102話 現世大戦争②
想心たちが来る数分前……
龍桜辰弥が侵入して来て、すぐさま芽森さんと爽はある場所へと向かったけれど、うまく行くかはわからない。紅葉川家夫婦と葉桜家夫婦は別件で動いてもらってるし、ここにいるのは僕と楓兄だけ。
「ねえ君、芽森ちゃんがどこにいるか知ってる?」
僕がまだ幼いからって作り笑いで僕に近づき、威嚇をするため白虎を出す。それを見た瞬間、芽森ちゃんはどこだと五龍が現れても、びくともしない。なぜなら僕は龍が大嫌いだ。
僕の兄さんたちを殺した家系についている龍は残らず排除したい。そういう感情が芽生えていたとき、出会ったのが楓兄だった。みけ兄が情緒不安定な時期、みけ兄のそばにいたけど、相手にされず、とぼとぼと歩いてたら、楓兄と出会う。その頃、僕はまだまだ幼かったことで、両親がなにを言っているのかわからなかった。
その意味を理解したとき、僕はどれだけ泣いたのか今でも思うよ。みけ兄は事故じゃなくて、龍に殺された。龍がいるはずないと世間ではそういうのが目に見えていたから、事故として処理された。
悔しかったよ。みけ兄も、会ったこともない大樹兄のことも、写真を見なくちゃ忘れてしまう辛さを。もしなにもなければ二人は僕といっぱい遊んでくれてたのかなって、たまに思うことがある。それを必死に埋めようとしてくれる楓兄も、想心のように僕を育ててくれた。
僕と楓兄は失った兄弟の穴を埋めるようにしている。それでもいい。もし、もし会えるならみけ兄と大樹兄、それから想心に会いたいよ。
力を貸してと白虎は僕の想いに応えて動き出し、一柱の龍に噛み付く。辰弥は龍を傷つけたことで、弓矢を放たれるも、避けた。
「芽森ちゃんをさっさと返してくれれば、痛いことはしないよ。芽森ちゃんの居場所を教えて」
「教えるわけがない。それに勝手に紅葉川家に侵入したから、通報してもいいんだけど。僕はまだ五歳だから保護され、あなたは逮捕される」
「僕は神に選ばれた者だ。警察に逮捕されることはない!」
五龍が一斉に動き出して、僕の白虎は一度僕のところに戻り、もくもくと黒い雲が出来上がってくる。これはさすがに雷打たれたらアウトだなって思うのがオチだけど、白虎は雷が大好物なこと忘れないでもらえるかな。
ごろごろと鳴り響く雷の音。辰弥はいかれた笑い方をして、やっちゃえという合図で雷が落雷する。けれど僕の白虎が全て吸収したことで、辰弥は数秒固まっていた。
はあとため息が出るほどで、しばらくは動きそうにないなと思い、楓兄が心配だから見に行くことに。
◆
実験開始と結さんが絶賛していたものを大砲に詰めて、ドッカーン。現世には影響が出ない優れた爆弾を開発し、ライトグレーノ団員たちに持たせて、爆発させていく。
本当は智人も一緒に行動する予定だったけれど、智人は会っておかなくちゃいけない人がいるらしいから、行ってもらってる。
ねずみはカステクライン使いになっても、たまに遊びに来てくれて、嬉しかったな。弟と仲良くやってるらしいから、ねずみは今も弟と一緒に夏海ちゃんの帰りを待ちながら、天の世界と獄の世界を守ってる。
さてとそろそろかなと次の準備をしようとしたら、たくさんの烏に囲まれちゃった。それでもドッカーンと一発放つと最悪と身だしなみを気にしている滾良ちゃんの登場だ。
「烏になってるからいけないんだよ」
「あのねー!この獣柱の服高いんだから!」
「そんなの知らないよ。滾良ちゃん、僕がずっと獄の世界にいる理由わかってるんでしょ?だったら」
「ごめん。涼真の言いたいことはわかる。だけどこれは避けられない運命なの。お願いだから、もう生まれ変わってよ」
滾良ちゃんは新たな烏を呼び、僕はネズミ隊を出す。本当は滾良ちゃんは猫柱に選ばれたかったみたいだけど、苗字そのまま烏柱となっちゃった。それを知ったとき、僕は心が蝕んで一時期はグレーゾーンまでいったことがあったな。
そんな時、救ってくれたのが滾良ちゃんで、滾良ちゃんがどんな役目をしているのかもわかってたから、僕はずっと留まってた。
「僕はなにがなんでも、滾良ちゃんと一緒に旅立ちたい。あの時の言葉は嘘だったの?」
滾良ちゃんは黙ってしまい、滾良ちゃんがカステクラインを起動させているのが目に入る。僕とやるっていうのと僕もデステクラインを起動させる準備をする。
滾良ちゃんに向けて魔法なんてかけたくないよと思っていても、起動させた。
「デステクライン!闇、ネズミの食べかす!」
ネズミたちが食べた食べかすが爆発するも、滾良ちゃんのペットである白い烏が風を起こしたことで、滾良ちゃんもカステクラインを起動させる。
「カステクライン!烏、鴉の瞳!」
鴉の目が僕の前に来たとしても、効果はないよとデッドマウスを出して身代わりをしてくれた。あまり派手な行動はしないのは現世にも影響が出るからなんだと思う。
そんな時だった。いつも想心と一緒にいたアンジが現れ、冰春くんと動揺をしていた。
「てっきりミズノ王国にいるのだと」
「ねえ、滾良さん。烏柱はなんのためにあると思う?」
「いきなりどうしちゃったの?烏柱はそうね、鈴翔のように伝播役ではないけど、その代わり危険がないか監視すること」
アンジはお見事と拍手をしていたとしても、なんだろうこの感覚。今までにない何かが起きようとしている。これを早く結さんたちに伝えなくちゃと、こっそりいかせようとしたネズミが餓死した。
「伝播できそうな動物たちは全滅させたから」
「なら想心が大事にしていたカワウソもそうってことなの?」
「それはしないよ。だって僕がこの手で殺してあげるって決めてるから」
いつものアンジじゃないと確信が持て、想心、ごめんとさっき大砲で発射させていた爆弾を何個か当てる。それは萩の花も含まれているから、邪人が出ればいいと思っていた。けれどアンジは変わってしまったままのアンジのままで、そして最悪な事態が起きる。
邪人が僕の心に侵入して蝕み始めて、滾良ちゃんがなんとか邪人を出そうと僕に向けて魔法を唱えるも効果が薄い。
「あれ?意外とすんなりいかないや。伊雪さんはすぐ邪人になってくれたのに」
「冰春くん!なんでこんなことをするの!今までは邪神を倒すために時間をかけていたじゃない!」
「確かに僕は邪神を倒すために動いてたかもしれない。けど気づいたんだよ。想心がまたいっちゃうなら、想心の魂を食べちゃえばいいって」
想心の魂を食べるってと、ライトグレーノ団長だから、そう簡単に奪わせないよ。本当はやりたくもなかったけれど、僕のデステクラインがみるみるとカステクラインへとなっていく。
ふうっと邪人が抜けて逃げ出そうとするから、邪人を捕まえて最後の一個と持っていた爆弾がないことに気づいた。
えっと考える暇もなく邪人がその爆弾を持っていたことで、まずいと思った瞬間に、滾良ちゃんのほうに投げられてしまう。滾良ちゃんは防御魔法をしようとしたところ、そこにねずみちゃんとファウが来てくれた。
間一髪だったとほっとしていたら大きく揺れが起き始め、僕たちは影響出ないけど、現世にいる人たちが危険になる。
「そろそろ、僕行くね」
「行かせるわけないでしょ!」
「滾良さん。早く絹鬼団長の邪人倒さないと、絹鬼団長の魂はなくなるから」
ふざけないでと叫ぶ滾良ちゃんであっても、アンジはさっさと行ってしまった。そして僕は再び邪人に体を乗っ取られ、さっきより抵抗がうまくできなくなって、滾良ちゃんたちを襲う羽目になる。
◆
冰春は完全に邪神に乗っ取られたって認識でいい。早く李好に伝えたいのに、連絡できる動物たちがいなくなってしまった。カステクラインを利用したとしても、李好はそれ以上のことをしているから、カステクラインの連絡は控えてた。
だから冰春はそれを利用して、邪魔させないようにしてる。とにかく他の獣柱と合流をして、李好の指示をもらうしかないかもと、邪人になってしまった涼真に魔法を唱えていく。
涼真とは小さい頃からの仲で、いつも研究ごっこで遊んでたな。涼真のご両親が研究員で、たまに一緒に研究所を見学させてもらったり、まだ幼いこともあって白衣はぶかぶかでも笑い合っていた時期を思い出す。
現世では叶わなかった研究者を、この世界でやりたい放題している涼真の噂は私にも届いてた。ネズミが多すぎて気色悪いし、いつも変な料理を食べてるとかで、不安はあった。
こっちでは死にはしないけど、なぜ変なものを食べ続けるのだろうかと。それで私はお弁当を作って、持って行ったことがある。
今更会ってこれよかったらって渡せるものじゃないかもしれない。なぜなら私は涼真が作った料理で死したから。最初はわからなかった。ただお弁当を持ってた時、うっかり聞いてしまったこと。
「智人、僕さ。間違えて違うもの、滾良ちゃんに渡しちゃって、それで亡くなっちゃった。合わせる顔ないよ」
「…涼真。ここに来てから変なもんずっと食ってるの、滾良ちゃんのためなのか?」
「…うん。正直まずいけど、滾良ちゃんを苦しめた罰だから」
それを聞いて私は会うことをやめ、お弁当を持ち帰った。私のために変なもの食べないでと、直接言えばよかったのに、覚悟がなかった自分に反吐が出た。
それでも涼真は私が知っている涼真で、普通に過ごしている姿に、少しずつ会おうと思ってたんだよ。
涼真、戻って来て。ちゃんと話したいことがあるからと、次の魔法を唱えた。
「カステクライン!光、烏の口笛!」
これは烏を呼ぶためのカステクラインであっても、この魔法を唱えた意味がある。それは涼真がずっと探していたネズミだよ。涼真がここに残り続けているわけは、私が獣柱に選ばれたから、今もずっとここにいる。
私たちはいずれ魂がなくなることを理解していたとしても、涼真はシロノ団に選ばれたかったんだよね。選ばれたら私たちに会えるから。白いネズミはね、とある神様の使いとして縁起がいいとされている。だからこれはぴったりの子に渡しておくよ。
「ねずみちゃん、この子を持っててあげてほしい。涼真がずっと探してた子」
「いいんですか?」
「もちろん。それに涼真はズルすぎるな。だってもう涼真がほしい子、団にいたんじゃない」
そう。私はもう一つ、涼真の前に現れなかった理由があった。それは涼真が好きそうな名前の女の子。年差はあったとしても、涼真はずっとねずみちゃんに救われていたんだね。
この子を泣かせることはしないであげてよと、ねずみちゃんの涙を拭い、私はカステクラインを再起動した。
「カステクライン!烏、鴉の瞳!」
鴉が涼真の瞳を奪い、固まっていることで邪人が現れ、真っ先に邪人を祓った。これでひとまずは安心でいいのよねと私の烏が肩に乗っかる。
倒れた涼真はねずみちゃんとファウが声をかけており、目を覚ましたら元に戻ってるのか疑問だった。
一番近くにいるのは兎がいる場所であっても、邪魔はしたくはないけど行くしかなさそう。
「二人とも、涼真のことお願い。さっきのことで嫌な予感がするの」
「待って…滾良ちゃん」
ゆっくり体を起こす涼真であり、そばによって、どうしたのと思っていると、涼真は私の手に何かを握らせる。それをみるとそれは猫のマスコットだった。
「どうして猫なの?」
「以前、言ってたでしょ?烏柱じゃなくて猫柱がよかったって。僕がねずみ大好きだから、それを狩りにいけたらって思ってたんでしょ?」
涼真に見抜かれていたような感覚で頬が熱すぎる。ねずみちゃんもファウくんも笑っていて、ありがとねとぶっきらぼうに返事をしてしまう。これは大事にしようとマスコットを取り入れをして、兎の元へ行こうとした時のことだった。
侵入された。
異変に気づいた涼真たちであっても、ここから離れなくちゃと。距離を離す。なんで、邪人を倒したはずなのにどうしてと、邪人に体を支配され、獣柱二人目の邪人となってしまった。
◆
「滾良ちゃーん!」
僕が手を伸ばそうとしたら、ねずみちゃんが駄目と僕の手を握る。いやだ、いやだ、嘘であってほしいと思いたくても、滾良ちゃんは邪人になっちゃった。
「ファウ、誰でもいいから邪人になってしまったこと、報告しに行って。団長も危険になるかもしれないから急いで」
ねずみちゃんがファウに指示をして、ファウは動揺しているも行ってもらう。まさかアンジ、これが狙いだったのと怒りと憎しみ、そして悲しみが溢れ出してくる。
滾良ちゃんを救おうと、ねずみちゃんの力で起き上がると、チューっと僕の肩に乗るネズミがいた。僕がずっと捜していた白いネズミ。獄の世界や天の世界では白い動物たちはすべてシロノ国にいるから、欲しくても手に入らないと思ってた。
「さっき滾良さんが団長にってくれた子です」
「そっか。じゃあ尚更、滾良ちゃんを救わなくちゃね。って言っても僕、さっきので体力消耗しちゃったから、ちょっと休みたい気もするけど仕方ない。手伝ってくれる?」
僕の肩に乗っている白いネズミはいい返事をしてくれて、僕とねずみちゃんで滾良ちゃんに挑もうとした時に、ちょうど想心とみけ太がやって来る。
想心は状況を把握して、みけ太が萩の首かけを三つくれた。
「邪人は萩の匂いが弱点らしいから、邪人になってしまった獣柱を助ける方法はこれしかない。俺は芽森のところに行かなくちゃならないから」
「わかってるよ。ありがとう。想心、これよかったら持ってって。何かの役に立つかもしれない」
ありがとなと想心はみけ太と一緒に、芽森ちゃんが隠れている場所へと行き、ファウが戻ってきてくれたことで、一つずつ渡しておく。
うまくいくかわからないけど、僕たちしかいないから、やるしかないとカステクラインを起動させた。
「カステクライン!毒、タテガミネズミの鎧!」
毒の鎧を着ているタテガミネズミが現れて、邪人になってしまった滾良ちゃんに攻撃をしてもらう。ねずみちゃんは拘束魔法を唱えながら、滾良ちゃんに萩の首かけをやろうとしたけれど、失敗してしまった。
ねずみちゃんが襲われそうになり、タテガミネズミに盾となってもらう。残りは僕とファウが持っているのみとなり、うまくできるかわからない。
「団長、どうします?」
「爆弾はすべて使い切っちゃったし、このまま放置するわけにもいかない。それにそれぞれ配置についているみんなも、この状況ならかなりきついと思う」
「自分が今度やってみるから、姉ちゃん、涼真さん。援護頼みます」
ファウがやってくれるみたいで、僕とねずみちゃんはカステクラインを起動させ、滾良ちゃんを足止めする。今度こそうまくいってほしいと願うも、気づかれてしまい、滾良ちゃんに萩の首かけを壊されてしまった。
距離を離してとファウに伝えながら、タテガミネズミに指示を与えつつ、いつもならすぐ閃くのにどうしてよ。何か、何かいい方法があればとやっていたら、ピンと閃いた。
「ファウくんって錬魔法覚えてる?」
「覚えてます。この日のために、二段魔導士になりましたので」
「じゃあファウくん、ねずみちゃん。滾良ちゃんを閉じ込めてほしい」
「団長は?」
本当はこの方法やりたくはないけど、滾良ちゃんを取り戻せるなら、やってみる価値はある。二人にはできるだけ大きな鳥籠を作ってもらい、その中に僕と滾良ちゃんが入った。
二人は心配な目で僕を見ているも、唸り出す滾良ちゃんであって、襲いかかってくる瞬間にやろうとした時のことだった。
滾良ちゃんのペットである烏が僕の前に現れ、最悪な事態が起きてしまう。滾良ちゃんの烏が、持っている萩の首かけを引きちぎられてしまった。
しまったとタテガミネズミが助けてくれるも、すぐタテガミネズミは滾良ちゃんによって消されてしまい、グサッと突き刺さる。
ねずみちゃんとファウが叫んでいて、カステクラインが壊れない限り、大丈夫と思っても傷が癒えない。二人とも逃げてと僕はバタンと地面に倒れ込んだ。
◆
団長のそばにいたいと思って、そばにいたけどまさか団長がやられるだなんて思わなかった。とにかく団長を救って逃げ出さないとと思っていても、滾良さんはわずみたちを襲いかかる。
智人副団長は別の獣柱の相手をしているから、連絡は不可。和希だけでも逃がせたらいいけれど、簡単に逃してはくれそうにない。
どうすればと思っていても、わずみと和希もやられてしまい、滾良さんが行こうとするから足を掴む。絶対に逃さないんだからと掴んでいたら、蹴り飛ばされてしまい、滾良さんは行ってしまった。




