(13)クリスタルの研究室
あらすじ***魔王と勇者入れ替わり。魔王(IN勇者)は街でギルド登録中。
勇者(IN魔王)は秘密の特訓中に衝撃映像を目撃!俺・・・散る。
★勇者(IN魔王)サイド★
転がっている俺を尻目にクリスタルは冷めた目をしていた。
あまりにも無様な魔王に挫折しそうだ。
これでは殺した方が・・・いや殺したら私も消えるんだったわね。
と考えていた。
毛千本と膨大な魔力から作られたクリスタルは非常に高等な魔物だった。
そのため本来配下となり命令に唯々諾々と従う魔物と一線をひいた
自我をもつ魔物へとなった。だからこそ魔王の心がわかり
かつ隙を見て自由に暮らしているのだ。
魔王の尻を蹴り上げる。
「だらしない真似はよしなさい!見放すわよ。」
「だって・・・だって・・・。」
だって星人である。納得がいかないと現れる。
クリスタルはため息をついた。
「そんなに羨ましいならこちらにも用意があるわよ。」
「よ・・・用意?」
藁にもすがる。クリスタルにもすがる。
「足を掴まないで、鬱陶しい。こっちよ、早く来て。」
そこはクリスタルの研究室の先であった。
薄暗い中 獣の気配漂う。長い廊下のような両側すべて檻だ。
うおぉぉぉっ
野太い声があがる。
「クリスタル様だ!!クリスタル様が来たぞ!!!」
「うおぉぉぉ、お姿を見られたのは3ヶ月ぶりだ。」
「俺なんか1年は超えたぞ!感激だ!俺を踏んでください!!」
「いや、俺を!俺を蹴り飛ばしてください!!」
たくさんの檻の中にはたくさんの人間がいた。
しかも男ばかり。中に見覚えのある顔がいた。
「ジェッダ!お前生きていたのか?!」
つい素で呼びかけてしまうが俺が見えていないようだ。
仮にも魔王である俺が見えないほどクリスタルしか見えていない。
彼は途中の迷宮で失ったはずの仲間だった。
魔王城は森の迷宮→壁の迷宮→長い回廊を経て魔王の間にたどり着く。
そこまでに複数の魔物が現れ、途中でいくつもの命が散った。
俺の仲間の4人も途中で倒れていったのだ。なのに生きている。
よく見ればさらにギーン、バロ、一人足りないが仲間たちだ。
俺のパーティで女性はアリアだけだった。
よく女性だらけで男性が一人のくそパーティを見かけるが
俺は強さ重視で選んだのだ。けっして仲間になりたそうな女性が
一人もいなかったからではない。
檻の中の男どもの中にはなぜか見たことのある顔がさらにチラホラ。
王都で銅像になってた人によく似ていたり
城で壁にかけられている絵にそっくりだったり・・・。
「こいつらは・・・」
「魔王様がね、人間を殺すのは嫌いだっていうから
最初は死ぬほど痛い思いをして殺されるのと
数年ここでおとなしく暮らして忘れられた頃に
記憶操作されて町に返されるのとどっちがいいか選ばせてたの。
大抵はおとなしく過ごす方を選ぶのよ。
で、わたくしとしても人間を調査対象にしてるから
研究に付き合ってもらって
数年経ったら記憶を操作して人間の町に送り返していたの。
でもね、どいつもこいつも何故か戻ってくるのよ。」
周りの男どもはご褒美をねだる熱い視線でクリスタルを見つめる。
「迷ったものはすぐ送り返したし、攻めてきたものは捉え
その繰り返しでこの人数よ。
魔王城では魔力に満ちて年を取りにくいから中には歴代の勇者も
何人かいるはずよ。」
帰りたくないなんて気持ち、わかりたくないな・・・。
そう思いつつ進んでいくクリスタルについていくと
最奥の檻にたどり着いた。
「この子、あなたにあげるわ。」
檻の中を除くとそこには小さな生き物・・・
いや、女の子だ。両手を壁に鎖で繋がれ猿ぐつわまでしてある。
「あれは自殺防止だから気安くはずさないでね。
いくらどんなひどい目にあっても
生き延びて恥をさらすよりマシだって言うから
どうにもできなくて困っていたのよ。
あなたならなんとかできるんじゃない?元人間として。」
薄暗い檻の中ちらりと目があう。その目には炎のような怒り。
濃いブルーの髪はバサバサで綺麗なアリアとは比べ物にならないが
それでも間違いなくすごい美人だ。そして巨乳だ。
手錠、猿ぐつわ、ひきちぎれた服。
すっごく、すっごくいけない予感がします。いろんな意味で。




