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白き聖女の下剋上  作者: 上村 俊貴
白雪姫(この章からが本編です)
32/49

最終節「そして再びダンジョンへ(1)」

「ごめんごめん、戻ってきたよ」


 どこからともなくステイシーの声がすると、エドマンドたちが、再びダークエルフ達の襲撃を警戒していた所の上空に突如として開いた空間筒(ワームホール)から、ステイシーが降りてきた。


「おっと、いきなり人の上に降りてくんなよ……」


 偶然、いやおそらくわざとだろう、エドマンドの上に降りてきたステイシーを、エドマンドは慌てて受け止める。


「ありがと、っと」


 エドマンドにいわゆるお姫様抱っこで受け止められたステイシーは、そこからするりと降りると、エドマンド、コリンズ、カリサ、ニルダの四人の前に立った。


「たぶん、もうダークエルフは来ないんじゃないかな?」


 そう言ったステイシーにカリサとニルダが安堵した様子で息をつく一方で、未だ不安そうな表情のコリンズは小さく手を挙げる。


「どうしてそう言い切れるんだ? 奴らの目的はエルフの殲滅、なのだろう? ならまだ目的は達成されていないじゃないか」


 コリンズの懸念は最もだ、とエドマンドも思った。


 カリサやニルダは何を持って安心しているのだろう?


「いや、それはないと思うよ。ね、カリサちゃん、ニルダちゃん?」


 水を向けられたカリサとニルダは、一度顔を見合わせると、ニルダが話し始めた。


「そうですね、もう彼らは来ないでしょう。彼らもエルフだからですからね」


 ニルダは、先ほどのステイシー同様、確信を持ってそう言い切った。


「エルフだからって言われても、な?」


 同意を求めるエドマンドに、コリンズは頷く。


「エドの言う通りだ。なぜそれだけで安心できる?」


 エドマンドよりはエルフに明るいコリンズだが、それでもなぜステイシーや、カリサとニルダがもうダークエルフ達が襲ってこないと断言できるのかはわからなかった。


「そうですね、つまり、彼らは極めて理性的だと言うことです」


そう言ったニルダは、「目的はエルフ、そして人間の殲滅で、私達エルフとは違いますが」と断ってから、


「彼らは、父から私に白雪姫(シュネーヴィトヒェン)を所有権が完全に移行したタイミングを狙って計画を実行しています」


 何でもニルダの話では、ニルダとカリサの父アルノーは、長く白雪姫(シュネーヴィトヒェン)を所持し、白雪姫(シュネーヴィトヒェン)と自分の魔法を組み合わせることで、ニルダが白雪姫(シュネーヴィトヒェン)を使った時とは比べ物にならないほど強かったらしい。


 そして、白雪姫(シュネーヴィトヒェン)の所有権は通常の継承の場合、前任者と後継者の双方が所有権を持つ時期が五年存在し、その期間に白雪姫(シュネーヴィトヒェン)を使い方を前任者が後継者に教える仕組みになっているそうだ。


「そこまでして、エルフを殲滅しようとした彼らにとって、カリサが白雪姫(シュネーヴィトヒェン)を所有してしまった今の状況は、おそらく最悪のシナリオでしょう」


「だからもう二度と襲ってこないと?」


 そう言ったコリンズは、未だ半信半疑といった様子だ。


「二度と、ではないでしょうが、おそらく後百年くらいは大人しくしているんじゃないでしょうか」


 百年をくらいと言ってしまうのはいかにもエルフらしい時間間隔だなとエドマンドは思った。


 ともあれ、まだ今ひとつ納得できないが、そういうことならしばらくは大丈夫なのは確かなのだろう。


「じゃあこれで、この騒動は一件落着、か?」


 エドマンドはステイシーに問いかけた。


「そうだね、これでカリサちゃんが襲われる心配もなくなったし」


 エドマンドの問いに、ステイシーは笑顔で応じる。


「そういえばステイシー、俺達って何でエルフの森を目指してたんだっけ?」


 カリサを助け、コリンズを助け、カリサが家に帰りたいとのことだったのでエルフの森を目指していた、のではなかったはずなのだ。


 そもそも街を出た時からエルフの森を目指していたのだが、色々ありすぎてそれがなぜだったかエドマンドはすっかり忘れていた。


「もう、エドはだらしないなあ、エドが持ってた地図に白雪姫(シュネーヴィトヒェン)を在り処が書いてあったから探しに来たんでしょう?」


 そうだそうだ、そうだった。


 しかし、ということは……。


 エドマンドは、カリサが手にしている白雪姫(シュネーヴィトヒェン)に目を向けた。


「ステイシー、つまり今回の旅は無駄足だった、ということなのでは?」


「え? うんそうだよ? まさか気づいてなかったの?」


 エドマンドは気づいていなかったが、白雪姫(シュネーヴィトヒェン)のついての話をカリサから聞いた時点で、白雪姫(シュネーヴィトヒェン)が使用条件的にエドマンドでは使用できないワンドであることは判明していたため、この段階で、ステイシーとエドマンドがエルフの森まで行く意味は無くなっていたと言えば無くなっていたのだ。


 ちなみにステイシーはこのことに気がついていたが、まあエドマンドの修行になるし、カリサも送っていってあげないと心配だし、それでもいいか、と思っていたため、エドマンドには伝えないでいた。


「はあああ、じゃあもっと早く教えてくれよ……」


 エドマンドは力なくその場に座るこんでしまったのだった。



「で、何で二人ともついてきてるんだ?」


 あの後、エルフの森を出て、一応この世界のエドマンドの家とも言える「幼子の遊び場」に帰ろうと歩きだしたのだが、どうしてだかコリンズとカリサもついてきたのだ。


「いや、コリンズはどこに帰るか知らないし、なんとなくわからないでもないけど、カリサはエルフの森の残らなくてもいいのか?」


 そう言ってエドマンドは、カリサが持っている白雪姫(シュネーヴィトヒェン)に目をやる。


「確かに、今の私は事実上エルフの森の守護者なわけなんですが、実は……」


 そう言ってカリサは、なんとも言えない表情でステイシーに視線を移す。


 それに気がついたステイシーが、カリサに代わって話し始めた。


「エドが心配してるのは、現状のエルフの最大戦力であるカリサちゃんがエルフの森を離れちゃって大丈夫なのか、ってことなんだと思うけど、それなら大丈夫だよ。なんせ私が、もしダークエルフエルフがエルフの森に侵入してきたら、すぐにカリサちゃんをエルフの森へ強制転移させる仕掛けをした結界魔法をエルフの森全体に張ってきたからね」


 えっへん、と胸を張るステイシーに、カリサは苦笑している。


 エドマンドには相変わらずそれがどれだけすごいことかわからないが、カリサの反応を見る限り、今回ステイシーがやったことも、普通の魔法使いからすると相当に常識外れなことをしたことになるのだろう。


「なるほどな、それでコリンズはこれからどうするんだ?」


 魔法のことがよくわからないエドマンドは、わかりそうな理由がありそうなコリンズの話を振ることにした。


「どうする、か……そうだな」


 コリンズは、一瞬、実家のことを思い出し、顔をしかめてから、空を見上げ、ゆっくりと考えてから、


「とりあえずエドたちについていきたいのだが、だめだろうか?」


とそう言った。


 その表情は、どこか諦めたような、寂しいような、少し影のあるものだった。


「俺はいいけど、ステイシーは?」


 一応居候ともいえるエドマンドとしては、ステイシーの了解を得なければ、なんとも言えなかった。


「うん、もちろんいいよ」


 こうして、コリンズとカリサは、当面の間「幼子の遊び場」でエドマンドたちと一緒に暮らすことのなったのだった。


 帰りの道中エドマンドは、先ほどコリンズが見せた影のある表情が、ずっと頭に引っかかっていた。

読んでいただき、ありがとうございます。


第1章も最終節に入りました。


おそらく次回か、その次あたりで第1章が終わると思います。


次は、コリンズの話を掘り下げたいと思っています。


そのために伏線も仕込んでおきましたし。


明日も読んでいただけると嬉しいです。


それでは。

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