、獣柱三人目となっちゃった。
◆
兎が邪人となってしまったことで、妻が嘆き、邪人になってしまった兎は私たちを襲いかかる。妻を避難させるべきか迷っている暇はなく、とにかく兎を止めなくてはならないとデステクラインを起動させた。
「デステクライン!闇、雪狐の瞳!」
雪狐の瞳を見させ、凍らせることができればとやってみるも、邪人には効果がないようで、一瞬で雪狐がやられてしまう。ライゼの妻である紗耶は私の妻を避難させてくれたようだ。
あのままいけば妻はデステクライン使いになってしまうのは避けたい。デステクライン使いになってしまうと、一度暴走があるからそれを止めるのにセブラの力が必要になるからだ。
兎に傷ができないように魔法を唱えてみるも、どれもこれも止めることが不可能だった。ライゼも必死に兎を止めようとやってくれるも効果はなく、そして私とライゼは兎に敗北した。




