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7. 新米西の森の魔女と薬屋 2

七話目です。よろしくお願いします。

私はびっくりして立ち止まる。


飛び込んできた騎士がエレアの元に駆け寄って。


「店主!回復薬をあるだけ売ってくれ!出来るだけ多く欲しい!」

「多くと言われましても、今手元にあるのはこの十本だけで…」


「それだけでもいい。売ってくれ!それから、その薬を作っている者を教えてくれないか?」

「それは、何故でしょうか?」



エレアの問いに騎士は少し辛そうに話しだした。


「魔獣討伐の際、魔獣にとどめを刺した騎士が直後に倒れたんだ。高熱と身体に黒い蔦の様な模様が拡がって、それが酷く痛む様で。薬師の回復薬を飲ませても効かないんだよ…」


「ただ、この店で買った回復薬を飲んだ時は痛みが抑えられたんだ。だから!」


騎士を手で制してエレアが言う。


「事情は分かりました。あの薬は西の森の魔女様が作った物です。西の森は魔女様の許しの無い者は入れません。だから、魔女様に連絡を取ってみます。でも、来て下さるかは魔女様次第ですよ」


私はエレアにこっそりと合図を送る。


エレアが騎士の気を引いてくれている隙に扉から外に出た。

 

店の裏に回り込み、鞄からローブを取り出し素早く身に着ける。ローブのポケットから指輪を取り出す。


師匠から、魔女は若いと侮られる事があるから、商人や貴族に関わる時は、この指輪を使いなさいと渡された物だ。


いつも掛けている姿変えの魔法を解いて指輪を嵌めると老婆の姿になる。姿変えの魔法は声までは変えられないが、この指輪は声まで変えてくれる。


師匠自慢の魔道具だ。相変わらず師匠の魔道具は素晴らしい。私は魔道具作りはまだまだ修行が必要だ。



暫く待っていると、エレアの連絡の小鳥が私の肩に降りてくる。小鳥に『直ぐ行く』とメモを付けてエレアに送り返す。



店の前に回り、一呼吸おいて扉を開ける。


「エレア、急用かえ?」


流石、師匠の魔道具。声もちゃんと老婆っぽいしゃがれ声になっている。しゃべり方は師匠を真似して少し偉そうにしてみたり。 


「西の森の魔女様!お呼び立てして申し訳ありません、実は…」


エレアが経緯を話し始める。さっき話を聞いてたから知ってるんだけど、エレアから説明を受ける。


話を聞き終わって、壁にもたれている騎士に声を掛けた。


「騎士殿、話だけでは分からん。ワシに患者を見せてくれまいか?」

「西の森の魔女様、来て下さるのですか!では今すぐに!」



そうして騎士に連れられて来たのは村の宿屋だった。騎士は上官らしき騎士に説明をし、回復薬を渡しているようだ。


上官の騎士が私に近づいてくる。


「魔女殿、ご足労頂きありがとうございます。私は騎士団団長のジェラルド・ミューラーと申します。西の森の魔女様は貴女に変わられたのですか?」


どうやら、このジェラルドは師匠と既知のようだ。


「ああ、リズは旅に出ている。その留守を預かっている者だ」

「そうですか。では魔女殿、我々では手の施しようがないんです。宜しくお願いします」


「では、患者の所に案内して貰おうかの」

「こちらです」


ジェラルドの後を付いて行く。


宿屋の一番奥が患者のいる部屋らしい。ジェラルドが扉を開けてくれたので中に入るとベッドに若い騎士が横たわっていた。


顔が赤く熱が高そう。顔や腕には黒い蔦の様な物が這う様に伸びている。確かに少しづつ拡がっている様だわ。


…これは呪いね。それもかなり強力な。魔獣は意思を持たないのに、呪いを掛ける事が出来るのかしら?


ジェラルドの方に向き直り問う。


「お前さん達、討伐したのは本当に魔獣だったのかえ?」

「どう言う事ですか?魔女殿」


「この黒い蔦の様な物は呪いだ。魔獣にはこんな事は出来ない」

「とても大きな魔獣でした。ここに魔石もあります」


ジェラルドが大きな魔石を差し出す。魔獣を殺せば身体は消滅するが、核となる魔石が残る。


魔石を受け取り見る。


「ふむ…」


魔石自体にも黒い蔦の様な物が絡み付いている。どうやらこの魔獣?らしき生き物自体が呪われていたようだ。


呪いを受けた騎士はとばっちりを食ったんだね。お気の毒。


この魔石の素性はさておき、騎士の呪いを解いてあげようかな。



呪いを解くのも魔女の仕事だ。教会の聖水でも解けるが、この村の教会の聖水では、ここまで強い呪いは解けないだろう。


「ジェラルド殿、これから解呪を行う。しばらく部屋から出ていてくれまいか?」

「何故ですか?彼を一人にする訳には!」


どうやら、このベッドの上の人は只人ではなさそう。まあ、私には関係ないけど。


「あんたが危ないからだよ。解呪の際に呪いが次に取り付く相手に、あんたを選ぶ可能性があるからね」

「ですが!」


ため息を一つ落として、食い下がるジェラルドに告げる。


「分かった。じゃあこの話は無かった事にしよう。村の薬屋で買った物より、上級の回復薬を届けてやる。解呪は王都の神殿でやって貰えばいいさ」


ジェラルドはしばらく考え込んでいた。その側でベッドの若い騎士が苦しそうにうめき声をあげる。


確かに苦しそうで可哀想ではあるんだけど、私も譲れないのだ。


解呪の時には、魔道具の指輪を外さなくてはならない。師匠の魔力が強いから、指輪の魔力が解呪の魔法を歪めてしまう。歪められた魔法は何が起きるか分からないからね。


それに指輪を外すと元の姿になってしまう。


本当の姿を見られるくらい良いじゃないか?と思うでしょ?でも、私の髪と瞳は他人に見られては困るんだもの。 


まして相手は騎士団の人間だ。騎士団には貴族の人間も多いと聞く。


過去に貴族に誘拐された事もあるし、貴族には関わりたくない。


私は部屋を出ようと扉の方へ歩き出した。




最後まで読んで頂きありがとうございます。

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