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待って悪役令嬢! 俺、このゲーム知らない!!  作者: 逢月 悠希
4.俺、このゲーム嫌い 〜第3学年後編〜

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65.悪ノリから始まる久々の会議

 貴族用会議室。

 できれば集合時間の2時間前から開けてくれないか、と言われてその通りにしたところ、明らかにやつれたコラーレ兄弟が寝ていた。……床で。


「えぇ……?」


 寝ていた、というか、ダイイングメッセージが残っていそうな有り様だった。

 やめてくれ。鳥セレだとだいぶ洒落にならない。

 床にテープ貼られそうな状態になるのはやめてくれ。


 俺が第一発見者になってしまったから、そっと扉を閉めた。

 閉めると同時、アリオーソがやってきた。彼は怪訝(けげん)そうに俺を見ている。


「オルフェ……?」


「……」


 俺は黙って閉じた扉の前から退く。

 アリオーソは扉を開けて——閉めた。


「おかしい、ここは密室だぞ……!! 一体何が起きたんだ!?」


 いきなり密室殺人が起きてしまった。

 なんでだよ。


 とりあえずアリオーソと一緒に来たラウダに、場所を譲ってみる。

 彼もまた、扉を開けて閉めた。


「ねぇ、どうして!? どうして、あの人たちがこんな目に……!!」


 犠牲者の身内かな? 身内が早めに来ちゃったパターンかぁ……。

 よし、シベリウスが来た。シベリウスにもやらせてみよう。


 ガチャッ

 バタン


「第一発見者はあなたですね? 現場の状況を教えてください」


 刑事が来たぞ。事件が前進するかもしれない。

 よし、大笑いしたいのを頑張って耐えて淑女してる明里さんにもやって貰おう。


 ガチャッ

 バタン


「馬鹿な……っ、早すぎる……!」


 おおっと? 共犯者的な奴か? それとも盛大に何も始まらないのか?

 ちょっとうずうずしていた奏音ちゃんは、扉に手を掛け——


 ガチャッ


「わたしたちで遊ばないでくれ」


「うわぁ!?」


 遺体、じゃなくてクレメンティ先生に怒られた。

 クレメンティ先生は扉を開けて、早く中に入るように促す。


 ……あれ? ジェズアルド先生がまだ倒れてるな?


 彼が倒れていることを一切見落とさなかった奏音ちゃんはわざとらしくコツ、コツ、と踵を鳴らして部屋に入った。


「犯人は現場に戻ってくると聞いたことがあります。この事件においても、それは同様だったようですね」


 急に探偵役が来たな。

 ……あ、いつの間にか来てたバセットが奏音ちゃんの横に行った。


「先生、流石です。あなたの推理は外れていなかった」


 助手役だ。探偵の助手が来た。探偵ドラマとか漫画とかでよく居る奴だね。

 そしてクレメンティ先生は、すっごいわざとらしく手を叩き始めた。


「……。ははっ! 流石だね、探偵諸君!」


 真犯人役か。

 真犯人が現場で倒れてたか。なんでだよ。


 それにしても、落ち込んでた奏音ちゃんがノリノリで参加できてて良かったし、バセットがこの悪ノリに普通に乗っかってきたことに安心した。


 ……本音を言わせてもらえば、後者はちょっと焦った。集合時間より早めだからって、油断した。大丈夫そうで良かった。


 まあ、一番気になるのはジェズアルド先生が息してるのかどうかだな。

 なんで未だに倒れてるんだよ。本当にテープ貼るぞ。起きてくれ。


 そんなこんなで、(ジェズアルド先生を起こしてから)全員が席につく。

 いや、社畜明けのコラーレ兄弟は寝かせといた方が良いんじゃないか?

 あ、普通に会議やる? なら、止めないけど……。


「……」


 初手でバセットが顔の横に手を上げた。


「おれのことは一切気にせずに話してもらえたら。駄目なら来てないんで。むしろ、皆さんのおかげで、すごく楽になってるんで」


 議題のひとつが革命に関する話だから、一番デリケートなことになってる彼がいきなり「大丈夫です」と言ってくれた。

 助かりはするけど、様子見……は、露骨にはやらない方が良さそうだ。ほどほどにしよう。


 俺と同じことを考えているらしいアリオーソは、頷いてからラウダ宛の手紙に入っていた鍵を取り出した。


「じゃあ、普通に話すが……まずは結論から。この鍵は騎士団保管庫、魔導士団保管庫、そのどちらのものでもなかった」


 だろうな、とは思う。

 そんなに単純な話だったら、もっと早い段階で解決してそうだし……。


「ただし鍵の形状が似てるってことは、元々の鍵は同じ場所で作成された可能性があるんじゃないかって判断した。下手すると同じ時期って可能性もあるなと」


 ……ん?


「というわけで、両団保管庫の鍵が作られた時期と場所を割り出してきた。何回か作り直されてるせいでどっちも特定し切れてなくて申し訳ないが、地図持ってきたから確認して欲しい」


 待て待て待て待て!?


 びっくりしてるのは俺だけ……って、ことはないな。

 シベリウスはそこまでではないな。驚いてはいるけど、どちらかというと賞賛だ。

 ラウダは驚いてない、というか知ってたな。アリオーソが部屋で作業してたとみた。


 俺はアリオーソがテーブルの上に広げた地図を見下ろす。

 丸が付いているのは2ヶ所。その横には年号が書かれている。

 地図の端には、4つの店名と年号が書かれていた。


「丸をつけた場所のうち2ヶ所は鍵屋がまだ生きてた。4ヶ所は閉店済みだ。年号は作成タイミング。俺が辿れたのは6回分。悪いが、これ以上は勘弁してくれ。親父にバレかけて死ぬかと思った……まだ伝えずに動いてるしな……説明に困るから……」


 アリオーソはちょっと顔を青くして息を吐き出した。

 なんかリチェルカータ侯爵家にはバレても良いような気がしなくはないけど、後の議題的にちょっと困る。逃げ切ってくれて助かった。


「お疲れ様。こんなの、よく調べてきたね」


「団長室に侵入してきたからな」


「なるほど? ……ん?」


 侵入?

 え、不法侵入的なアレでは!?


 アリオーソはニヤリと笑って口を開く。


「いい加減に俺の切り札を伝えとくかね。もうここにいる人間相手に使うことは無いだろうし、この先は知っておいた方が良さそうな気がする。だが……頼むから、黙っといてくれよ?」


 アリオーソは少し距離を取って、簡易収納魔法から剣を抜いた。


「——視線を欺(あざむ)き、音を断つ。我が存在を此岸(しがん)より隔て、意識の門を閉ざせ」


 彼が言う『侵入』の意味を即座に理解した。

 そして何故か、本当に何故か『シベリウスが知ってるのにオルフェウスが知らない』っていう緊急事態が起きていることに気づいた。


「ヴェイル」


 アリオーソの姿が、消える。

 厳密に言うと、俺たちが見てる風景がおかしくなってる。

 一応、明里さんと奏音ちゃんの反応も見てみる……けど、うん。知らないな。

 ゲーム描写が無かったパターンだな。推定トゥルー案件だな。


 アリオーソ、対人強化魔法だけでも相当厄介なのに、追加で果てしなく有能に殺人鬼できそうな能力も持ってたんだな。困ったな。


「……ねえ、ラウダ。君、見破れる?」


「ギリギリ。本気出されたら厳しい」


「わぁ……」


 何が困るって、オルフェウスが見破れないことと、ラウダですら「怪しい」って言ってることなんだよな。

 俺もラウダもこの手の魔法に特化してるわけじゃないとはいえ……うん、完全に上を取られてるな。

 このレベルだと、確かに「国家転覆狙える」って言い切れる奴だな。


 アリオーソは見えない布を剥がすようにして、再び姿を現した。


「……とまあ、隠密魔法だけなら、この国でトップクラスだって自負がある。特に追跡調査の類が得意だ。潜入調査もできなくはない。だから『鍵の管理簿』を覗き見るだけなら、なんとか」


「……」


「ま、マジで黙っててくれよー……俺の能力は両親と兄貴とごく一部の人間しか知らねぇし、下手な人間にバレたら、絶対に変なことやらされっから、本当にやめてくれよー……」


 シベリウスはアリオーソを見ながら、にっこりと笑う。


「兄さんが独裁王になったら、私は真っ先にアリオーソを消すって言った意味、分かった?」


 それはそうだな。

 どこから襲われるか分からないからな。

 でも、そういう問題じゃないんだよね、シベリウス。


「分かったけど、なんで僕が知らないことを君が知ってるのかな……?」


「えへ?」


 あ、これは教えてくれない奴だ。

 シベリウスとラウダは把握してたと見た。なんで……?


 とりあえず本題に戻そう。

 ……掘り下げたところで、誰も話さなくなりそうだし。


 アリオーソは魔法演習の成績が終わっていますが、その理由は『隠密魔法に限れば国単位で見てもトップクラスの実力を持っている&結構レア枠な対人強化魔法を扱えるにも関わらず、特殊な魔法すぎて成績に一切反映されないから』というものです。

 魔法演習は王国魔導士団向きの能力=単独戦闘を前提とした能力を見ているので、火力の高い攻撃魔法、あとは強いて言えば防御用の結界魔法を評価するという傾向があります。

 当然、単独戦闘には絶望的に向いていない完全サポート型のアリオーソや、そもそも戦闘においては役割微妙な収納魔法特化のシベリウスが高く評価されることはなく……。


 さて、ここで『ラウダの剣術演習の成績が終わっている』ことを思い出してください。

 成績が終わっているからと同列扱いされていますが、上記の条件を前提にして考えてみましょう。


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