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白き聖女の下剋上  作者: 上村 俊貴
白雪姫(この章からが本編です)
29/49

第5節「スヴェルトアンメンシュ(5)」

(すごいすごい! こんなに何でもできるんだ!)


 自分なんかに白雪姫(シュネーヴィトヒェン)が扱い切れるわけがないと思っていたカリサだが、意外にも白雪姫(シュネーヴィトヒェン)はカリサの意のままに機能した。


(不思議な感じ……何をどうすればいいのか、手に取るようにわかるなんて)


 使用条件に完全に合致する使用者を得た白雪姫(シュネーヴィトヒェン)は特に何もしない状態でも、冷気を放ち続けている。


(でもどうして?)


 カリサは自分を過小評価しているつもりはなかった。


 確かに、最近では姉であるニルダよりも、使える魔法も多くなったし、その精度も上がった。


 だからといって、ニルダがまともに力を引き出せるようになるまで一年以上かかった白雪姫(シュネーヴィトヒェン)を、自分が持ったすぐに使えるわけがないと思っていたのだ。


 しかし今、現に白雪姫(シュネーヴィトヒェン)はカリサの手にあり、ニルダが使っていた時以上にその力を発揮している。


 白雪姫(シュネーヴィトヒェン)を思うままに扱える嬉しさと、どうしてそうなったかわからない、と疑問に思う感情が入り混じり、結局笑顔で首をかしげる、というわけのわからない状態になっていた。


 そんなカリサの疑問の答えは、ステイシーと話していたニルダによってもたらされた。



「―――あの子は、魔法具の力を最大限に引き出す能力を持っています」


 その言葉に、ステイシーの表情が驚きに染まる。


「……本当?」


 ステイシーは半信半疑といった様子だ。


 なにせ、かなり長く生きているステイシーでも、そんな能力を持った者にはあったことはおろか、そういう者がいる、という事すら聞いたことがない。


 事実カリサが、白雪姫(シュネーヴィトヒェン)を使いこなしているのを目にしても、未だ信じがたかった。


「本当です。カリサは気づいていないみたいでしたし、白雪姫(シュネーヴィトヒェン)ほどのワンドでも大丈夫かは、実のところ一種の賭けでしたが……」


 ステイシーに「カリサなら大丈夫」と言ったニルダだった、絶対の自信があったわけではなかったらしい。


「よくそれであんなに自信満々に言い切ったね……」


 何かあった時は私にどうにかしてもらおうとしていたのでは? と思ったステイシーは、少しの避難を込めてニルダに視線をやる。


「いえ、おそらくですが、あの能力は白雪姫(シュネーヴィトヒェン)本人つまり、ルーシー=レヤード様と同じ身体的特徴を持っていることによるものだと考えられているので、他の魔法具ではわかりませんが、少なくとも白雪姫(シュネーヴィトヒェン)に関しては問題なく扱えるだろうとは思っていましたよ?」


 レヤード家に伝わる、白雪姫(シュネーヴィトヒェン)の居城だったと言われている古城には、一般に知られている白雪姫(シュネーヴィトヒェン)の伝説の原典となった書物が存在する。


 その書物には、白雪姫(シュネーヴィトヒェン)がハーフエルフであること、そして、ありとあらゆる魔法具という魔法具を自在に操った、という記述が存在する。


 そして、その書物に記されたルーシー=レヤードの身長や体重、髪や瞳の色などのあらゆる身体的特徴と、カリサのそれが驚くほど一致しているのだ。


 ちなみにその書物は、白雪姫(シュネーヴィトヒェン)の継承者と、成人したレヤード家のものしか閲覧できない決まりのため、カリサ自身はこのことを知らない。


「お姉ちゃん、ステイシーちゃん!」


 「ほんとかなー?」と言おうとしていたステイシーは、カリサの切迫した声に遮られる。


「早く行かないと!」


 カリサがそう言った直後、外から爆発音が聞こえてきた。



「すごいな……」


 爆発音に急いで出ていったカリサは、階段を使わず迷いなく飛び降りた。


 高さ約十五メートル。何もなしに飛び降りれば、間違いなく怪我をする高さだが、カリサは着地する直前、地面に向けて吹雪を放ち、衝撃を緩和する。


 そのまま難なく地面に降り立つと、音の発生源へと風のように走っていった。


「そうだね、あそこまでとは思ってなかったよ」


 白雪姫(シュネーヴィトヒェン)が優れたワンドだということは理解していたが、あれほど高出力の氷魔法が使えるとは思っていなかった。


 そもそも氷魔法は青属性魔法と緑属性魔法の混合魔法か、青属性魔法と反転させた赤属性魔法の混合魔法かのどちらかで、どちらにしても、ある程度魔法に習熟したものでないと発動できない。


 しかし、白雪姫(シュネーヴィトヒェン)は比較的簡単であるとされる青属性魔法と緑属性魔法の混合魔法の方とは言え、無詠唱での行使を可能にしているようだった。


「おいステイシー、あれ!」


 エドマンドが指さした先では、今まさにダークエルフの男が水の刃でカリサに斬りかかろうとしていた。



「ちっ!」


 水威切断(アクアセーバー)を凍らされ、解除せざるを得ない状況に追い込まれたシュパンは、飛び退いて距離をとった。


「マイヤー、どうにかならないのか?」


 後ろでカリサの様子を見ていたマイヤーは左右に首を振る。


 いつでも冷静沈着でポーカーフェイスを崩さないマイヤーにしては珍しく、その表情は険しい。


「無理だ。どういう手品か知らないが、カリサ=レヤードは完全に白雪姫(シュネーヴィトヒェン)を制御している。あれでは私程度の魔法はなんの効果もないだろう」


 マイヤーは白雪姫(シュネーヴィトヒェン)を操るカリサを憎々しげに見ている。


「だろうな。レーナーは……聞くまでもないか」


「いやいやいや、それは流石に酷くない?」


 シュパンにどうしようもない以上、レーナーではおそらくどうにもできない。


「事実だろう?」


「そーだけどさー」


 言われておどけるレーナーは気にした様子もない。


 とはいえそうなってくると、シュパンたち三人にはどうすることもできないのだが。


「どうする、シュパン?」


 マイヤーは相変わらずカリサを観察しているが、未だどうやってカリサを倒せばいいかわからないようだ。


 どういうわけか白雪姫(シュネーヴィトヒェン)を完全制御しているカリサは、シュパン達ダークエルフの精鋭部隊であっても正直言って手に負えないだろうことは先ほどのやりとりでわかっている。


 カリサの一定範囲に入った魔法は到達と同時氷に変換され、並の物理攻撃では氷の壁に阻まれる。


 黒属性魔法で精神に干渉しようとしても、精神の表面を凍らせ使用者を精神干渉魔法から守るワンドの効果で無力化される。


「どうしようもない、かもな……」


 諦めて撤退することも検討しだした時、遅れてやってきたステイシーたちがシュパンの視界に入った。


「あれだ……あれだ! マイヤー、あの人間の男に強制魔力暴走(マジックブラスト)を仕掛けろ!」


 シュパンは、ステイシー達の中で一番弱そうなエドマンドに、強制魔力暴走(マジックブラスト)を仕掛けるよう、マイヤーに指示した。

読んでいただきありがとうございます。


今日は予約投稿を使わなくてすみます……。


やっぱりちょっとPV落ちたので、できるだけ使いたくないですね。


さて、物語も佳境です。


第1章「白雪姫」ももうすぐ終わりそうです。


……とか言って、あと1週間くらい続いちゃったりするかもしれませんが……。


次回、エドマンドの秘密が明らかになる、予定です。


明日も読んでいただけると嬉しいです。


それでは。

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