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「役立たず」と雪の辺境に捨てられた保存魔法令嬢は、眠れる古代倉庫をひらく  作者: 小竹X


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047 港外持出の書き方

 偽装札の木箱を開けると、中に入っていたのは銀貨になる品ではなかった。


 薄い麻包みが三つ。種子庫の白粉を少量ずつ移したもの。

 小さな紙管が二本。芽床の湿り具合を書いた控えの切れ端。

 それから、土の癖を書いた札の写し。


「見本、ですね」

 ニナが静かに言う。

「盗むっていうより、確かめて持っていく感じ」


「一度に抜けば目立つからだろう」

 カイル様が麻包みを持ち上げる。

「少量ずつなら、戻り箱や試料箱に紛れる」


 わたしたちはその日のうちに、港の戻り箱と持出箱を全部、積み替え庭へ集めた。

 今までは入る荷の札ばかり整えていたけれど、出る荷の控えはまだ甘かった。

 芽吹きが見えた途端、そこを突かれたのだ。


「今日から付けます」

 わたしは新しい板を立てた。

『港外持出控』

 品目、持出理由、持出先、立会い、返却期限。

 播種先を決めないと種子庫が開かなかったのなら、港の外へ出す物にも、同じくらい行き先が要る。


 ニコが回収してきた古い戻り札を並べる。

 診療所返却箱、見本貸出、乾燥棚交換。

 名目はばらばらなのに、紙の癖はほとんど同じだった。


「これも同じ手だ」

 ニコが何枚かを抜き出す。

「角が青い」


 そこへ燻製小屋からバルトさんが呼ばれてきた。

 文句を言いながら箱の藁詰めをひっくり返し、鼻を寄せる。


「海藻灰の戻り箱にしては、藁が乾きすぎだな。南の倉で寝かせた匂いだ」

「分かるんですか」

「燻す前の藁は鼻で見るもんだ」


 箱、紙、結び目、藁。

 全部を並べると、ばらばらだった違和感が一本の線になる。

 港の外へ少量ずつ出す。戻り箱に見せる。品目名は毎回変える。

 でも紙と藁と結び目の癖までは消せない。


「今夜、見本を流しましょう」

 わたしは空箱へ新しい札を書いた。

『低温保存試料 立会い済』

 中身は本物じゃない。白粉の代わりに粉雪草の灰と砕いた貝殻。匂いだけは似せる。


 海側支庫の戻り箱置き場へ置けば、相手は取りに来る。

 婚約状の返事を待つより先に、向こうがどの筋で港へ触れているのか、見に行くほうが早かった。

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