4. 老魔女の弟子と伯爵と誘拐 (ロッテ視点)
四話目です。よろしくお願いします。
七歳の時に村の薬屋に薬を届けるのは私の仕事になっていた。
村の薬屋、エレアの所に師匠の薬を届けに行った帰り、村を出た所で黒い服を来た男に後ろから口を塞がれた。
私はめーいっぱい暴れたけど、男の力には敵わなくて、薬みたいなのを嗅がされて眠ってしまった。
気がついたら、明り取りの小さな窓しか無い、薄暗い部屋に寝かされていた。扉には当然だが鍵が掛かっている。どこからか出られる所が無いか探していると扉が開いた。
立派な服を着た髭の男と、さっきの黒い服の男が入ってきた。
髭の男が言う。
「魔力持ちだそうだな。お前は私が有効活用してやろう。有り難く思え。オルト、仕事を教えてやれ」
「はい分かりました」
黒い服の男はオルトと言うらしい。何も言わない私に、オルトが近づき石を差し出して来た。
「これから、お前はこの石に魔力を込めて魔石にする仕事をして貰う。ちゃんと働けば飯は食わせてやる」
「…家に返して」
オルトに喉元を掴まれ頬を打たれた。何度も何度も。痛くて痛くて悔しい。
「ん?お前…何か魔法を使っているな?自分に何の魔法を掛けている?解け」
「い…やっ…」
オルトに私が自分に魔法を掛けている事に気付かれた。私が断ると、また容赦なく頬を打たれる。
「解けと言っている!殺されたいのか!」
魔法を解かないでいると、また殴られた。痛い…痛い…痛い。
「分か…った…から、ぶたな…い…で…」
私が逆らわないと思ったのか、床に投げ捨てられる。
「早く解け!」
仕方なく姿変えの魔法を解く。私の元の姿に髭の男が目を見開く。
「これは!!」
「伯爵、どうされました?」
「この娘は王族の庶子かもしれん!辺境の村で大変な物を見つけてしまったわ!この娘を上手く使えば王家に恩を売れるかもしれんぞ!」
「王族…ですか?」
「そうだ!この銀色の髪、王家に連なる者にしか出ない色だ!私は運がいい!」
髭の男は伯爵なんだ。それに、私が王族?母さまは、私の父親は貴族だと言っていたけど、まさか王族なんて…。
「オルト!この娘は絶対に逃がすな!私は陛下に書簡を認めてくる。王家に引き渡すまでは魔石作りの仕事をさせておけ!」
伯爵は急いで部屋から出て行った。
「はっお前、王族だと?笑わせてくれる」
オルトは王家に恨みでもあるんだろうか?私を憎々しげな目で見てくる。
「伯爵様の言い付けだ。大人しく仕事をするんだな。逃げようなんて考えるなよ。さあ、今日の分の石だ。これ全部に魔力を込め終わらないと飯は無いからな」
寝転がっている私の側に石の入った箱を置いて、オルトが部屋を出ていく。扉に鍵が掛けられた音がする。
痛くて悔しくて涙が止まらない。でも、ぐっと我慢して涙を止める。泣くと体力を消耗するから。
私は、まだ生活魔法しか使えない。攻撃に使える魔法は危ないからって、まだ教えて貰っていない。
前に置かれた箱には大量の石が入っていた。
魔石は魔獣から採れるものだ。魔道具に魔石を嵌めて動力源として使う。魔力が無くなったら魔力持ちが魔力を込めると、また使うことが出来る。
魔女や魔術師の中には、これを仕事にしている者もいる。
今は何時頃だろうか?エレアの店を出たのが昼の一の刻。明り取りの窓から見える光はあまり変わっていない。昼の三の刻位だろうか?
「師匠なら絶対に助けに来てくれる」
頬が熱を持って熱い。水魔法は使える。ハンカチに魔法で出した水を染み込ませて頬に当てる。
「冷たくて気持ちいい…」
気持ちが落ち着いた所で、姿変えの魔法掛けなおす。師匠が最初に姿変えの魔法を教えくれた訳が分かった気がする。
「師匠…」
大人しく師匠が助けに来てくれるのを待つ。
小窓の光はオレンジ色に変わり、やがて夜の色に変わって行った。
嫌だけど魔石に魔力を込めていく。少しはやらないと、きっとまた打たれる。痛いのは嫌だ。
少し石を作って、慣れていないから沢山作れないと言えば、打たれることは無いだろう。
食事が貰えるかは微妙だけど。
師匠が来てくれるまで作業に集中していれば怖くない。私は大人しく師匠を待つ事にした。
それから師匠は、本当に直ぐ助けに来てくれた。
師匠が助けに来てくれたのは直ぐ分かった。派手な音が私の居る部屋にまで響いていたから。
私が助け出された後、騎士団の手によって伯爵は捕縛された。あのオルトって男も。私が魔女の弟子だと知らなかったとか言い訳していたけど、弟子とか関係なく誘拐はだめでしょ。
師匠がいなかったら、魔女の弟子じゃなかったら、私はどうなっていただろう。王家に引き渡されて道具にされていたのか。それとも、あの地下室で働かされ続けていたのか。
家に戻ったら、母さまが待っていてくれた。思いっきり抱きしめられて、ちょっと苦しかった。
師匠から今日の経緯を聞いた母さまは、また私をぎゅってした。
母さま、心配掛けてごめんなさい。
最後まで読んで頂きありがとうございます。




