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切れないナイフ

朝また目が覚める。

俺は身体を確認する。

たしかに生きている。


目が覚めるというのは、

生きているという事。

目が覚めて、

知っている部屋にいるという事は、

死んでいないという事。


しごく当たり前の事だが、

身に染みる。


朝食の匂いがする。

ノンアルとドブロクが食事の用意をしている。

ビアとテキーラは掃除をしていた。


「おはよう」

俺は声をかける。


「おはようございやす」

皆の声が聞こえる。


なんだか、

皆うれしそうだ。


「すぐにお食事の準備を」

ノンアルは忙しそうに動く。


俺はアジトを見渡す。

来た当初より、

ずいぶんキレイになった。


俺は頭を触る。

ざらざらしている。

どうも髪の毛が伸びたようだ。

剃らなくては、

俺はナイフで頭を剃る。

慎重に慎重に。


「親分。その頭は?」

ドブロクが言った。


どう答えよう。

モヒカンだ。パンクだ。

と言ってもわからない。

モホーク族の髪型だと言ってもわからない。


どうすれば良い。


「弓を使う時に便利なんですよね」

ノンアルが言った。


「ノンアル。なぜそれを知っている」

俺は尋ねる。


「覚えてないんですか?昨晩言ってたじゃないですか」


まったく記憶がない。


「親分は弓を使うんですか?」

ドブロクが言った。


俺は弓を使ったことがない。

どうしよう。

使うといえば、

「見せてくださいよ」

となる。


まぁ正直に言おう。


「弓は使わん」

俺はきっぱりと言った。


皆の目が丸くなっている。


「じゃあ、なんでその髪形を?」

ドブロクが尋ねる。


本当は。

モヒカンが滅茶苦茶カッコいいと思っている。


でも、

「この髪形がカッコいいからやってる」

という言葉を吐くのは、

最高にカッコが悪いと思う。


ええぃ。

任せよう。


「なんでかって?わかんねぇかな。少しは考えてみろ」

俺は問いを投げかけた。


頼む。

誰か良い感じの答えをくれ。


皆手を止めて、

考え込んでいる。


「考える時はな、作業をしながら考えるんだ。

戦闘中に、止まって考えてると、すぐに逝ってしまうぞ」

俺は笑った。


皆我に返り作業を行う。


「カッコいいからですか?」

ノンアルは言った。


そうだよ。と答えたい。

しかし……、


「ノンアル。この髪型カッコいいと思うか?」

俺はじっと見る。


「へい。あっしはカッコいいと思います」


俺は皆の方を見る。


「俺も」

皆も手をあげる。


おぉ。こいつらわかってるじゃねぇか。


「俺わかったかも。威圧じゃないですか?」

ビアは言った。


「この髪型。威圧感があると思うか?」

俺は尋ねた。


「あぁ。

その髪形は一般的じゃないから、行動原理が読めない。

それは、恐怖心を与えると思う」

ビアは床をはきながら言った。


俺は皆の方を見る。

「俺も」

皆も手をあげる。


なるほど。

そう感じるのか。

ここらへんで、締めとこうか。


「おめえら、なかなかやるじゃねぇか。

まず二人とも大体は正解だ」


皆嬉しそうな顔をする。

なんだこいつら。

かわいいじゃねぇか。


「まずな。この髪形がカッコいいと思う奴は、こっち側の人間だ。

まともな人間は、気味が悪い。

恐怖に感じるだろう」


皆頷く。


「そうするとな。勝手に境界線ができるんだ。

わかるか?

国境みたいなもんだ」


皆頷く。


「そうすると、仲間になりたい奴は寄って来る。嫌悪感を持つ奴は去る。

ほら便利だろ」


皆頷く。


「俺を嫌いな連中は、はなから近寄らなくて良い。

最初に選別するんだよ」

俺はドヤ顔をする。


「親分。頭いいっすね」

ノンアルは嬉しそうに言った。


皆頷く。


「それにな。知ってる奴は、こいつがこの髪型だという事は、弓を使うなと思うだろ」


「たしかに、そう思うよな」

ドブロクは言った。


「じゃあ、近距離戦は苦手だと思い込む」

俺はナイフを取り出し、

そこでナイフを突き出す。


「おぉ。フェイントをいれるわけだな。そこまで高度に考えられていたとは」

ビアは言った。


「まぁだからな。皆よく理解していると思うよ。さすがだ」

俺は言った。


皆照れくさそうにした。


よし。

これで上手くまとまった。

……、

ちょっと待て。

これだと頭良いキャラになってねぇか?


まぁいいか。

頭が切れるも、頭がキレてるも、

同じ切れるだしな。

一緒だろ。


天才とバカは紙一重。

バカとハサミは使いよう。

バカにハサミを持たせるな。

というしなぁ。


……

俺は食事を済ませた。


皆に

「これから鍛冶屋に行ってくるから、アジトを掃除しておいてくれ」

と指示して、鍛冶屋にでかけた。


鍛冶屋は、

刃先のないナイフを用意していた。


「本当にきたな」

鍛冶屋の爺さんは言った。


「当たり前だ。それでこれか」

爺さんの取り出したナイフを手に取る。


見た目は完全にナイフだ。

しかし刃を触っても切れない。


「これ野菜とか突き刺す分にはいけるよな」


「あぁ。それは問題ない。しかしこれをどう使う」


「あぁ?これか。これはな、こう使うんだよ」

俺はナイフを舐める。


爺さんの目は固まっている。

どうだビビったか。


「な、なるほどな。刃先がないのを知ってても、それは見た目的に衝撃だな」


「そ、そうだろ。どうだ?」


「どうだと言われても、返答に困るが。少なくとも、一般人は関わりを持たないでおこうと思うだろうな」


「へへへ。そうだろ」


「お前さん。案外良い奴なのかもな」

爺さんは目を細めた。


俺は爺さんのいう事がなんとなくわかった。

俺自身が、

虚勢を張る人間の心情がよくわかるからだ。


「世の中は冷たいもんな」

爺さんは言った。


その目は少し寂しげだった。

あぁこの爺さんも、

こっち側の人間か。

俺はそんな風に思った。


「これ代金だ」

俺は金を渡す。


「あぁ、ありがとよ。お前さんこんなの好きじゃねぇか?」

爺さんは、

金属の鋲のようなものを出した。


「爺さん。これは?」


「これはな。金属の鋲じゃよ。基本的には革の鎧や籠手なんかに使う」


「これ今持っている肩当てとかにも付けられるか?」


「その肩当ての種類にもよるし、見てみないとわからないが、ちょっと並べてみるか?」


「おぉやってみてくれ」



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