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始動の始まり

「失礼な。団長は少し変わってますが、優しい人……」

ノンアルの言葉を制する。

俺はサイコキャラなんだよ。

余計なことを言うな。


俺はドブロクの顔に顔を近づける。

そして顔をべろっと舐める。

冷や汗をかいているのか。

しょっぱく感じる。


ドブロクは目を見開いている。


「お前もだいぶいかれてんな」

俺は言った。


「なんでそんな事がわかる」


「俺はな。人の顔を舐めたら、そいつの事がよくわかるんだ。

お前、狩りをするとき、ずいぶん楽しそうじゃねぇか。

あの興奮っぷり。

お前もこっち側の人間だよ」

俺はそう言った。


ドブロクは頭に手をあて、

そして笑った。


「違いねぇ。俺とあんたは似た者同士かもな。

仲間になるぜ」

ドブロクはそう言った。


……


先ほどからやけに視線を感じる。

俺は後ろを振り返る。


一人の男がこちらをじっと見つめていた。

こいつ盗賊か?

盗賊にしては整っている。


「なぁ。兄さん。あんたは何者だ」

俺はじっと見る。


男は何も答えず、

ただ牢の隅っこで座り込んでいる。


屈強な肉体に傷だらけの腕。


歴戦の強者なのは間違いなかろうが、

事情を抱えていそうだ。


「へっへっへっへっ。話はしたくねぇとよぉ」

同じ牢の小柄な男がそう言った。


俺はその小柄な男を睨みつける。


「親分さん。

こんな男より、俺を使わねぇか。

俺は働くぜぇ。

こいつは元騎士様だ。

気位だけが高い臆病者だ」

小柄の男はそう言った。


「お前は何ができる?」


「俺はなんでもできる」

男はそう言った。


「そうか。そりゃ良かったな」

俺はそう言い、

隅っこで座り込んでいる男に近づき、

座り込んだ。


「兄さん。

俺の仲間もずいぶんやられた。

特に腕っぷしに自信のある連中がな。

勇敢なものはみんな先に逝く、

残されているのは臆病者だけだ。

そうは思わねぇか」

俺は男の目をじっと見た。


「あぁそうだな。

俺もその臆病者の一人だ」

男は苦笑いを浮かべた。


「ははは。あの騎士様が笑いやがった。槍でも降るんじゃねぇか?」

小柄な男は笑った。


「お前の頭に槍を降らせてやろうか?」

俺は冷たい目で小柄な男を見る。


小柄な男は黙った。


「あんたは何を使う。

剣か?槍か?」


「俺は槍だ」


「そうか。

俺はオクラ。

勇者を率いる組織。

ヤマノウエ団の団長だ。

俺はあんたと同じ臆病者だ。

騎士様のような誇りもなければ、

勇敢さもない。

ただ、

美味いもの食って、

長生きしてぇ、

そして、できれば幸せになりてぇ。

俺はあんたを前衛で使う気はない。

というか、

仲間を敵に突っ込ませるような事はする気はない。

できる限り、

無傷で生き残りたい。

ただ、

最後の盾が必要だ」


「最後の盾か……。

でもな。

俺は臆病者だから、

逃げ出すかもしれないぞ」

男は目を落とす。


「あぁ。逃げたくなったら逃げろ」

俺は言った。

俺は後ろを振り返る。


「お前らもよく聞け。

ヤマノウエ団ではな。

生き残ることを最優先とする。

だからな。

ヤバイ時は逃げろ」

仲間たちにも、そう言った。


仲間たちは目を落とす。


「ビアだ。あんたの盾になるよ」

男は言った。


「あぁ頼む」

俺は短く答えた。


「あの団長さん。俺はどうすれば?」

小柄な男は言った。


「そうだな。

まずは五人パーティから始める。

人数が揃ったから、

今回は遠慮しておくわ。

また機会があればな」

俺はそう言い、

牢から出た。


俺は、

管理官に装備が欲しいと言い、

倉庫を訪れた。

かび臭さと、汗のにおいが混じった不快な場所。


「ここにあるのが、兵士や勇者達の遺品だ。

あの左端のほうにあるのが、

そこそこ強かった勇者や兵士たちの装備品だ。

それでビア。

俺らは装備品の目利きはできない。

こいつらに、

最適な装備を探してやってくれ」

俺は言った。


「親分、装備は選べねぇのか?」

テキーラは言った。


「あのな。

戦闘経験の浅いものが選ぶと、

格好だけで決めてしまうだろ。

そうなると、どうだ。

動きにくい装備になってしまう。

そうなるとな。

早く逝ってしまうんだよ」

俺はテキーラの肩を叩いた。


皆頷いている。


「それにな。

自分で選んでも、後からあっちのほうが良かったとか、そんな風に後悔するだろ。

でもな。

強い奴に選んでもらったら、

それだけで安心だ」

そう言い、

ビアの目を見た。


ビアは頷き、

「扱う武器を聞いて良いか?」

そう言った。


「ノンアルはナイフか短剣。

ドブロクは弩。

テキーラは投石。

ビア、

あんたは槍だ。

俺はもう選んである」


「わかった」

ビアは短く答え、

装備品の中から選び始めた。

三十分ほどで装備は決まる。


「つけてみてくれ」

ビアは言った。


それぞれ装備を身に着ける。

その様子を見ながら、

ビアが革紐を結びなおしたりして、

調整をする。


二十分ほどで、

格好は決まった。


使いこんだ装備品だからか。

皆それぞれ貫禄すら感じられた。


「お前ら格好いいじゃねぇか」

俺は言った。


皆誇らしげだった。


俺たちは、

倉庫をあとにした。


そして管理官に、

人数が五人を超えたこと。

装備を使う事。

そして多少の軍事的な訓練のあとに、

討伐を行っていくことを伝えた。


別に、

ソーダから言われたわけではない。

自主的に報告を行った。

こうしておけば、

いらぬ誤解は受けない。

そして、

その分自由に動ける。

俺はそう確信していた。


俺らはアジトに歩いて戻る。


「なぁ。ノンアル。親分っていかれているように見えるけど、案外まともだよな」

テキーラはノンアルに話しかけている。


「えぇ。親分は頭がキレるし、優しい人ですよ」

ノンアルは言っている。


「俺も優しいと思う」

ドブロクは言った。


「騎士団では、死は名誉だったし、そう教わった。団長は違う。あんな人は初めてだ」

ビアは言った。


ヤバイ。

ヤバイ。

ヤバイ。


親分と言われるのは別にいい。

団長より、

サイコっぽいし。


でも優しいとか、

頭がキレるとか、

サイコキャラじゃねぇじゃないか。

どうしよう。

これでは俺のイメージが崩れる。


どこかで挽回しなくては。


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