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「役立たず」と雪の辺境に捨てられた保存魔法令嬢は、眠れる古代倉庫をひらく  作者: 小竹X


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072 荷止め町の白い札

 王都北門外の倉場町は、町そのものが立ち往生していた。


 門前へ続く道の脇に、荷車が何十台も並んでいる。

 麦袋、豆樽、干し草束、薬箱。足りないはずの品が、雪の上で白く息を吐くみたいに止まったままだ。


「襲われた跡じゃない」

 カイル様が言う。

「誰も責任を取っていない顔だ」


 荷札を一枚抜く。

 白紙に近い薄札へ、短くこうあった。


『照合待ち』


 別の荷にも、また同じ札。

 行き先も、待機日数も、代替路もない。ただ待て、とだけ書かれている。


「これじゃ止まるしかありませんね」

 わたしは町外れの小屋壁を借りて、仮板を立てた。


『本日通行』

『明朝待機』

『別路回送』


 その下へ、品と土地を書く。

 熱病用の粥材、北門外へ。干し草は明朝待機。豆樽は南寺院裏の炊き出しへ別路。


「そんな勝手を」

 町役人らしい男が青ざめる。

「王都側の照合印がないと通せません」

「だから止まっているんです」

 わたしは白札を指先で弾いた。

「照合の中身が空です。待てる日数も、代わりの道も、誰が受けるかも書いていない」


 カイル様が北辺印の短札を板へ留める。

「責任は俺が持つ。今日崩れる線だけ先に通す」


 ニナは薬箱を開けながら、列の端にいた咳の子を見つけて眉を寄せた。

「迷ってる間に具合を悪くしてる。都の外で診る人も足りてない」


 わたしは零番灯を板の脇へ当てる。

 保存魔法を薄く流すと、白札のいくつかが灰へ変わった。

 空の待機ではなく、意味のある待機へ書き換わったのだ。


 すると荷車番たちの顔つきも変わる。

「南寺院裏なら今日中に回せる」

「北門外の粥場へなら、うちの馬を出す」


 止まっていたのは荷じゃない。

 次に何をすればいいか分からない人の手だった。


 午後遅く、最初の三台が倉場町を抜けた。

 その先、北門外の空は鈍い灰色で、風に混じって人の叫びが届く。


 並んでいるだけの声じゃない。

 列の先頭が、どこかで割れた音だ。

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