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日清戦争 -58 食料供給

 広島 大本営 

「和船の徴用を始めましょう。和船なしでは20万人の食糧を輸送できません。通商破壊でやられることを加味して多めに送る。1往復だけなら数百隻単位で抽出しても問題ない。それ以上は…港湾が結氷して米を揚げられなくなる。」

 朝鮮視察経験のある川上が口を開く。

「結氷か…これはどうにもならん。時期は?」

「11月中旬。じゃな。和船の能力で行けるのは1往復ぐらいだろ?山本殿。」

「風頼みの和船だけならな。和船を汽船で曳航すれば2往復だ。国内に残る旧式船をかき集め、もともと朝鮮向けに投入していた汽船、新規雇を含めればで50隻ぐらいにはなる…。新規の曳航する船にも食料を積める分も加算できる。」

「どの程度輸送できるか。その輸送するコメを国内で供給できるか。そこが重要。」

「まあ、できる限り送り込めればいい。余っても…春蒔きが収穫できるまで供給できなければ現地は悲惨なことになるからな…そこに回せばいい。」


 平壌 

「本国より入電。『帆船総動員20万送る』です。」

 その電文に平壌の司令部は沸く。

「帆船動員とは…思い切ったことをされる…事故や通商破壊での損耗を織り込んだうえでの強行突破ですか…往復ともに…失われる船が出ることは痛いですね…」

 ただし、一部軍人はその作戦に恐ろしさを感じている。冬前の荒天での強引な食料輸送…事故の可能性が高いのは自明の理だ。

 その中にあっても冷静なのは臨時の従卒兵にされた田中義三だった。彼は山縣にバインダーを渡す。

「諸君。こちらもやるべきことがあるぞ。すぐに平壌市内に立て看板を出すぞ。すべての船の帰路に朝鮮人避難民を乗せるんだ!!開いている枠には傷病兵を押し込め。」



 各港・各都市

『朝鮮にて清国による大規模略奪似て現地で20万人以上の人間が餓死の危機にあり。支給食料を朝鮮に送る必要あり。水夫と船を募集す。』

『被害地に送る食糧に対し支援を』

 新聞はもちろん、各地の港湾に掲げられた立て看板の文言である。その窓口は各地の役所になっていた。この結果、人々は役所に殺到した

 支援のために金を寄付する人間、米を寄付する人間…船を差し出す人間、船の操縦を申し出る水夫…

 遅れた国を救う意識それがこの場を動かしている。ある意味傲慢だが、それが事実なので仕方がない。

 拠点港である宇和島に人が集まりつつある。


 広島 大蔵省の出先機関

「コメを冬越しの20万人分を朝鮮にもっていけば経済が壊滅するぞ!! コメの相場が暴騰する!!国庫も崩壊するぞ!!」

 大蔵省に食料の購入を打診すると担当者は切れた。

「しかも14万石を1か月で買い上げて朝鮮に送る!? 今貴様ら月でどの程度の食糧を消費していると思っている!! 海軍と陸軍の内地・外地にいる兵士の数総数を言え!!その数を12で割れ!!」

 担当者は無謀さを説明するために計算を陸軍の担当者自らにさせようとする。

「では朝鮮人が皆、餓死してもいいというのか!!」

「いいから答えろ!!」

 双方が相当の剣幕をしている。

「現地の労働者含め、海陸総数で40万人以下といったところでしょう… 兵数的には陸海総数で24万人です。」

 ともに来ていた海軍側の人間が冷静に口を開く。

「そうかそれだけで計算できるな。貴様らにできるとは思えんがな。」

 官僚は紙を取り出す。そこに説明しながら図を描いてゆく。

「40万人中24万人が兵士ということは 輸送人員16万人。 彼らは平時では必要がない。戦争が起きてから食い扶持が増えた分だ。」

 説明を聞かないといけない2人は押し黙る。

「さらにこの戦争で動員されている兵士は兵役期間中の兵士と除隊延期されている兵士。 毎年6万人徴兵されているとして、兵役期間3年で18万人。これは平時でもある食い扶持だ。だが除隊延期の丸1年分6万人は戦争のために増えた食い扶持だ。」

 紙の上の横棒グラフに「軍夫・除隊延期・兵役」を割り振り、適当な幅で区切る。

「合計22万人!! 月換算で2万石弱だ。」

 説明しながら紙には現実が記される。

「朝鮮半島に20万人分の食糧 輸送損失がゼロだとしても冬越しなら4か月 安全を見て6か月用意する。ひと月で最大10万石の買い付けをしないといけない。需要が6倍。米市場が持つと思うが?高騰した米を買う金はどこにある?」

 官僚の目線は軍人たちを見ていた。

「米以外の選択肢も探すのです。麦でも粟でも稗でもなんでも。多様化すれば…価格上昇は分散します。米だけが悲惨な状況にはなりますまい。冬越し食材を…できるだけ買い足すのです。」

「日本国民も飢えるぞ…冬のたくわえを出させることになるのだぞ。」

「現在の日本の人口は4000万人です。10万石といえば400分の1です。全国民が1日―2日分…我慢して、それだけの食糧を供出してくれるだけで…20万人は助かるのです。そしてやらねば…この戦争の大義が失われる…」

「やるかやらないかの問題ではないのです。やらないといけないことなのです。そしてやれる方策を考えてください。」


広島 大本営 海軍部

「輸送をどうやって安全に実施するか。それが問題だ。まだ清国には巡洋艦が残っている。通商破壊されるぞ。」

 口を開くのは樺山だ。元陸軍の人間だが、敵軍の現状確認には最適な人間だ。黄海海戦に参加していたほどの人間だ。

「それ以上の問題は天候だ。冬季ギリギリの荒れ海。1000トン未満の小型船でもでも動力がある船は比較的安全だろう。だが、和船は冬近いしけの中航行することになる。これは危険だ。」

 答えるのは山本権兵衛だ。

「どうやったら事故率が下がる?通商破壊の可能性が落ちる?」

「天候次第だ。こっちの参謀と話し合ったが、一部の和船に関して…曳航すれば往復回数を増やせる。小型蒸気船と軍艦合わせて50隻だ。同じ数の曳航はいける。あとはできるだけ沿岸航行で…沈んでも陸に逃げられる体制の確保だな…」

「それ以外の対策はない…か。では通商破壊だ。どうする?」

「今回投入する船すべて本気で清国艦隊の通商破壊艦隊と会敵したら降伏しない限り、撃沈される。まず助からん。そして降伏しても…清国の軍規を加味すると…命がある保証がない…」

 山本の言葉は苦渋の表情だ。

「降伏を許可する以外の選択肢があるまい。だが、軍艦は降伏が許されん…不名誉だ…やつらんことだから撃沈を選ぶだろう…俺でもそうする。」

 樺山は己の立場を考えてその判断しかない。

「行きはともかく帰りの通商破壊を防ぐ手はある。現地の食料の食い扶持を楽にすることを同時にできる手が。」


 胃腸風になりました。休載。平均体温が人よりもー1℃近く低いのにピーク39.2って…

 胃腸が水分吸収してくれず…点滴する羽目に… 休載です。(3月29日報告)

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