3. 老魔女と弟子と誘拐 1
三話目です。よろしくお願いします。
ロッテは五歳になった頃から薬作りも手伝う様になった。この子は頭が良い。レーテの真似をして薬を作る。品質はワシの物より、若干劣るが効き目としては十分だろう。
「まったく。ロッテは優秀だね。ワシが隠居させて貰えるのも案外早いかもしれないね」
「駄目ですよぉ。師匠にはいっぱい、魔法を教えてもらうんですから」
ロッテは手に一杯の薬草を抱えて、にかっと笑った。
「やれやれ、師匠に厳しい弟子だ」
更に年月が過ぎ、七歳になったロッテは西の森から一番近い村にある、エレアの薬店へ納品も出来るようになっていた。
エレアは薬屋の娘だ。歳はロッテと同じ七歳だが、しっかり店をきり盛りしている。二人は気が合ったようで、直ぐ仲良くなった。
「師匠、エレアの所に薬を届けに行ってきますね」
「ああ、気を付けてお行き」
「ロッテ、エレアの所であまり長居しては駄目よ。暗くなる前に帰っておいでなさいね」
レーテもロッテに声を掛ける。
「はあい。行ってきます!」
元気良く家を出る。
もう何度も村には行っている。この日もいつもの様に行って、帰ってくるはずだった。
だが、夕刻になってもロッテは帰って来なかった。
「リズ様、今日はロッテ遅くありませんか?暗くなる前に帰って来る様に言ってあったのですが…」
「そうだね、おかしいね。ロッテは言い付けを破る様な子じゃない」
ワシは時計を見た。夕の六の刻を過ぎてもロッテが戻っていない。エレアの所で長居をしても昼の三の刻を過ぎる事は無かった。
「こんな時間まで戻らないのは、おかし過ぎる。これはロッテに何かあったね」
「リズ様、ロッテは…」
「レーテ、心配しないでいい。あの子は賢い子だ。ワシがロッテを探して連れ戻す。ここで大人しく待っていておくれ」
「はい、リズ様。宜しくお願いします」
西の森を出て村に向かう。薬屋のエレアにロッテの事を聞く。昼前に店に来たロッテはエレアとお茶をして、昼の一の刻に店を出たと言う。
『ロッテに何かあったの?』と心配するエレアに大丈夫だよと告げて店を出る。
エレアの薬屋からロッテの魔力の痕跡を追う。店を出たロッテは村を出て、真っすぐ西の森の方に向かっていた。
だが、途中で魔力の痕跡が消えていた。ロッテの痕跡が消えた場所に薄っすら別の人間の魔力を感じる。
「ここで馬車か何かに乗せられて拐われたか。相手は僅かだが魔力持ちじゃな。だから、ロッテの魔力に気が付いたのか」
馬車に乗せられたのでは魔力の痕跡は追えない。
「さて、どうしたもんかね…」
もう一度村に戻り、他の住人に話を聞く事にする。
村の通りで露天商を営む男から、最近この村に黒塗りの馬車がよく来ているのを見かけたと聞いた。
今日の昼過ぎにも見たと言っていた。
馬車の事を詳しく聞くと、扉に家紋が描かれていたと、露天商の男が家紋を紙に描いてくれた。
礼を言って村を出る。手には家紋を描いた紙を持って。
「この家紋がどこの家の物かは知らないが、魔女の弟子に手を出した落とし前をきっちり付けて貰おうじゃないか」
家紋の紙を手に転移魔法を唱え王城に飛ぶ。転移魔法は一度行った事のある所ならすぐに飛べる。
王城の前に降り立つと衛兵に声を掛けられる。
「怪しいやつ。何者だ!」
「ワシは西の森の魔女リズ、王に取り次ぎな」
衛兵は魔女と聞いて、慌てて城の中に駆け込む。暫くすると騎士団団長のジェラルドが駆けよって来る。
「リズ殿、お久しぶりでごさいます。王は所用で城にはおりません。今日はどうされましたか?」
「久しぶりだね、ジェラルド団長。王は不在か。なら、あんたでもいい、この家紋を使う家を教えておくれ」
ワシは手に持っていた紙を広げる。
「これは…ポルテ伯爵家の家紋ですね。この家の者が何か?」
ポルテ伯爵か。確か西の森から少し離れた所に小さな領地を持つ貴族だね。
「なあに、ワシの可愛い弟子を拐ってくれたのでな。迎えに行くだけさ」
ジェラルド団長は顔を手で覆った。
「なんと言う事を…」
「そういう事じゃから手出しは無用に願うよ。ではワシは行くからの」
転移しようとしたワシをジェラルド団長が止める。
「お待ち下さい!リズ殿、我々がポルテ伯爵家を捜索し弟子の方を救出致します!ですからリズ殿!」
「嫌だね。魔女に手を出したんだ。これがどう言う事か分からせないとね。ではな、ジェラルド団長」
「リズ殿!」
ジェラルド団長を振り切って転移魔法を唱える。
「いかん!団員を招集しないと!」
ジェラルド団長が慌てて走っていくのを横目で見ながらポルテ伯爵の領地まで飛んだ。
ポルテ伯爵の領地にある村に降り立つ。さすがにポルテ伯爵の屋敷には行った事が無い。村の者に屋敷の場所を聞く。
伯爵の屋敷は村からそれ程、離れていない場所にあった。時間を掛けず到着した。
さあ、馬鹿な貴族にお仕置きの時間だ。
腕が鳴るねえ。
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