2. 老魔女と弟子
二話目です。よろしくお願いします。
話し終えたマルガレーテを褒めてやる。
「あんたはいい判断をした。ワシならこの子を守れる」
「魔女様…」
「言いたくないじゃろが、ワシが思うに、この子の父親はバーデン公爵じゃないかね?銀色の髪は王家に連なる者にしか出ない」
臣籍降下した元王弟が銀色の髪と紫の瞳を持っていたはずだ。女癖が悪いだとか裏で悪事を働いているとか、色々と評判の悪いバーデン公爵。
「…そうです」
マルガレーテは頷いた。
「あんたの気持ちはよく分かった。この子はワシの弟子にしよう。安心おし。あんたの親にもバーデン公爵にも手出しはさせやしない。ワシが立派な魔女にしてやるよ」
「あ、ありがとうございます!」
「それから、ここに住むのに金は要らないよ。ワシの薬作りの手伝いや家事をしてくれればいい」
「分かりました。精いっぱい働かせていただきます」
マルガレーテは頭を下げた。
「いいともさ。それから、あんたに一つ魔道具をあげよう。姿変えの魔法が込められた指輪だ。あんたの身を守るためだ。付けておきな」
「そんな魔道具があるのですか?」
ニッと笑ってワシは小さな指輪を差し出した。
「ワシの自慢の魔道具だよ。指に嵌めてごらん」
マルガレーテは指輪を受け取り指に嵌める。途端にマルガレーテの金色の髪は茶色に。碧い瞳は明るい茶色に変化した。
「鏡を見てご覧な」
渡された鏡を覗き込むとマルガレーテの顔だと分からないくらい変化していた。
「凄いです魔女様!これなら両親もバーデン公爵も私だと分からないと思います」
「気に入ってくれたのなら嬉しいよ。さ、夜も更けた。二階に部屋を用意しよう。ゆっくり休むがいいさ」
「はい、ありがとうございます」
二階の空き部屋に寝床を用意してやった。マルガレーテは疲れていたのだろう。ベッドに入って直ぐに寝息を立て始めた。
ワシも自室のベッドに入る。ワシは今まで弟子を取った事は無い。赤子に魔法を教えるのは暫く先だろうが、明日からの生活が楽しみだ。
翌朝、少し寝坊したマルガレーテがシャルロッテを抱いて階段を下りてくる。
「おはようございます、魔女様。遅くなって申し訳ありません」
「いいさね。あんたも疲れてたんだろうしね。ゆっくり休めたかい?」
「はい、ありがとうございます。よく眠れました」
「マルガレーテ、魔女様は止めておくれね。今日からアンタはレーテ、その子はロッテと呼ぶからね。ワシの事はリズと呼んでおくれ」
「はい、分かりました。リズ様」
「様も要らないんだけどね。ま、いいか。ほら朝ごはんをお食べ。食べ終わったら薬作りを手伝って貰うからね」
「はい!リズ様」
席に着いたマルガレーテの前に、パンと目玉焼きと付け合わせの野菜。それからスープを置く。
「すみません、私が朝食を用意しなければいけなかったのに」
ワシはカカカと笑う。
「レーテは疲れてたんだよ。明日から頑張っておくれ」
「はい、リズ様」
今日もロッテは籠の中でご機嫌だ。
食事を終え薬作りを始める。レーテは手際がよく薬作りの手順もすぐ覚えた。
薬作りが一段落したら昼食。午後からは薬草畑の手入れをする。
今日は薬を村の薬屋に卸しに行く日でもない。畑の手入れが終われば仕事は終わりだ。
「レーテ、今日の仕事はこれで終わりだ。夕食までゆっくりしな」
「はい。リズ様、夕食は私が作りますね」
「家にある食材はどれを使ってもかまわないからね。夕食楽しみにしてるよ」
「はい!」
夕刻、レーテの作った料理で夕食を取る。侍女をしていたからだろうか?貴族令嬢であった筈のレーテの料理は美味しかった。食事を終えてレーテと雑談をし、夜も更けたので休む事にする。
レーテとロッテ、三人で暮らすのは中々楽しいものだった。長く一人で暮らしていたワシに家族が出来るとは思わなかった。
三年が経ちロッテも三歳になった。そろそろ魔女としての修行を始めても良いだろう。
最初に魔力を制御する方法を教えた。小さい内は魔力暴走を起こす事があるからだ。
そして、一番初めに教えた魔法は姿変えの魔法だ。ロッテの銀色の髪は目立ち過ぎる。今までは森から出ずに生活していたが、これからはそう言う訳にもいかない。
「ロッテ、まず最初に姿変えの魔法を教えよう。これはお前にとって必要な物だよ」
「すがたがえ?ロッテひつよう?」
「ああそうだ。呪文を教えるから覚えるんだよ」
「あい!」
「カンビアル・デ・フォルマ」
「たんびゃる・で・ほるま」
「そうそう。もう少し発音を丁寧に」
「たんびやる・で・ふぉるま!」
ロッテの頭を撫でてやる。
「そう少し良くなったね。もう少し頑張りな」
「はい、りずさま」
「ワシの事は師匠と呼びな。ロッテはワシの弟子だからの」
「ししょう?」
「そう師匠。さ、呪文の練習を続けるよ」
「あい!」
一週間程で、姿変えの魔法を使えるようになった。
「ロッテ、姿変えの魔法は必要な時以外は解いてはいけないよ。分かったね」
「どうして?わたし、かみのいろ、ぎんいろがいい」
ロッテが色を変える事を嫌がると、レーテも指輪を外して、元の髪と瞳を見せた。
「母さまも色を変えているの。ロッテも変えてくれると嬉しいなあ」
「母さまといっしょ。ロッテもいろかえる!」
レーテにそう言われてロッテは嬉しそうに魔法を掛けていた。
銀色の髪は茶色に。紫の瞳は明るい茶色に。
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