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白き聖女の下剋上  作者: 上村 俊貴
白雪姫(この章からが本編です)
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第5節「スヴェルトアンメンシュ(7)」

「大丈夫ですか、エドくん! ステイシーちゃん!」


 エドマンドは、カリサのその声に意識を取り戻すと、まず視界に入ったステイシーの瞳に驚き、なぜだか知らないがステイシーとキスしていることに更に驚いた。 


「ぷはっ! エド、大丈夫?」


 エドマンドを押し倒し、その上に乗る形になっていたステイシーは、エドマンドの唇に重ねていた自分の唇を離すと、心配そうにこちらの顔を覗き込んでくる。


「大丈夫、だと思うけど、なんで俺は、その、なんだ……」


 ステイシーに押し倒されてキスされてるんだ、と気恥ずかしくて素直に聞けないエドマンドは、思わず顔をそらしてしまう。


「覚えてないの?」


 本当に? とか首をかしげるステイシーの様子から、何か心配されるようなことがあったらしいのだが、エドマンドは思い出すことができなかった。


 頭痛がして、体が熱くなって、それ以降の記憶がない。


「そう、それじゃあ―――」


 ドクンッ。


 この状況を利用して、エドマンドを少しからかって遊ぼう、と考えていたステイシーを、感じたことのない感覚が襲う。


「? どうしたんだ? ステイシー?」


 ドクンッ。


 なぜだかエドマンドの声が少しつづ遠くなっていく。


(これは、なに?)


 ドクンッ。


(まさか!)


 ステイシーは、勢いよく立ち上がると、エドマンドたちから距離をとった。


「カリサちゃん、ダークエルフ達は?」


 突然緊張した様子でそう問いかけるステイシーに、カリサは怪訝な様子ながらも答える。


「彼らなら、エドくんの様子がおかしくなって、エドくんに襲いかかった人がやられてから、気がついた時にはいなくなってましたけど……」


 エドマンドに襲いかかったシュパンが、どういうわけかエドマンドに返り討ちにされた後、エドマンドとステイシーの方に気を取られ、カリサが目を離したすきに、シュパン達ダークエルフ三人は姿をくらましていた。


 だからカリサも何かあったらしいエドマンドとステイシーの方にやってきたのだ。


「わかった。またあいつらが来ても、カリサちゃんだけでなんとかできるよね?」


 どうも急いでいるらしいステイシーは、早口でまくし立てる。


「それは、たぶん大丈夫だと思います」


「わかった、じゃあみんなはしばらくここにいて」


 そう言い残すと、ステイシーは足元に展開した空間魔法でどこかへ消えていった。



(たぶん、さっきあのフルーレティとかいうやつから奪った魔力が暴走しかかってる)


 ステイシーは、空間魔法、空間筒(ワームホール)で移動してきた魔法で作った異空間の中で、自分の状況を分析していた。


(そうじゃないと、こんな動悸が起こるはずがない)


 ステイシーは、基本的に体調不良などとは無縁なのだ。


 つまり、何かしらの異常事態でなければ、激しい運動をしたわけでもないのに動悸がしたりはしない。


 そう考えれば、先ほどの吸収したフルーレティの魔力が原因だと考えるのが妥当だろう。


(とにかく、魔力を発散できるだけの空間を作らないと)


 ステイシーは、自分が今いる宿屋の一室程度の異空間を、自身の魔力で拡張していく。


(こんなもんかな)


 五分ほど作業を続けると、その異空間は小国なら入るのではないかというほどの広さになった。


「よし、じゃあいくよ!」


 ステイシーが使える無数ともいえる魔法の中から、フルーレティの魔力を発散するために選んだ魔法は、魔法確認(マジックコンファメーション)


 極めて初歩的な魔法で、発動する際に込める魔力量と魔力属性に応じ、一番適当な魔法が発動する、というもの。


 修行中の魔法使いが、今自分の使える魔法をあぶり出すために使う魔法だ。


魔法確認(マジックコンファメーション)!!」


 ステイシーがこの魔法を選んだ理由は、この魔法を以外だと、何度も発動する必要があるからだ。


 ステイシーはあらゆる魔法に習熟しているため、知ってる魔法はほぼ全て、極めて少ない魔力で行使できる。


 結果として、フルーレティから奪った大量の魔力を発散するためには、ひたすら魔法を使い続けなければならなくなってしまう。


 その点この魔法確認(マジックコンファメーション)という魔法は、任意の量の魔力を、属性問わず消費することができる。


 そんなわけで、ステイシーはフルーレティから奪った無職属性魔力を全て込めて魔法確認(マジックコンファメーション)を行使したのだが……。


「え? え? なになになに!?」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ! という轟音とともに、ステイシーが作り上げた異空間に、次々と見たこともない建物が創造されていく。


 無駄に高く、かつ凹凸の少ない四角柱状の岩? とガラス? と金属? で作られた建造物や、見たこともない黒い物体で覆われ、同じく見たこともない物質で白やオレンジの線が引かれた道が中途半端に整理されて走っている。


 構造から推測するに、おそらくは人間が暮らすために作られた町なのだろうが、ありとあらゆるものが、ステイシーにとっては初めて目にするものだった。


「おっとと、危ない危ない」


 轟音とともに地面が揺れ始めた時点で、緑属性魔法で空中に逃げていたステイシーは、またもや地面から伸びてきた、いくつ目かわからない謎の四角柱状の建物にぶつかりそうになり、慌てて回避する。


 ステイシーは興味深そうにその町並みを観察しているうちに、異空間全体を揺らしていた振動と轟音は収まっていた。


「やっと終わったみたいだけど……結局これはなんなんだろうね?」


 その謎の町並み、エドマンドがこちらの世界に来る前にバイトをしていた東京の町並みの一部を完全に再現したそれを見下ろしながら、ステイシーは一人首をかしげたのだった。

読んでいただきありがとうございます。


フルーレティの魔力が作り出した日本の町並み。


一体どういうことなんでしょうか?


近いうちにかどうかはわかりませんが、いつかわかるはずですので、お楽しみに。


明日も読んでいただけると嬉しいです。


それでは。

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