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白き聖女の下剋上  作者: 上村 俊貴
白雪姫(この章からが本編です)
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第3節「エルフの森へ(11)」

「はあ、そんな単純な攻撃が当たるわけ無いでしょ。はい、回復っと」


 カリサと二人でゆっくり歩きながら馬車の方へ向かっていたステイシーは、魔法でエドマンドの様子を見ながらため息をつき、ワンドを振った。


「エドくん、頑張ってますか?」


「まあ、頑張ってはいるけどね、何というかエドの攻撃って正直すぎてさ、その上まだまだ鋭くもないから避けるのとか簡単なんだよね。カリサちゃんもそう思うでしょ?」


「まあ確かに、とても素直な感じのする戦い方でしたね」


「でしょー?」


 そんな話をしている間にも二回ほどエドマンドを回復させながら、いつの間にか二人は馬車へとたどり着いていた。


「やっぱりコリンズちゃんの他にもう一人いるね」


「もう一人、ですか」


 カリサの記憶が正しければ、カリサに売り手がついた時には残された奴隷はカリサとコリンズだけだった。


 新たにどこからか攫われてきた子がいるだろうか。


「うん、まあ奴隷の子じゃないみたいだし、見張りってところかな」


「そうですか、って、それはそれで大丈夫なんですか?」


 幸いにしてカリサの心配は杞憂に終わったわけだが、見張りがいるならコリンズを救出する上では問題である。


「うーん、多分大丈夫じゃないかな? こんにちはー」


 バサッと馬車の荷台後ろの布を開いて中に乗り込んだステイシーは、案の定見張りの男に見つかってしまう。


「ったく、なんだってんだ。外のやつは弱いくせにどれだけボコボコにしても回復するし、その上荷台に誰か乗り込んでーーって、お前は!」


 ステイシーが乗り込んで来たことに悪態をついていた男は、仕方なくステイシーに続いて入ってきたカリサを目にし、かなり驚いているようだ。


「お久しぶり、です」


「もう、カリサちゃんは真面目だなー。カリサちゃんを売り払った奴らに律儀に挨拶なんてしなくてもいいのに」


「それもそうですね……」


「てめ、どうしてここに!」


「まあいろいろありまして」


 またも律儀に答えるカリサを見て、ステイシーは苦笑する。


「だから律儀に答えてあげなくても……。それでカリサちゃん、そこの女の子がコリンズちゃんってことで間違いないかな?」


 カリサがいた頃と異なり、目隠しをされているが、その美しい金色の髪とピンと立った特徴的な狐耳は見間違えようもなくコリンズのものだった。


「はい、間違いないかと」


 よく見ると、先ほどからカリサの声に反応して耳がピクピクと動いている。


「りょーかい。じゃあちゃちゃっと助けちゃおうか」


「おい、お前ら何する気だ!」


 当然にステイシーを止めようとした見張りの男は、ステイシーに向かって手を伸ばすがその手がステイシーを捉えることはなかった。


「え?」


「……っっ!」


 何が起こったか理解できず自分の手があった場所を目を向けた見張りの男は、あるはずの自分の手が無くなっていることに間抜けな声を上げることしかできない。


 ステイシーに届く寸前、見張りの男の手は破裂し吹き飛んでいたのだ。あまりの光景にカリサは息を詰まらせる。


「あれれ、おじさん案外弱いね。まさかこれくらいでやられちゃうなんて」


 体の右半分に男の血を浴びた状態のステイシーは、ただただ呆れた様子で馬車の床で悶え苦しんでいる男を見下ろす。


「があああああっっ!」


 見張り男はようやくやってきた痛みに苦悶の声あげる。


「この、化物が……!」


 苦痛に顔を歪めながらも、ステイシーを睨む男を見て、カリサは自業自得とはいえ少しかわいそうになってしまった。


「ひどいなー化物だなんてー。そもそもおじさんが弱いだけでしょ? まあいいや、治してあげるからもう一度同じ目に遭いたくなければ大人しくしてることだね」


 そう言ってステイシーがワンドを振るうと、男の手は時間を巻き戻したかのように元に戻っていく。元通りになった自分の手に目を落とした男は、一瞬ステイシーに再び襲いかかろうとしたが、すぐに先ほどのステイシーの言葉を思い出したのか、力無くその場に座り込んでしまった。


「うんうん、正しい判断だね」


 男が何もしなくなったのを確認したステイシーは、悠々とコリンズのもとへと向かう。


「カリサちゃん? どうしたの、こっちおいでよ?」


 先ほどの光景が頭に焼き付いてしまっているカリサは、ステイシーに近づくことを躊躇ってしまう。


「いや、あの、ですね……」


 カリサが返答に困っていると、ステイシーは何かを思いつたようにポンと手を打つと、ワンドを振った。


「これでどうかな? あれ、こういうことじゃない?」


 ステイシーは大きく腕を広げ、魔法で返り血が消えた姿をカリサ見せながら尋ねた。


「いえ、すみません、大丈夫です」


 眼の前で人間の手が破裂した光景はあまりにも衝撃的だったが、その後ステイシーはしっかりとその手を治療し元通りにしている。


 それに元々彼らは奴隷売買を生業とする者たちなのだし、ステイシーの攻撃だって正当防衛と言えないこともない。


 とりあえずカリサはそう考えて納得することにした。


「そう? ならいいけど。じゃあコリンズちゃんを開放してあげよう」


「あ、そのくらいの拘束具なら私が壊しますよ」


 今現在コリンズを拘束している拘束具は、カリサがつけられていたものとは異なり魔法を無力化する機能はついていないが、とにかく頑丈な構造になっている。


 これはコリンズが魔法を使えない代わりに極めて強い膂力を持っているためだ。


「本当? 助かるよ。それじゃあ私は外のエドの方に行ってるから、コリンズちゃんにいろいろ説明してあげてくれるかな。それが終わったらカリサちゃんもコリンズちゃんを連れて外に出てきてね」


「わかりました」


「じゃあよろしくね。あ、そうそうおじさん、私が居なくなったからって変な気は起こさない方がいいよ?」


 一瞬だけその小さな体からは想像もできないような殺気を放ったステイシーは、見張りの男に釘を刺すと、馬車の正面、御者台につながっている方から外に出ていった。

読んでいただきありがとうございます。


5,000字は一気に読むには多いと言われてるらしいので、今回から3,000字前後にしてみました。


新キャラ登場です。


まだ顔も出てなければ、喋ってもいないですが……。


ベタニア=コリンズ。


一応言っておくと、この世界では、


名前=名字


の順で表記しています。


明記はしていませんが、カリサとニルダが姉妹、というくだりでわかっている方も多いと思います。


そういう方は、自分でコリンズと読んでくれと言っていたり、カリサからコリンズちゃんと呼ばれていて、


なぜ一人だけ名字呼び? 


と思った方もいるかもしれませんが、コリンズは他のキャラと違って、


名字=名前


の順です。


理由については今後出していく予定ですので、お楽しみに。


明日も読んで頂けると嬉しいです。


それでは。

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