049 断り札は公開で返す
捕まえた二人組は、口の堅い密輸屋というより、雇われて荷を渡す手だった。
けれど、それで十分だった。
押収した書付には、見本荷の送り先、宴札の控え、そして婚約打診の返事を急がせる理由が揃っていた。
返事が通る前に港へ触る筋を作り、通らなくても見本だけは上へ回す。
白霧港の価値を、表からも裏からも囲う算段だ。
「内々に断るだけじゃ、なかったことにされますね」
わたしが言うと、カイル様が頷いた。
「密室で返事を取れば、向こうの言い分だけが残る」
だから返事も、荷札みたいに公開で返すことにした。
積み替え庭へ机を出す。
辺境伯家の立会い、港の古参、診療所、燻製小屋。
港を支える人たちの前で、婚約状と条件書、押収した見本荷の書付を並べた。
「白霧港は、婚約を港外持出の許可証にしません」
わたしは返答文を読み上げる。
「北方種子庫の見本物、播種計画、低温保存品は、辺境伯家と現場立会いのない閲覧・持出を認めません。縁談を語るなら、まずこの条件に異議がないことを公に示してください」
少しだけ間を置く。
「わたし自身も、港の品目に付属しません」
風が一度、紙を鳴らした。
静かだったけれど、逃げ道の少ない言葉になったと分かる。
使者は顔色を変えた。
「そのような強い言い方をなさらずとも」
「強くしたのは、そちらの別紙です」
わたしは条件書を指した。
「花嫁の話に、種子庫の閲覧権を混ぜたのはそちらでしょう」
カイル様が返答文へ辺境伯家の印を押す。
「この返書は公開記録として残す。以後、白霧港への接触は港外持出控と同じ扱いだ」
使者はそれ以上、丁寧な言葉を続けられなかった。
紙を受け取り、礼だけ残して去っていく。
夕方、その返書への返事はずいぶん早く来た。
今度は婚約状ではない。金箔押しの正式招待札。
『王弟派春待ちの宴』
『北辺再生の功績を語る席につき、リーゼ・ハルフェンおよびノルトフェルト家代表の臨席を請う』
婚約を密室で決められないなら、宴席へ引き出す。
分かりやすいくらい、次の場所が決まった。




