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「役立たず」と雪の辺境に捨てられた保存魔法令嬢は、眠れる古代倉庫をひらく  作者: 小竹X


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083 公開板で開く扉

 半円形の石門の前で、わたしたちは板を下ろした。


 四つの差込座。

 左から、公開配分板の写し、監察局の照合札、北辺立会札、王領側の立会札。


 差し込んだ瞬間、石門の表面へ文字が浮いた。


『不足地』

『待機』

『返し』

『責任』


 やはり印ではない。

 扉は札に書かれた中身を読んでいる。


「北門外、診療所、南街道仮宿」

 わたしは公開板を読み上げる。

「待機三日、返却不能一、返却予定二。代替路は白霧港経由、責任名は公開配分板記載どおり」


 読み上げに応じて、石門の文字がひとつずつ淡く光った。

 次に監察局の上席官が押収原簿との照合を読み上げる。

 カイル様が北辺立会として、白霧港側の返送責任と代替路の引受を告げる。


 最後に王領側の官が前へ出た。

「王城内倉整理役として、開扉後の保全を」


 そこまで言ったところで、石門の文字が赤く滲んだ。

 零番灯の線が座の足元を走り、『責任』の文字で止まる。


 扉が低く鳴った。


『公開外保全 不適』


 王領側の官が息を呑む。

「なっ……」


「保全だけでは足りないんです」

 わたしは石門を見上げた。

「返す先まで含めて責任を書かなければ、ここは開かない」


 男が黙りこむ。

 彼は倉を守るつもりで来たのではない。

 開いたあと、王城の内側へ戻すつもりで来ていた。

 それが扉に弾かれた。


 監察局の上席官が男へ冷たく言う。

「王領側の立会文言を改めろ。公開配分への異議は、開扉後に板の前で述べるべきだ」


 男は歯を食いしばり、それでも書き直した。

『王領側立会。公開配分決定に従い、出庫記録を共有する』


 今度は『責任』が白く戻る。


 ごう、と内側から風が抜けた。

 半円の石門が左右へ開き、冷えた空気といっしょに、幾層もの棚札が現れる。


 食糧、乾燥薬草、播種包、外倉修復具。

 けれど目を奪われたのは量ではなかった。

 棚の前に、全部「先出先」「戻し先」「開示先」の札差しがある。


 聖域倉庫は、隠すための倉ではない。

 開いた瞬間から、渡し先まで書かせる倉だった。


 カイル様が小さく笑った。

「ずいぶん性格の悪い倉だな」


「ええ」

 わたしも少しだけ笑う。

「でも、こういう倉なら好きです」

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