9. 魔女と日常
九話目です。よろしくお願いします。
今日は騎士の呪いを解いたから少し疲れたなあ…なんて思いながら、夕食を終えた後のお茶を飲んでいたら、エレアから連絡の小鳥が送られてきた。
騎士団に回復薬を全部買われてしまったので、少しでも良いから回復薬を納品して欲しいとの事。
「急病人が出た時、回復薬が無いと命に関わるる事があるもんね。用意しよう」
お茶を飲み切って作業場に行く。今晩中に回復薬を作って、明日朝にエレアのとこに持って行ってあげなくちゃ。
回復薬を作り終わって自分の部屋のベッドに飛び込む。目が覚めたら朝の八の刻だった。
朝食を済ませ、回復薬と金貨の入った革袋を鞄に入れる。
「忘れ物ないよね。じゃあ出掛けるかな」
森を出て村に向かう。
薬屋の扉を開けると、エレアとお客さんが話していた。店の隅で終わるのを待っていたら、私が来た事に気付いたエレアから声が掛かる。
「ロッテ、良い所に来てくれたわ。回復薬持って来てくれたのよね?早速、一本ちょうだい」
鞄から取り出しエレアに渡す。
「ありがと、ロッテ」
お礼を言うとエレアはお客さんの方へ戻っていく。お客さんは今渡した回復薬を買って帰っていった。
ふうっとエレアが息をつく。
「ロッテ、ありがとう助かったわ。村の大工のハリクさんが屋根から落ちて、結構な怪我をしたから回復薬が欲しいって。売り切れてたから本当に助かったわ」
「良かったわ。今日も十本持って来てたの。これ残り九本ね」
カウンターの上に回復薬を置く。
「ありがとう」
エレアは棚に回復薬を並べていく。
「はい、これ今日の分。急がせたから、ちょっと色を付けてあるわ」
エレアからお金を受け取り鞄に入れる。
「ありがとう。さすがエレア、分かってるねえ」
当然とエレアは胸を張る。
「そうだ、ロッテ時間ある?昨日は結局どうなったの?聞かせて欲しいなあ」
エレアが興味津々で聞いてくる。
「ごめん、先に銀行に行きたいんだ。それが終わってからでも良い?」
「いいよ、待ってる。帰りに寄って。美味しいお菓子用意しておくから」
「うん、帰りに寄るね。銀行に行ってくるわ」
「いってらっしゃい」
薬屋を出て銀行へ行く。ギルドの中にある銀行の窓口に昨日の金貨を預ける。
「これ全部、西の森の魔女リズの口座に入れて欲しいんだけど」
通帳を渡すと、窓口の女性が笑顔で答える。
「いつもありがとうございます、入金処理してまいります。少々お待ち下さい」
「お願いします」
待合の椅子に座って待つ。暫くすると窓口の女性に呼ばれた。
「全てリズ様の口座に入れさせて頂きました。ありがとうございます」
返してもらった通帳にちゃんと入っているか確認する。窓口の人に会釈をしてギルドを出た。
ギルドを出たら、ちょうど騎士団が前を通っているところだった。魔獣討伐も終わり王都に帰るのだろう。ふと視線を感じて顔を向けると昨日、私が解呪した騎士がいた。
私を見てる?目が合った気がした。
でも、騎士は何も言わず通り過ぎて行った。あの人、瞳は青いんだ…。やっぱり綺麗な人だわ、なんて思いながらエレアの店に向かって歩き出した。
「エレアお待たせ」
店に入るとエレアがテーブルにお茶とお菓子を用意してくれていた。
「お帰り。さあ、お茶にしよう。今日はもう店じまいにするから、いっぱい話そう」
「え〜そんな大した話じゃないけど」
「まあま、いいからいいから」
エレアに促され席に着く。
「えっと…何から話したら良いかな?」
昨日の出来事を話せるところだけ話す。倒れた騎士は怪我や病気ではなく呪いだった事や、私が解呪して元気になったから、先程村から王都に帰って行った事。
解呪で沢山の金貨を貰ったが、王都の神殿ではその金額が妥当だった事を話して聞かせた。
エレアは残念そうに呟く。
「そっか〜、もう帰っちゃったんだね。騎士団でもう一稼ぎしたかったなあ」
「でも、それなりに稼いだんでしょ?」
「まあね」
一通り話し終えたので帰る事にする。
「じゃあ、そろそろ帰るわ。次の納品も四日後で良い?」
「うん、大丈夫。じゃあお願いね」
「うん、またね」
エレアの店を出て森の家に帰る。帰ったら昨日貰った魔石の呪いを解いてみようかな。
家に着いたら少し薄暗くなってきたのでランプを点ける。
戸棚から魔石を取り出し、ランプに翳すと呪いの蔦が魔石の回りに渦を巻いていた。
「う〜ん、中々に酷い呪いね。掛けた相手に返すのが簡単だけど、下手に返したら相手が死んじゃうわ」
呪いは返されると威力は倍になる。
「ちょっと呪いをいじっちゃうか」
解呪しながら、呪いの効果を書き換える。返っても死にはしないが、呪い返しにあった事が誰が見ても分かる状態にしてやろう。
「呪い師に呪いを依頼した人間もいるはずだから、その人にも返るようにしちゃおう」
指先に魔力を込め、魔石の呪いの蔦を引き剥がし、刻まれている呪言を書き換える。
返された呪い師はさぞかし恥ずかしい思いをするだろう。まあ、相手が死ぬ様な呪いを掛けた方が悪いんだし。返されて死なないで済むのだから感謝して欲しいくらいだ。
魔石から呪いの蔦を全て剥がし、蔦を手に持ったまま家の外に出た。呪文を唱えて蔦を空に放り投げる。呪いの蔦は木々の上を三回廻って二手に分かれて飛んでいった。
「よし、これで大丈夫」
家に入り扉を閉める。手に持っていた魔石を見た瞬間、魔石が光った。眩しくて目を閉じる。光が収まったようなので目を開けると、掌に小さな犬が乗っていた。
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