おのれの罪とコカリリコ
広大な海から吹く、風は冷たい。
ここ中央都は、海の近くに建築された都で魚などの売主が多く出店している。
そして、彼らのような駆け出しの冒険者が集まる始まりの都と呼ばれていた。
『ジジィ、今日もコカリリコの尻尾と内臓、あと卵くれや?』
『おー姪っ子よ! 話は聞いてる。昨日作った料理はこれまでで一番おいしかったみたいだなぁ』
『当たり前だ。母ちゃんにおいしく食べてもらいたくて、必死に料理の勉強したんだから』
『そかそか、なら今日はもっとおいしく作らなきゃな!』
商品を受け取り、『うんっ!』と笑顔を見せる。
彼の名前は、シンカ・アクリエート。 ナガリコ村から避難した父と、中央都で出会った母の間に生まれた1人息子である。 16歳で年相応のバカをしながら、楽しそうに生活していた。
買い物客の間を通りながら、急いで自宅に戻る。
『ただいま!』 と、大きな扉を開ける。
『ただいま シンカ・・・』
弱っている女性がシンカを迎え入れる。
『大丈夫』と心配する息子の姿に、うっすらとほほ笑んだ後、『大丈夫だよ』と優しく答える。
『今日のはね、じいちゃんに頼んで、今までで一番おいしいコカリリコの身を買ってきたよ』
母の瞳を不安そうに見つめている。
『こんな体になっちゃったけど、大好きなコカリリコならこの体も食べてもらえるわ』
シンカの母、グレイド・アクリエートは、ウォイズ・リパスという中央都の周囲の海でとれた魚を食べることで発症する病気にかかっていた。
全身の筋肉や血液から水分がなくなり、治療をしなければ1か月以内で死にいたる恐ろしい病気だった。
シンカは、コカリリコの尻尾の骨を取り、内臓と卵を処理した物を、大きな鍋にリバース・ウェーブを製塩した新鮮な塩と味噌、だしをいれた沸騰水に入れて煮込む。数分煮込み、沸騰水に若干の紫色が付いたらコカリリコの身を安全に食べれる合図。
こぼさないように、お玉をつかって慎重に器に入れる。
スプーンで一口分の量を救い、母の口元へ運ぶ。
昨日までよりも今日は煮込む時間を長くしたことで、身が柔らかくなり、食べやすいようだ。1度もむせることなく、器に入っていた分を食べ終えた。
『ありがとね、シンカ。私なんかのために、』
骨の周りを若干の筋肉で覆った腕を震えながら、ゆっくりとシンカの頭をなでる。一切の体温を感じなかったが、母の温もりを今まで以上に感じた。
『ありがとう、お母さん。ゆっくり休んでね』
『うん』と、母は答える。
瞳を閉じて休む母の姿を見た後、ゆっくりと中央都から離れた森の中に足を進めた。
自宅から5キロ離れた森の中、通称コカリコ・ルート。
直径100キロを超える大きな森。数多くのモンスターが生息していて、特に鳥類のコカトリコが多く生息している。森を超えた先に、ナガリコ村という小さな村があり、コカトリコの被害から逃げた者たちの多くが、この道を通ることからコカリコ・ルートと呼ばれていた。
『グェ、グエ、グェ!』
森の中を歩くシンカの元へ、1匹のコカトリコが叫ぶながら向かってくる。
急接近する鋭いクチバシをよけ、コカトリコの背後に回る。右手にためた魔力を掌に集中させ、軽い力でお尻を叩く。
『グェ!!!』
驚いたコカトリコを掌で押し、勢いよく木へ叩きつける。
動かないことを確認し、援軍が来る前に急いで目的の場所に足を動かす。
草木をよけ、小型のモンスターの攻撃をよけながら進むと、古びた神殿を見つる。神殿の中の、モンスターの姿が掘られた石造の前に立ち、『パンパンッ』と2礼した後、深く身体を曲げる。
『どうか、神様、母の病気が治りますよに』
学力のないシンカにできることは、神殿の神様にお願いすることだけだった。
コカリリコは人が食べれないものではないが、率先して食べようとしない。しかし、貧困家庭のシンカには、それを買うだけのお金しかなかった。
『母が病気にかからなければ』と、毎回の帰り道でシンカは考えている。
自宅の前の扉越しに聞こえてくる母の痛みを我慢する声と吐血音。
『原因は、俺なのに・・・』
すべてはシンカが釣ったコカリリコを食べたことから始まった出来事であった。
新章 中央都へんが始まります。
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