66.ただのメタ推理
俺はアリオーソが持ってきた地図を前に、皆の顔を見回した。
「そうだね。とりあえず200年前の地図と照らし合わせてみる? 革命第二派は革命第一派を隠れ蓑にしてたみたいだし、その流れでしれっと施設を共有してる可能性が高い気がする。今は完全に独占できるわけだしね」
改めて、2つの地図を見比べる。
200年前だから当然だけど、建物自体が消えてたり、逆に新しく建築されたりしてるな。
「どっちかというと閉店してるとこを見てみたいかもね。跡地に地下室とか生えてるかもだし」
「確かにな……んー……」
この国の王国騎士団と王国魔導士団の歴史は結構長いみたいだ。
だから鍵屋の半分以上は閉店してたわけで……。
そしてアリオーソは、小さく呟いた。
「片っ端から全部侵入してこいって言われたらするが、最終手段で頼むわ。正直に言うけどよ……普通に、怖い」
「ん゛っ」
「わ、笑うな!!」
いきなりどうした!?
可愛いな18歳!!
「結構なー……これ、大変なんだからな……? 気配とか音の類は消せるが、痕跡の類は消せねぇんだよ。だから埃が積もりに積もった場所は逆に苦手だ。痕跡残りまくるからな」
「なるほどね。確かに、埃まみれの本棚の中に、1冊だけ綺麗な本が混ざったら浮きまくるもんね」
「そういうことだよ。さらに言わせてもらえば、どこに何があるか分かんねぇ状態で闇雲に動き回るのは精神的にキツい。見つからねぇって分かってたとて、失敗はあり得るわけで……鍵の管理簿に関しては最初から狙って行ったから良かったが……やけに暗くて狭い場所も多いしよ……」
「大丈夫大丈夫。本当にどうしようもなくなったら頼むけど、そうじゃないなら無理強いはしないよ」
甘いかもしれないけど、本当に無理強いはしたくない。
この子がそこそこ繊細なのはもう分かってる。
「……あ」
ラウダが声を漏らした。
そして、200年前の地図を指差す。
「どうしたの?」
「もう鍵屋じゃないけど、ここはオレが探りに行けるよ。親戚のおばちゃん家だから」
「よし行こう」
「えっ?」
これはメタ的な理由だ。
そんなポコポコ新規施設が生えるとは思えない。
攻略対象に関連する場所にあるに決まってるだろ。
「わ、分かった、けど……え……?」
雑すぎる対応をしたせいで、ラウダが困惑している。
なんて返そうかなと思っていると、明里さんがくすくすと笑って口を開いた。
「ラウダ様に鍵を渡しているのですよ? ラウダ様が行きやすい場所に関係しているのでは?」
「あー、なるほどね……?」
そんな気がしてきた。メタ的な理由じゃなくて、そうな気がする。
まあ、試すのは悪くない。行ってきてもらおう。
今度は『ラウダのおばちゃんがヤバいかもしれない』可能性が出てくるのが気になるけどな!!
……とかなんとか考えてると、ジェズアルド先生が手を上げた。
「今は空き家だったと思うが、我々に魔法を教えた師の家がここだ」
「優先順位そっちで」
「えっ」
ヤバい。また雑な対応をしてしまった。
いや、メタ的に考えたら割とコラーレ兄弟って設定控えめだし!
こうして会議やらなんやらをするようになって感じたことだけど、コラーレ兄弟って行動時間が合わないことも多いし、多分メインじゃなくてサブの攻略対象みたいな感じなんだとは思う。
でも攻略対象としては割と設定が控えめだから、ラウダのおばちゃん家よりは可能性高そう。
リソース的な意味合いでも、こっちに設定盛りそう。
「わ、わたくしも、そう思いますわ」
明里さんをフォローに回させてしまった。ごめん。
「お師匠様は、おふたりの特殊能力を革命第二派に流した可能性が高い人物ですからね。勝手に疑ってしまって、申し訳ありませんが……」
「確かにそうだな。我々も疑っていないわけではない。気にしないでくれ」
今は空き家なら、入り込みやすい場所だ。
でも、そういう状態ならラウダのおばちゃん家よりは危険性が高い。何が出るか分からない。
彼らは戦えないわけじゃないどころか、かなり特殊な魔導士だ——ふたり、揃っていれば。
危うすぎるからふたりだけで行かずに、誰かしら連れて行って欲しい。これに関してはまた話し合おう。
「あの……」
奏音ちゃんが、おずおずと手を上げた。
彼女は王都……の、本当に端の方にある場所を指差した。
「ここ、あたしが元いた孤児院なんですけど……」
「ここだな」
「ここですわね」
「そんな気がしますね」
なんてったって主人公関連施設だ。
ここにあるとしか思えない。……みんなを置き去りにしてるのは謝る。
「ただ、困りましたわ。シベリウス様とアリオーソ様にはお伝えしたのですが、セレナ様を学園外に出すと革命軍に攫われるリスクがありますの。だからといって、わたくしたちが直接行くのは目立ちすぎてしまいますし……」
奏音ちゃんに里帰り的なノリで行ってもらうのが一番自然だとは思う。
でもそれをしたらリュートが現れるかもしれない。それは良くない。
バセットが「んー……」と声を漏らしつつ、アリオーソを見る。
「この孤児院。管轄はルバート子爵家でしたよね? 堂々と行くと、あの家を刺激してしまう可能性がありますから、避けた方がいいような気はします」
「だなー。子爵家だから、一斉捜査の対象だったしな……」
アリオーソとバセットは、奏音ちゃんをチラチラ見ている。
……あ、これは多分グレーゾーンだった奴だな。一斉捜査入って正解だった奴だな。
結果的に一斉捜査がルバート子爵家への警告みたいな形になったわけだな。
これでグレーから黒になってたら、色んな意味で奏音ちゃんがヤバかったかもしれないな。
ギリギリセーフで良かった。本当に良かった。
とりあえず、6つあるうちの3つが誰かしらの関連施設だってことが判明した。
全部、鍵屋としては閉店してて、跡地に何かしら建ってるパターンだな。
シベリウスは残った3ヶ所を確認して、うんうんと頷く。
「孤児院が大本命だとは思うけど、一応、他のとこも見ておきたいね。まだ鍵屋さんしてるとこも気になる。変な鍵いっぱい作ってる可能性あるし……私、張り込んでみようか?」
「シベリウス。忘れてるのかもしれないけど、君は第二王子だ。もうちょっと大人しくしなさい」
「……駄目?」
「駄目。それが許されるなら、僕は単独でこの孤児院に殴り込むから」
「私も行きたい! 殴り込みに行きたい!」
「あ、あたしが育った場所なんで、お手柔らかにお願いします……」
でも、この孤児院。
俗に言うラスダンだと思うんだよな。
RPG的に考えたら、この鍵で開くかって言われたらちょっと怪しいんだよな。
俺は無造作に置いてある鍵を手に取って、光で透かしてみる。
当然何もない。不思議なことは起きない。
鍵を眺めたまま、俺は口を開く。
「そもそも調べてきてくれたアリオーソには悪いけど、鍵屋はあまり関係ない可能性あるしね。個人的には利用客名簿あたりを見たいけど、流石に開いてる2店舗から利用客名簿盗んでこいなんて言えないし」
そんなことをしてみろ。
警察的な組織が来て大騒ぎになって、多分アリオーソが早々に疑われるし、最悪連行される。色々とよろしくない。
「でも無作為に鍵穴に鍵挿して回るわけにもいかないから、先生方のところからいこうか。ラウダのおばちゃん家は……挿して回っちゃう場所があると逆に怖いから、後にしよう」
「オレのおばちゃんがなんか変なことに関わってる可能性出てくるもんね……」
ということで、コラーレ兄弟に「お願いします」と言って鍵を託す。
シベリウスが脱走したら困るから関係ないかもって言ったけど、『鍵屋跡地』のどれかで間違いないと思う。
メタ的に考えたら「ゲームの主要キャラと何かしら関与している場所」とかいう訳の分からない共通項が出まくってる時点でそうだろ。これで無関係だったら怖すぎる。
ただ、うーん……本当に不安だ。俺の中ではこっちが本命だし。
誰かしらに一緒に行ってもらおう。彼らだけだと心配すぎる。
もう許されるなら俺が行きたい。どうして俺は王太子なんだ。
さて、革命関係のことは一区切りついた。
ここからは、ゲーム知識的な意味合いでの大問題について話していこう。
明里さんが、かなり緊張した面持ちで口を開く。
「皆様に、天啓についてお話しすべきことがありまして……」
——ここから先は俺たち、何の知識もありません!!
コラーレ兄弟は実際にサブ攻略対象(学生組がメイン攻略対象)です。普通に生活してると強制攻略イベント以外はかなり発生しにくいです。生徒と教員は動きが違うので仕方がない。
例外回も多いですが、読みやすさ重視で6000字を超えると話を分断している(※55話と56話が該当)のが悪いのですが、だんだん想定より話数が増えてきました……すみません、もうしばらくお付き合いください……。
※予定では100話以内完結です。超える気がしてきています。すみません。




