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過去

「そういえば団長。その頭の傷はなんですか?」

ノンアルは言った。


頭の傷――――。

俺は記憶をたどる。

この頭の傷は。


「マリーって乱暴な女に酒瓶で殴られた……」

俺は呟く。


「女にですか?」

ノンアルの目が曇る。


「じゃねぇわ。あれは隣にいたおっさんだ。あの時酔ってたからな。なんだっけな」


「そうだ、思い出したわ。

昔、ドラゴンスレイヤーのジジイと喧嘩した時の傷だ。

もう少しで勝てるところを、奴は尻尾を巻いて逃げだしたんだった」


「ドラゴンスレイヤーと? めちゃくちゃ強いじゃないですか」

ノンアルの目は輝く。


あぁよかった。

誤魔化せた。


しかしこの身体。

いろんな経験してるな。

盗賊だけじゃなく、

一時期は冒険者もしていたんだ。

俺は元の身体の主に、

少し感心した。


「別にな。ジジイだからたいしたことねえよ」

俺は頭を掻いた。


「今日は勧誘に行きますか?」


「そうだな。でも掃除もしなくちゃいけねぇな」

思わず言ってしまう。


サイコキャラが掃除って、

どうするんだ。


「団長はキレイ好きなんですね」


どうする。

キレイ好きのサイコキャラで行くか。

それとも、

いや。

でも掃除って言い出したからな。

よし……、

こっちでいこう。


「勘違いするな。

キレイかどうかは別に興味がない。

ただな。

乱雑なカバンにモノが沢山入らないように、

散らかった家だと、お宝が沢山入らないだろう。

ヤマノウエ団はな。

沢山の魔物を討伐する。

そうしたら沢山のお宝が手に入る。

宝物を入れるために、

入れるスペースをあらかじめ空けておくんだ」

そう言った。


「おぉぉぉ~、すげぇ。団長すごすぎます」


「だからな。キレイ好きとかじゃねぇんだ。

金持ち、物持ちになることが決まっているから、

宝物を入れるスペースを空けるだけだ」


掃除する理由もサイコキャラっぽく決まった。


モノがあんまりなかったこともあって、

アジトの掃除は昼までに終わった。


俺らは再び牢に向かう。


俺らは牢を歩く。

ふと一人の男の前で、

足が止まる。


なんだ。

この感覚は。


男の風体を見る。

上半身の筋肉は、

それほどついていない。

ただふくらはぎの筋肉はでかい。


こいつは健脚だな。

「おいお前。前は何をしていた」

俺は尋ねる。


「盗賊だ。みりゃわかるだろ」


「そんな事はわかっている。俺が聞いてるのは、盗賊の中で何をしていたかだ」


「斥候だよ」


「そうだろうな。ずいぶん走れるだろう」


「よくわかるな。足には自信がある」


「そうか。武器は何を使っていた」


「石だ」


「石……、投石機を使っていたのか?」


「あぁ。でも小型の奴だぜ」


「目は良いか?」


「当たり前だ。盗賊をやる前は、猟師だった」


「じゃあ、獣は捌けるよな」


「もちろんだ。

血抜きから解体までなんでもやれる。

ただ皮のなめしはムリだ。

その前段階までならできる」


「このまま、ここにいれば……」


「処刑だろ。でもあんたの所にいけば、生き残れる。そうだろ」


「あぁ。来るか?」


「もちろんだ。

処刑されるのは構わないが、ここは暇で困る。

魔物を狩るんだろ。俺が手伝うぜ」


「そうか。じゃあ来い」

俺は後ろを振り返る。


「あっしはノンアルです。あっしも斥候です」

ノンアルが挨拶をする。


「俺はテキーラ。よろしく」

テキーラも挨拶をする。


しまった。

名乗るタイミングを失った。

ここで俺は……。

というのは変だ。

どうしよう。


「あの親分」

テキーラは言った。


あぁ親分になったか。

まぁ特に団長にこだわったわけじゃねぇからな。

別にいいが、呼ばれ方……、

統一したほうが良くねぇか?


まぁどうでもいいか。


「なんだ。テキーラ」

俺は短く返す。


「俺には装備品は支給してもらえないんですか?」

テキーラは言った。


ノンアルもこちらを見る。

熱い視線が、

あっしも欲しいと無言で言っている。


「ヤマノウエ団は五人から始める。

五人集まったら、

役割を決めて討伐開始だ。

そして五人でうまく回せるようになってから、徐々に人を増やしていく」


「そういう予定だったんですか」

ノンアルは頷いている。


「それでだ。

装備品もその者に合ったモノを支給しなければいけない。

だからな。

五人集まって、

役割を決定してから支給する」


「へぇ、わかりやした」

テキーラはニヤニヤ笑った。


このテキーラって男、

さっきからずっとニヤニヤしてるな。

このニヤニヤ感。

なかなかのサイコキャラじゃねぇか。

俺も見習わないとな。


俺はにやりと笑みを浮かべた。


俺らは再び牢をぐるぐる回る。

しかし、

ピンとくるものがない。

どうしようか。

とりあえず聞いてみよう。


「おいお前ら。

ここに投獄されている奴で良いのはいないか?」


「へぇ。あそこで寝っ転がってる男。あいつは弩使いだったと思います」


弩か……。

投石と弩。

当面の戦い方としては、

群れから外れた魔物を遠距離から薄く削いでいく作戦で使えそうだな。


俺は寝っ転がっている男に近づき、

軽く蹴る。


男は目を薄めに開く。


「ふぅん。なんだてめぇ。

俺様を起こすなんて、良い度胸だな。

永遠の眠りにつかせるぞ」


そう毒を吐く。


俺は腰からナイフを取り出し、男の眼前に突きつける。


「俺は毒使いだ。

少し手を動かせば、お前が眠りにつく」


男の目が泳ぎ、

手を上げる。


「まいったよ。なんの用だ」


「お前は弩を使うそうだな」


「あぁ。弩のドブロクとは俺のことだ」

ドブロクは胸を張る。


「お前のことは知らねぇが、ようは的にはたまに当てられるくらいの腕はあるって事か?」

俺は少し煽る。


「舐めてもらっちゃ困る。俺は外さねぇ」

ドブロクは笑った。


「そうか。そうか。しかしそれは残念だな。せっかくの腕も、処刑されたら使えない」

俺はドブロクの目を見る。


「あんたが俺を雇うってことか?」


「不服か?」


「別に不服じゃねぇよ。ただあんた頭がいかれてそうだから、心配なだけだ」

ドブロクは目を逸らす。


頭がいかれてそう。

おぉ完全にサイコキャラじゃねぇか。


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