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白き聖女の下剋上  作者: 上村 俊貴
白雪姫(この章からが本編です)
28/49

第5節「スヴェルトアンメンシュ(4)」

 白雪姫(シュネーヴィトヒェン)を受け取り解析していたステイシーがゆっくりと目を開けた。


「なんとかなりそうですか、ステイシーさん」


 白雪姫(シュネーヴィトヒェン)をステイシーに預け、ステイシーが白雪姫(シュネーヴィトヒェン)を解析する様子を見守っていたニルダは、緊張した面持ちでステイシーに尋ねる。


「うーんそうだなあ」


 できないこともない、というのがステイシーの感想だった。


 しかし、それができたところで、果たしてニルダの考えているほどうまくいくものだろうか?


「ニルダちゃんのやりたい、使用可能年齢の引き下げだけど、できないこともない」


と、ステイシーは素直な感想を伝えた上で、「けど……」と続け、


「本当にカリサちゃんに白雪姫(シュネーヴィトヒェン)は扱えるの?」


 ニルダの解決策、それは、今すぐに白雪姫(シュネーヴィトヒェン)の所有権をカリサにうつす、というものだった。


 確かにそうすれば、ダークエルフがカリサを殺す意味は薄くなる。


 さらに、白雪姫(シュネーヴィトヒェン)の使用条件により適したカリサが使った方が、理論上は白雪姫(シュネーヴィトヒェン)の出力は上がるはずなのだ。


 しかし、問題がないわけではない。


 それは白雪姫(シュネーヴィトヒェン)に存在するもう一つの条件。


 年齢制限だ。


 白雪姫(シュネーヴィトヒェン)は、使用可能年齢に制限が存在する。


 具体的には百六十歳以上でなければ使えない。


 つまり、現在百六十五歳のニルダには扱えても、百三十五歳のカリサには扱えないのだ。


 どうして年齢制限などどいうものがあるのか、というのには理由があるのだが、ここでは一旦おいておく。


「大丈夫です、カリサならできます」


 ステイシーの懸念とは裏腹に、カリサは自信満々だ。


「うーん、本当?」


 ステイシーは正直言って信じられない。


 カリサの実力では突然手にした白雪姫(シュネーヴィトヒェン)を扱えるとは思えなかった。


「本当に。もし駄目だったときは私がなんとかします」


 しかし、姉であるニルダがここまで言うということはなにかあるのだろう。


「そこまで言うならやってみるけど、これだけは約束して。もしカリサちゃんが白雪姫(シュネーヴィトヒェン)を暴走させるような事があっても、ニルダちゃんは手を出さないこと」


「え、でもそれは……」


「安心して、私がなんとかするから。それに、暴走した白雪姫(シュネーヴィトヒェン)を、ニルダちゃんはどうにかできるの?」


「それは……」


 おそらくできない。


 なにせ、白雪姫(シュネーヴィトヒェン)をカリサが暴走させた場合、当然のことだが、白雪姫(シュネーヴィトヒェン)ニルダの手元にないのだ。


 白雪姫(シュネーヴィトヒェン)がなければ、ニルダはまだまだ魔法の扱いが未熟なただのエルフでしかない。


「約束してくれる?」


「わかり、ました」


「うん、よろしい。じゃあ、やっちゃうね」


 そう言ってステイシーは、白雪姫(シュネーヴィトヒェン)の使用可能年齢を書き換えた。



「えーっと……どうしてそんな話に?」


 ニルダがステイシーたちのところに行ってから、再び横になっていたカリサは、ニルダに連れられてエドマンドたちがやってきたと思ったら、ステイシーから突然


白雪姫(シュネーヴィトヒェン)の所有権をカリサちゃんに移すよ」


と言われ、そう返すしかなった。


「まあ話せば長くなるんだけど、聞きたい?」


 困惑するカリサに、ニルダはそう言った。


「うん、聞きたい」


(カリサもニルダも、二人で話すときはあんな感じななんだな)


 姉妹なのだから普通かもしれないが、ああしていると、見た目は変わらないのにカリサも子供に見えてくるから不思議だ。


「じゃあ話してあげよう。そうすればいろいろ解決するってこと」


「「全然長くないじゃん!」」


 カリサだけでなく、一緒に聞いていたいたエドマンドもつい一緒に突っ込んでしまった。


「ははは、二人とも息ぴったりだねえ」


 ニルダにそう言われて、エドマンドとカリサは恥ずかしくなって黙ってしまう。


「とにかくカリサちゃん、年齢制限は私がどうにかしたから、使ってみてよ」


「はあ……わかりました。ところで、年齢制限をどうにかしたって、どうやったんですか? そのワンドは魔力による干渉を弾くはずなんですが……」


「ああ、それは魔力の濃度が―――」


 と言いかけたところで、コリンズの声がステイシーの言葉を遮った。


「ステイシー!」


 コリンズはトレードマークの狐耳を、ピンッと立て、目を閉じている。


 左右の耳が別々に動いているのは、相手の位置を探っているからなのだろう。


「うん、来たね。ダークエルフが、三人……かな?」


 緊張した様子のコリンズに対し、ステイシーは落ち着いている。


「カリサちゃん、迷ってる時間はないよ」


 そう言ってステイシーは、改めて白雪姫(シュネーヴィトヒェン)をカリサに向けて差し出した。


「大丈夫、でしょうか?」


 ニルダは不安がるカリサに近づくと、そっとその肩に手をおいた。


「カリサなら大丈夫」


 ニルダは、正面からカリサの目を見てそう言った。


「お姉ちゃん……」


 見返すカリサの目は、まだ不安そうだ。


「もし駄目でも、私がなんとかしてあげるから、やってみよう」


 ステイシーの言葉に、しばらく悩んだ後、カリサはゆっくりとうなずいた。


「わかり、ました。でも、どうなっても知りませんよ?」


 内心ではカリサが白雪姫(シュネーヴィトヒェン)を使うのではなく、ステイシーが普通にどうにかしてくれればいいのに、と思っているが、どうにもステイシーにその気はないらしいので仕方がない。


「うん、任せて。もし暴走してもなんとかしてあげる」


 ステイシーは胸を張り、自信満々でそう言う。


「じゃあ、はい」


 ステイシーが差し出していた白雪姫(シュネーヴィトヒェン)を、カリサはじっと見つめる。


 しばらくして決心した様に頷くと、ステイシーから白雪姫(シュネーヴィトヒェン)を受け取った。


「はい、いきます!」


 カリサが受け取った白雪姫(シュネーヴィトヒェン)を握り直し一振りすると、周囲の空気が一変する。


「寒っ!」


 エドマンドが部屋の壁や床を見ると、一瞬にして霜に覆われていた。


「ニルダちゃん、あれはどういうこと?」


 ニルダの言葉を内心疑っていたステイシーは、突然手にした白雪姫(シュネーヴィトヒェン)を使いこなしているカリサについてなにか知っているだろうニルダに聞いてみる。


「ふふーん、凄いでしょ? うちのカリサは」


 ニルダは自分の事の様に誇らしげだ。


「いやすごいけど……」


 先ほどの分析したステイシーは、白雪姫(シュネーヴィトヒェン)がワンドとしてどれだけ強力で、それ故にどれだけ扱いづらいかを知っていた。


 先ず以て、使用条件を満たす、つまりエルフの血が入っている者でなければ、通常のワンドとしてすら機能しないのだ。


「こほん。すごいですよね、カリサって。実はあの子は―――」


 ニルダは、咳払いを一つしてほのかに顔赤くしていた。


 ニルダが話すカリサの秘密に、ステイシーは驚かされることになるのだった。

読んでいただきありがとうございます。


作者所要により、久々の予約投稿です。


PV激減したりしたらどうしましょう……。


白雪姫(シュネーヴィトヒェン)の所有権移転が完了しました。


いきなり白雪姫(シュネーヴィトヒェン)を使いこなすカリサは何者なんでしょうね?


それについては次回わかるはずです(ダークエルフ視点の話にしたりしない限りは)。


明日も読んでいただけると嬉しいです。


それでは。

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