↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
待って悪役令嬢! 俺、このゲーム知らない!!  作者: 逢月 悠希
4.俺、このゲーム嫌い 〜第3学年後編〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/89

76.そんなに老けて見えたかよ

 何を考えているのか、本当に何を考えているのか、この流れで俺の実年齢を当てるゲームをするらしい。


 いや、まあ、助かるけど。

 耐えるのしんどかったし……何よりラウダがずっと泣いてるの、申し訳なさすぎたし……。


 ついでに何歳くらいだと思われてるのかは、普通に気になる。

 ちょっと黙って見守ってみよう。


 そうだね、とシベリウスが呟いた。


「私的には、最低値は36歳だと思うんだよね」


 えっ。

 誰か指摘してくれと思ったら、ごしごしと涙を拭いながら、ラウダが口を開く。


「分かる分かる。でも、流石に60歳は超えてないと思う」


 えっ。


 頼む、アリオーソ。

 どうにかしてくれ。


「基準値はラウダの親父じゃねぇかな? 俺の親父は割と歳行ってるし、逆にシベリウスの親父って名前の国王は若すぎる気がする。透の世界の基準は分かんねぇけど、多分そこまで離れてないと思うんだよな」


 待て待て待て待て!?

 最(・)低(・)値(・)の時点でバグり散らかしてるんだけど!?


「オレの父さん? 52歳だね。平均よりはちょっと高めかも。結婚自体が遅かったみたいで」


「おっと? 親父とそこまで変わんなかったわ。親父は56歳なんだよ。現役バリバリだが」


「絶対に当てにならない参考資料。父上は35歳」


「うっわ! 若っ!! 17歳でオルフェウス殿下生まれてる!!」


「陛下は実質15歳で結婚したもの同然だからな……ってことで、平均値出すか。約47歳だな」


 あえて放置してみたんだけど、これ、間違いなく47歳って言われる流れだな。

 どうなってんだよ、この子たちの感性は。


 そして、シベリウスは無駄にキラキラした笑顔を浮かべて口を開いた。


「ちょっと下げるね! 45歳!」


 ——その気遣いが辛い!!


「そんなに老けて見えたかよ」


「えっ!?」


 自信ありますって顔してるけど、違うぞ。

 シベリウスどころかアリオーソとラウダも慄(おのの)いてるな。なんでだよ。


 なんで君たちの父(・)親(・)を基準にするんだよ。

 勘弁してくれよ。


 そして最低値は多分あれだな? 

 コラーレ兄弟に合わせたな?


 なんか、オロオロし始めたぞ。

 失礼なこと言ったって思ってるのかな?


「えーと、最低値はやっぱり……」


「その最低値がおかしいんだよ。先生方よりも下だよ、下。……俺の態度が悪いのは認める」


 やめてくれ。

 目をまん丸にしないでくれ。その状態で固まらないでくれ。


「さ、34歳……?」


 だからコラーレ兄弟を基準値にするのをやめろ!

 もう1歳ずつ下げていく未来しか見えないから、答え言うか……。


「……。29歳だよ」


 だから目をまん丸にするな!

 そんなに老けて見えたかよ!!


「つーことは、精(・)神(・)的(・)に(・)は(・)31か?」


 頑張って年齢を上げようとするな!!


「精神的に29歳。オルフェウスの身体に入ったのが27歳の時」


「えぇ……?」


 いや、29歳な時点で君らより10歳以上違うんだけど、それでも納得できないのか……?


「気になりすぎるから根拠教えて欲しい」


 何とも言えない気持ちになりながら、俺はシベリウスを見た。

 シベリウスはきょとんとした顔で、首を傾げる。


「私たちを見る目が定期的に保護者目線になってるから」


 保護者目線の自覚は……あるな……。

 でもさぁ……。


「10個以上離れたら保護者目線にもなるだろ。そもそも45歳にしては、俺の振る舞いは情けないくらいにガキっぽいと思うんだけど」


「でも、先生方に対しても保護者目線になってることあるし」


「失礼な感想抱いてるのは分かってるけど、あの人たち、たまに心配になるんだよ……いや、待て。それでも下だろ。俺は割と最近、ジェズアルド先生に叱られてるんだぞ? あの時は全員いただろ?」


「いたけど……」


 根拠が『保護者目線』というか、『庇護欲』のせいだった。


 本当にごめん。

 特にシベリウスとアリオーソはオルフェウスに守られるの気にしてたみたいなのに。


 そして、なんかアリオーソがぶつぶつ呟き始めた。


「ま、まあ……兄貴と同い年くらいなら、まあ……納得できなくもねぇかな」


 咄嗟にオルフェウスの記憶を覗き込んでみる。

 なるほどな、アリオーソってお兄さんとかなり歳離れてるんだね。

 お兄さん、28歳みたいだし。確かに俺と同い年くらいって判定になるか。


 そんなことをしていると、アリオーソは目を見開いた。


「……って、それだと、小さいガキとかいたんじゃ!?」


「俺をお父さんにしないでくれ」


 基準がお兄さんになったせいで、微妙にバグった。

 ……とはいえ、『27歳のお父さん』は普通にあり得るけどな。


 別に驚くようなことじゃない。何なら俺の同級生は子ども生まれまくってたし。

 あちこちから「子ども生まれました」の連絡がバンバン入ってたし。


「不幸中の幸い、子どもはいなかったんだ。結婚もしてなかったし。これに関しては本当に良かったと思ってる」


 そう返せば、だいぶバツが悪そうな顔をされてしまった。

 これは、気にさせたかも……『もう死んでる』っていう前提事項、話してるもんな……。


「俺のことは放置でいいんだよ。あとは、その……庇護欲全開なの、気にさせてたらごめん。ヴィオレッタにも言われたんだけど……元々、その手の欲が強いというか」


 本音を言わせてもらえば、君たち可愛いんだよなぁ。

 男子高校生、めちゃくちゃ可愛いんだよなぁ。

 しかも大変な環境に置かれてた割に変に擦れてないから、初々しいというか。


 ……これ言ったら繊細な男子高校生のプライド傷つけそうだから、言わないけど。


 頭の中で本音を処理していると、アリオーソは困ったように笑った。


「年齢差的に仕方ねぇのは分かってるから、気にしねぇよ。つーか、なるべく対等であろうと努力してくれてんのは分かるしな」


「一応は頑張って18歳やってるつもりだったし、それが無くたって、君らが子どもだからって舐めた態度取れるほど俺は完璧超人じゃないし。至らないことばかりなのは自覚してるし。

 ……で、アリオーソ。もう容赦なく保護者目線で言わせて。解散って言いたいとこだけど、多分それは嫌なんだと思う。でも、君はせめて横になって」


 もう、尋常じゃないくらい顔色が悪い。

 問答無用の強制解散にしたいとこではあるけど、それで無理して追い掛けて来られる方が困るから、もう少しだけ会話には付き合おう。どっかのタイミングで寝落ちしてくれ。


「……」


 やっぱりきつかったのか、アリオーソは素直に布団に沈む。

 頭を撫でまわしたくなったけど、己の欲求は全力で抑え込んだ。


 ただ、姿勢を変えたせいかな。

 苦し気な喘鳴音が、微かに聞こえた。


 うーん……やっぱり強制解散かな。

 もう1つだけ話題を出して、それが終わったら解散って言おう。


 少し待って、呼吸が安定するのを待つ。

 それから、話し掛けた。


「先生方に処置はしてもらってるんだよね?」


「やってもらったのは応急処置的な部分だけだな。それで収まれば良かったんだが、駄目だった。そうなると薬の処方とかその辺が必要になるんだが、これは保護者案件になる。

 駄目元でセレナ嬢に頼んでみるって手も考えたんだが、外に出てぶっ倒れても困るし、逆に部屋に招くわけにもいかねぇから、素直に親父に頼むことにした。明後日の夜に来てくれるみたいだ」


 自己申告より確実に症状が重いように見えるけど、それでも親が来てくれるなら安心かな。

 厳しく育てられてるとはいえ、必要なことを叩きこまれた後は普通に仲の良い親子としてやってるみたいし、息子の不調に駆けつけるっていう現象自体は納得ではあるんだけどね。


 ……でも、アリオーソ本人はちょっと困ってる様子だ。


「助けてくれ。俺はどうして重症化するレベルでスノウフィラの花粉を浴びたんだ?」


「あっ」


「連絡入れた時は誤魔化したが、このザマで「あはは」でゴリ押すのは無理だ……絶対に理由聞かれる……」


 そうだ、アリオーソは少量じゃ症状が出ない。

 つまり『大量の花粉を吸いこんでしまった』理由の説明が必要だ。

 普(・)通(・)に(・)暮(・)ら(・)し(・)て(・)た(・)ら(・)絶(・)対(・)に(・)起(・)き(・)な(・)い(・)珍現象の説明をしなきゃいけないんだ!


「マジで困ってんだわ。もう『靴箱開けたら、やべぇ量のスノウフィラが落ちてきた』くらいしか言い訳が浮かばない」


「ば、バレンタインデーかな……?」


 靴箱にチョコじゃなくて、スノウフィラ。新手のバレンタインデーだな?

 他になんか無かったのか? いくらなんでもめちゃくちゃすぎるぞ?

 高熱に苦しんでる子に抱く感想じゃないけどさ……。


 でも、タイミングが良かったかもしれない。

 アリオーソの親が来るなら、手っ取り早く話が進みそうだ。


「アリオーソ。事情説明を兼ねて、今回の件、リチェルカータ家を巻き込めないかな?」


「うちを?」


 そんなこんなで、俺とシベリウスはさっき話した内容を説明する。

 俺はともかくシベリウスが話し始めた辺りで、アリオーソはかなり怪訝そうに目を細めていた。


「シベリウス。お前は本当にそれで良いのか……?」


 ——やっぱりそういう感想になるよね、分かるよ。


 シベリウスは親指を立てている。

 本当にそれで良いのか?


 アリオーソは軽く息を吐き出し、苦笑した。


「まあ、あの場所の捜索継続とか出てきた情報の処理とか頼めそうだしな。……理由を伏せる努力はするが、諦めてくれ。隠しきれる気がしない」


「だよね~」


 シベリウスの名誉が心配になるけど、本人は全然気にしてなさそうだから良いや。

 まあ、よく考えたらこの子は騎士団の厩舎から馬盗んできてるしね。今さらか。


「んー……できたら先生方に居合わせてもらうか。シベリウス、お前が同行を命じたってことにして良いか? あの人たちの家の近所だったからって理由で」


「うん、良いよ。先生方の存在を伏せるのは厳しいし、それで行こう」


「うちはそこまで身分の類は気にしねぇし、非常識なことは言わねぇと思うから大丈夫だとは思うが……念のためな」


 そうだね、「平民は盾になれ」とか平然と言う貴族も居るっぽいしね。

 リチェルカータって侯爵家なのに、まるで身分を気にしないでいてくれるのは本当に助かる。これでいけるな。あとは、任せてしまおう。


 話がひと段落したタイミングの、わずかな無音空間。

 その瞬間に、再び喘鳴音が聞こえた。


「俺が言うのも悪いんだけど、そろそろ解散しない?」


 長話をすることになったのは俺の事情のせいだ。だからこそ、言いにくかった。

 言いにくかったけど、言った。アリオーソの体調が心配だ。


 各々、早く自分の部屋に帰ろうよって空気を出したんだけど、肝心のアリオーソに服の裾を引っ張られてしまった。


「眠くない。せっかくだから、透の前世の話を聞きたい」


「いきなり可愛いことしないで」


「庇護欲もうちょっと隠せよ!」


 俺は開き直った。もう開き直った。

『兄貴分』がちょっと剥げた結果、子どもっぽい振る舞いをし始めたこの子が悪い。


 可愛らしいワガママを聞きたい気持ちもあったんだけど、服の裾を持つ手が微かに震えているし、あまり力が入っていない。これは、絶対に駄目だ。


「明日、同じ時間に全員集合。これでどう?」


 アリオーソの父親が来るのが明後日なら、明日はまだ時間がある。

 必要そうなら打ち合わせの類もできるし、事前にコラーレ兄弟に同席可能かどうか話を振ることもできる。そういう意味でも、明日の再集合はありだと思う。


「……分かった」


 しぶしぶ、といった様子でアリオーソが引いてくれた。

 最初からこの部屋にいるラウダはともかく、シベリウスの了承を得られたから問題無いだろう。

 今日はこのまま解散だ。少なくとも、アリオーソはゆっくり休んでほしい。


「最後に言っとこうかな」


 解散直前。

 俺は、皆の顔を見回した。


「ありがとね。本当に、楽になれた。……正直、ずっと君たちを騙してることに対して、思うところは相当にあったんだ」


 これは、『日下部透』としての言葉だ。

 悩みが増えた部分もあるけれど、少なくとも彼らを、特にシベリウスとアリオーソを騙し続ける生活は終わったも同然だ。


 せっかく柔らかくしてもらった空気をまた重くするような話題を出して悪いけど、これに関しては今日のうちに言っておくべきだろう。


「俺自身、これからどうなるか分かってない。それでも今は『オルフェウス』として、世界救済のために頑張ろうと思ってるよ」


 本当に、どうなるんだろうな。

 でも、悔いが残らないようにしたいと思ってる。


 自分を不必要に下げるような真似はしないと決めたけれど。

 ……できれば最後は、オルフェウス本人の意思も、聞けたらいいな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。