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日清戦争 -61 帰らぬ船
平壌 福島安正
「病院船『操向』が拿捕されただと!!」
兵站担当押し感が叫んでいる
「鎮南浦からの報告です。入港総数40の予定が、38。『操向』とのその被曳船1隻 合計2隻の未帰還です。」
報告に来た士官の船にはすでに食料が満載だ。報告が多少遅れても食料を輸送したかったらしい
「しかしながら信号花火では『拿捕』の可能性が最も高いようです。少なくとも清国が病院船だろうと撃沈する野蛮な国でないことには安堵しました。」
報告に来た士官が明らかに安堵している。前線遅滞の焦土作戦は全軍の知るところ。これが実行可能なら・・・病院船ですら危ないと危惧する者もいる。
「『済遠』の方伯謙艦長はそんな人じゃない。英国留学経験がある優秀な士官だ。病院船を攻撃すればどうなるかはわかっている。 まあ、現状考えうる最悪の事象だな」
「ハア?」
士官が理解していない。馬鹿が兵卒も理解しているぞと心の中で毒を吐く。その兵卒が異常なだけなのだが。
「ここで食料過剰満載の病院船を開放すれば大量の食糧の輸送をする船団に対しての攻撃の口実を失う。しかし、拿捕、回航、裁判なら裁判結果が艦隊に伝わるまでは食料を沈められる。それがたとえ自国が焦土作戦をした結果、必要になった救民物資だとしても。」
「ああ!!」
「本国に打電。通商破壊対策を強化せよ。」




