35. 魔女と顛末とこれから
三十五話目です。よろしくお願いします。
森の家に帰り日常が戻って来た。勿論、ユーリも居る。
姿変えの魔法は、もう必要ないかな?と思わなくも無い。だけど、茶色の髪と瞳も慣れ親しんだ私だ。だから、もう暫くは魔法を掛けておこうと思う。
無事、復讐を果たした事を母さまのお墓に報告した。母さまは復讐なんて望んでいなかったかもしれないけど。
私が許せなかったのだ。後悔はない。
あの後、ユーリが国王陛下に事の次第を報告して、バーデン公爵には過去の所行も合わせて罪に問われた。結果、バーデン公爵は元公爵となり領地に軟禁となった。生涯領地から出る事は許されない。
国王陛下が『ロッテ殿の掛けた魔法が一番の罰だろう。頼むから私には掛けないでくれ』と言っていたとユーリから聞いた。
それから、バーデン公爵家自体は罪に問われる事はなく無事に義兄が後を継いだ。
あの父親に似ず義兄は良い人だった。『お義兄さまと呼んでくれ』とお願いされて、ずっと『お義兄さま』と呼んでいる。
ただ、ユーリと私の取り合いをするのは止めて欲しい、本当に。
私との婚約が決まってから、ユーリは激甘だ。胸焼けしそう。
婚約を機に『ユーリ』の呼び方を『ユリウス』に変えようか?と言ったら『ユーリ』の方が良いというので『ユーリ』呼びのままだ。
でも、どうしても婚約者として出なければいけない公式行事の時は、ちゃんと『ユリウス』と呼んでいる。
ユーリは貴族の仕事はしなくても良いと言うが、魔女を続ける事を許して貰っているのだから、私も多少は譲歩したいのだ。
それから、ちょこちょこ王妃陛下とソフィア夫人に呼ばれて王宮でお茶会をしている。二人は王都の学院の同級生だったとか、仲がいい。
けれど、二人して『ロッテのお義母さまは私!』と言い合っている。
そこにユーリのお母様、第三側妃のシルヴィア様も参戦して三つ巴の戦いになってしまった。
『三人とも私の大切なお義母さまだよ』と言ったら三人の涙腺が決壊して大変な事になった。
シルヴィア様はユーリと同じ、黒髪に青い瞳の綺麗な方だったと付け足しておこう。
ミラルカは婚約した私達を見て『胸焼けがする。新婚の邪魔をする気は毛頭ない。故に妾は森に帰る』そう言って森に帰ってしまった。
でも、ちょくちょく遊びに来てくれるから、寂しくはない。
相変わらず私は薬作りの毎日だ。騎士団からも定期的に注文を貰っている。毛生え薬の顧客も増えている。その中に国王陛下がいるのは内緒だ。
エレアには、ユーリが本当は『ユリウス第五王子殿下』だと伝えると『何となく納得』と言われた。やっぱり品の良さは隠せないらしい。
私の本当の名前と姿も見せた。エレアに責められるかと思っていたけど、反対に『苦労したんだね』と慰められた。
ただ相変わらずユーリとの事で揶揄われ続けている。彼女に彼氏が出来た時は、お返しに散々揶揄ってやろうと思っている。
ユーリと婚約をしたけれど、生活は今までと変わらない。私は薬作りと魔女業。ユーリはまだ騎士団に所属していて、朝出掛けて夕方に帰って来る。
結婚は…するだろうけど未定だ。
ユーリは結婚と同時に騎士を辞め、臣籍降下して侯爵になる予定。
以前は伯爵位を賜る予定だったが、私が公爵家の庶子で、ソファ夫人と義兄に娘だと認められている事を加味しての配慮だそうだ。
領地は西の森を含む、この地方一帯になる。
領地に屋敷を構えて、ユーリは領地経営の仕事は屋敷で行い、夜は森の家に帰って来る。私が森を離れるのを嫌がったからだ。
ちなみに、師匠にもユーリと婚約した事は伝えてある。数ヶ月に一度、師匠から連絡の小鳥が届く。その小鳥の折り返しに近況を綴った手紙を結びつけて届けて貰うのだ。
師匠とネロは旅を満喫しているみたいで、届く手紙には楽しそうな光景が書かれている近々、ベルナー王国に一度戻ってくるらしい。私の婚約祝いとユーリの顔を見たいんだって。
旅のお土産と土産話をたくさん抱えて師匠が帰って来る。とても待ち遠しい。
「ふう、これで完成かな」
出来上がった回復薬を箱に入れる。今週、騎士団に納品する分だ。納品はユーリがやってくれる。
以前、一度だけ作る事が出来た完全回復薬を作れないかと試行錯誤しているが出来た試しがない。あれが沢山作れれば、助けられる命が格段に増えるのにと思う。
「もう少し頑張ろう」
夕刻、ユーリが帰って来た。
ユーリに会うのは五日ぶりだ。五日前から条約の締結の為、隣国まで宰相の護衛として同行していた。
「ただいま〜。疲れたよ」
「お帰り。お風呂先に済ませちゃう?」
「そのまえに…あれして欲しい」
『あれ』と言うのは、帰って来たユーリをハグする事だ。騎士団の仕事で帰れない日が続くと、私成分が足りなくなるらしい。
よく分からん。
腕を広げてユーリの胸に抱き着くと背中に腕を回されて抱きしめられた。ちょっと苦しい。それから、首筋に顔を埋められる。
「ロッテ不足で死ぬかと思った」
ユーリの背中をぽんぽんする。
「お帰り。ユーリ」
「ただいま」
ああ…何だろう、この胸の中にあるほわほわした気持ちは。私より背が高くて強い男なのに可愛くて可愛くて愛おしい。自覚が無かっただけで、ずっと前からちゃんと好きだったんだなあ…。
「ユーリ大好きよ。愛してるわ」
ユーリは体を離し、驚いた顔をして私の顔を見つめた。そしてにっこり笑う。
「俺も愛してる」
そう言って私に口付けを落とすのだった。
ここから先は、ロッテとユーリの物語だ。そして、二人で幸せの物語を紡いでいく、きっと。
Fin
最後まで読んで頂きありがとうございます。
これにて完結となります。番外編等は考えておりません。リクエスト等ありましたらその時は考えます。
それではまた次の作品でお会い出来る事を願っております。
ありがとうございました。




