勧誘
短剣に映った頭を見る。
なかなかキレイなモヒカンだ。
できればスプレーで立てたいが、
この世界にはスプレーなんかないだろう。
コーラを振りかけて髪の毛を立たせる、
という方法もあるみたいだが、
俺は試してないし、
砂糖自体が高級品らしい。
どこかの部族は赤土の泥で髪の毛を固めたと聞くが、
それはどうだろうか……。
文明がないというのは、
なかなか悩ましい。
さて、
ヤマノウエ団と魔物討伐。
勢いで言ってしまったけど、
これからどうしよう。
俺は少し考える。
まずは仲間の勧誘だな。
しかし、
牢に収容されてる連中は俺も含め犯罪者だ。
やっかいな連中が多いだろう。
俺に団を統率できるのだろうか?
まぁ良い。
このソーダって男は、
なかなか頭が切れそうだ。
聞いてみよう。
使えるものは、使い倒す。
それが俺の主義だ。
「ちょっと聞きてぇんだが、罪人が素直に俺の言う事を聞くだろうか?」
ソーダは手を顎に添え考える。
「素直に聞くとは思えませんね」
「そうだよなぁ。普通はどうする?」
「近衛騎士団の場合、最終的には鉄拳制裁です」
鉄拳制裁か……。
しかし、
札付きのごろつき相手に、
喧嘩で勝てる気がしねぇ。
「喧嘩で勝てない相手なら、どう従わせる?」
「そうですね。
恩を売るか、利益で従わせるか、得だと思わせるか。
あとはヤバイと思わせる、ですね」
「ヤバイと思わせる?」
「はい。仮に喧嘩が弱くても、こいつと戦ったらヤバイという相手には手を出しません。
蛇とか蜂とか、好んで戦わないですよね」
「蛇と蜂か。
たしかに毒を持っている相手には、うかつに近寄らねぇもんな」
「あとは、頭のおかしい相手には、手を出さないでしょう。何をされるかわからないですからねぇ」
「なるほどな」
俺の頭の中で何かがかみ合った気がした。
俺は牢に案内してもらうことにした。
牢までは、時間がかかる。
その道中、これからの事を考える事にした。
とりあえず、
俺より弱そうな連中を探そう。
自分より強そうな相手は強力な味方になるが、
逆に俺の立場を危うくする。
まずは俺より弱そうな連中を従わせて、
頭としての実力を伸ばす。
それが最善だろう。
しかし、いくつか疑問がある。
少しソーダに聞いておこう。
「なぁ。騎士団では隊長になれば、いきなり大人数を従わせたりするものか?」
「まさか。
そんな事はありませんよ。
小さい班から始まり、小隊、中隊、大隊と少しずつ規模を大きくしていきます」
なるほど。
じゃあ、やはり仲間は五人くらいから始めるほうが良さそうだな。
「始めは五人くらいか?」
「そうですね。それで慣らしたほうが良いでしょう」
「しかし、小隊と中隊、大隊では人数が違いすぎる。上手く従わせられるのか?」
「あぁ。それはね。小さな隊は一人一人の兵士に役割を持たせる。中隊になると、小隊を一人一人の兵士のように扱う。大隊になると、中隊を一人一人の兵士のように扱うんです」
「ほほう。なるほどな。ソーダさん。あんた頭がキレるな」
「まぁ。近衛騎士団長の侍従ですから」
「俺は盗賊の経験はあるが、魔物討伐はしたことがねぇ。これから勧誘する奴もそうだ。なにかアドバイスはあるか?」
「アドバイスですか……」
ソーダは考え込んでいる。
「聞き方を変えよう。どんなタイプの勇者がすぐに終わりやすい?」
「あぁ、それは簡単です。もっとも速いのが、剣士タイプです」
「それはなぜ?」
「それはもちろん前衛だからです」
「槍はどうだ?」
「槍は比較的長生きします」
「それは何故だ?」
「剣と比べ、リーチが長いので攻撃をくらいにくく、それに剣技より習得しやすいからです」
攻撃をくらいにくい。
習得しやすい。
この二つが重なれば、
強いということか。
これどこかで聞いたな。
あぁ、織田信長の鉄砲だ。
そうか。
歴史の授業なんかクソだと思っていたが、
役に立つじゃねぇか。
「じゃあ、攻撃をくらいにくい。習得しやすいってのが、やられにくいってことか」
「そうなりますね」
「じゃあ、魔物相手に武器はなにが良い?」
「私の知っている武器のなかでは、槍でしょうね」
「弓とかはどうだ?」
「弓は強いですが、訓練期間が必要です。とくに近づいてくる魔物相手には恐怖で上手く扱えません」
「ほかはねぇか?」
「私はなんとも」
「わかった、ありがとうよ」
牢についた。
俺はとりあえず、
話を聞いていくことにした。
まずは何をしていたかと、武器はなにを使っていたかということだ。
……
斥候のノンアル
見るからに弱そうな男がいた。
手足は細くひょろひょろしている。
従順そうだが、
こいつは使えなさそうだ。
「おい。お前は何をしていた?」
俺は睨みつける。
「せ、斥候です」
「斥候ってなんだ?」
「偵察です」
「偵察? なんでそんな事をする」
「偵察をすれば、敵の数がわかります」
「敵の数がいくらであろうと、一生懸命戦ったらいいじゃねぇか」
「そんな事してたら、すぐに終わっちゃいますよ」
「そうなのか?」
「そうですよ。それに相手が大人数で、こちらが少人数でも、勝つことはできます」
「そうなのか?」
「そうです。だからあっしのような斥候がいるんです」
「じゃあ、お前がいたら、仲間が長生きするってことか?」
「はい。そうです」
「武器はなんだ?」
「戦いには参加しませんが、ナイフは使えます」
「そうか。お前これから処刑されるが、死にてぇか?」
「死にたくないですよ」
「じゃあ、俺の下で働け。長生きさせてやる」
「ここから出れるんですか?」
「あぁ」
「あっしは何をするんですか?」
「俺は隊を作って魔物を討伐する。魔物を効率よく狩るために手伝いをしろ」
「あっしは、戦うのは苦手です」
「あぁ知ってる。狩りは他の者がする」
「じゃあ、お願いします。あっしはノンアルです」
「俺の名はオクラ。
お前は今日から斥候のノンアルだ。
よろしくな。じゃあついてこい」
「はい」




