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(12)夢、散る

あらすじ***魔王と勇者入れ替わり。魔王(IN勇者)は街でギルド登録中。

勇者(IN魔王)は聖女を部屋に残し、配下クリスタルと秘密の特訓中。

★勇者(IN魔王)サイド★


俺は今人生を振り返っている。

何故なら衝撃的なものを目撃したからだ。


コトの発端は魔王のすべて講座の続きから始まる。

低レベル魔物の中の小さな蚊のような魔物を作ることになった。


スライムより下等なため毛一本から3匹生み出せる。

人間の屋内用偵察魔物のため昔はともかく今は作り出すこともないらしい。


だが俺にとっては人間の街や世界に行けなくとも故郷だ。当然気になる。

いつか魔王のように焦がれるだけの日々になるとしても

いきなりすべて捨て去ることはできない。


さっそく毛を蚊の魔物に変えて人間の街へ派遣した。

その途中クリスタルが魔王がちょうどその街にいるといい出したので

心配だったこともあり一匹は魔王を目的地とした。

ちなみに毛を抜く痛さは人間の体の中で一番抜いたら痛い毛を抜いたより痛い。

これは俺の経験だ。抜いた理由は忘れたことにしておく。


毛1本で作れる魔物はスライム、ゴブリン、オーク、バット等

一撃で死にそうなものばかりで防衛の役に立ちそうなものはいない。

魔王城を守るためじゃんじゃん毛を抜かないといけない。

本当に痛い。クリスタルを作った魔王を尊敬できるかもしれない。


毛2本での魔物も作り方をマスターしそろそろクリスタルに土下座して

毛3本の魔物作りは次回にもちこそうとしていた時のことだ

クリスタルが持つ反映鏡にキーキーという音が鳴り響いた。


「さっそく魔王様を発見したようよ。どこかの宿にいるわね。

少しなら部屋を覗けるかもしれないわ。見てみましょう。」

「俺の体であの街か・・・3ヶ月前に数泊したんだよな。

もう遠い過去みたいだ・・・。」

「感傷にふけるほどいい街だったの?」

「まぁ普通の・・・


蚊はモスキートンという種類の魔物だそうだ。

小さな虫なので、楽々と鍵穴を通り抜け薄暗い部屋に入る。

ベットの上には確かに俺がいた。相変わらず半裸だ。

よくあんなんで泊まれたなと思ったが傍らにはちゃんと装備がある。

一体どこから入手を・・・と訝しんだ矢先

脱ぎ捨てられたような薄手の衣服がベットのもう片方側にあることに気づいた。


一人部屋、真ん中にベット、両脇に装備と薄い布地の、女物の服だ。

ベットから見える足が2本じゃない。4本ある。

夜の舞踏会です。ある意味武闘会です。


「あらあら・・・さっそく・・・。」

「?!?!?!?!?!?!?!?!?」


そこで突然勇者(IN魔王)が手を伸ばし映像が途切れた。


「さすが魔王様ね、相変わらず勘が鋭くていらっしゃる。

・・・何してるのよ?」


その頃俺は四つん這いで頭を抱えて走馬灯を見ていた。


大地主の家の三男に生まれた俺。

15歳になり、土地を貸しているそれなりに豊かな農家の婿になる予定で

成人の日を迎えようとしていたところに魔王出現の知らせと

勇者を探す知らせが入った。

俺には関係ないと思っていたけれど

教会の司教が直々に迎えに来て王都に連れていかれ

胃がキリキリする中、勇者として戦うことを望まれ

そこで聖女となった王女アリアに一目惚れした。

あの日俺は決めたんだ。

魔王に勝った暁には王様にこう言おうと。


美しく片膝をつき、王から好きなだけ褒美をとらすと言われても

こう答えるのだ。


「私が欲しいのはただ一つ、世界一美しい花をください。」


そう言ってアリアに手を差し伸べるのだ。

恥ずかしそうに頬を染めて手を取ってくれるところまで

ちゃんと練習した。100回以上は練習した。


それから必死で剣術を学び、スキルを覚え

勇者として強い仲間を集め、旅立つ俺はずっと清いままだった。

聖女ももちろん当然清く正しく美しい。

完璧な二人になるのだと心の中で俺に、そしてアリアに誓ったのだ。


「け・・・穢れてしまった。」

俺の夢は儚く散った。

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