33. 魔女と公爵とざまぁ 2
三十三話目です。よろしくお願いします。
馬車が止まった。
再び公爵に抱き上げられ、馬車から下ろされて運ばれる。屋敷の中には僅かに人の気配がした。
公爵が眠っている若い娘を抱いて歩いているのに、誰も声を掛ける者はいない。誰も逆らえないんだろうな。
使用人に扉を開けさせ何処かの部屋に入ったみたい。ベッドに寝かせられて、柔らかいな、私のベッドとは大違いだなんて感想を抱いていると公爵の声が聞こえた。
「下がれ。私が呼ぶまで誰もこの部屋に近づけさせるな」
「かしこまりました」
使用人が部屋から出ると公爵は内側から鍵を掛けた。
「さあこの小娘を頂くとするか。この事を知ったユリウスがどんな顔をするか楽しみだ」
あ〜嫌な奴。ユーリへの嫌がらせで私に手を出そうだなんて許せない。
公爵が私の服に手を掛けた瞬間に目を開けてやった。私と目が合った公爵の驚愕の表情が笑える。公爵は転がり落ちるようにベッドから離れた。
「ま、まだ薬が切れる時間ではないはずなのに!」
私はゆっくりとベッドから立ち上がって公爵に向かって微笑みかける。
「お生憎様。私に眠り薬は効かないんですの」
それから、自分に掛けている姿変えの魔法を解いた。銀色の髪と紫の瞳に戻して公爵の同じ色の目を見つめてやる。
私の髪と瞳を見た公爵は狼狽え始めた。
「な、なんだ。その髪と瞳の色は?お前は誰だ!!」
私は唇の端を上げて笑う。そして公爵に言ってやった、私が誰なのかを。
「この姿ではお初に御目に掛かります。マルガレーテ・ロンメルが娘、シャルロッテですわ。お父様」
「マルガレーテ・ロンメルだと?まさか…昔屋敷にいたあの侍女か?折角、綺麗な顔をしておったから可愛がってやろうと思ったのに、たった一度で逃げ出しおって!まさか私の子を産んでいたとはな」
「お母さまを覚えていて下さって嬉しいですわ」
私は笑みを深めて言葉を続ける。
「お母さまは亡くなりましたのよ。お母さまの言伝と私からのプレゼントがありますの。受け取って頂けますわよね。お父様?」
「な、なんだ!」
「まずはお母さまの言伝を」
私は思いっきり息を吸い込んでお腹の底から声を出す。
『下半身だけの馬鹿公爵!!』
大声で部屋の空気が震える。
「ですって。お母さまから愛されておりますわね。お・と・う・さ・ま?」
顔を真っ赤にした公爵が叫ぶ。
「私が愛してやったのに何が不満だ!勝手に屋敷を飛び出しおって!」
「まったく。救いようの無いクズですわね。そんなお父様には私から最高の贈り物を差し上げますわ」
そう言って、ゆっくりと呪文を唱える。魔法と言うより呪いに近いかもしれない。
公爵の身体が一瞬光りに包まれる。
「な、何をした?ま、魔法なのか?」
「大丈夫ですわ、命にかかわる様な物ではございません。お父様はこれより先、女性には触れられないだけですの」
公爵は顔を青褪めさせて叫ぶ。
「なんて事を!可憐な花を愛でられないではないか!」
「それが迷惑なのですよ。薬を使って眠らせて身体を奪うなんて卑劣な」
「わ、私は公爵だ!高貴な私が愛でてやるのだ!何が悪い!」
未だに反省が見えない男にとどめを刺してやろう。
「これだけは使いたく無かったんですけど、お父様があんまりに分からず屋だからお仕置きしますね」
公爵の顔が引き攣る。私が呪文を唱えようとした時、公爵は魔法を阻止しようと飛び掛ってきた。
それと同時に扉が乱暴に開かれユーリが飛び込んで来る。後に公爵夫人かしら?女性の姿もあった。
「ロッテ!無事か!」
あら残念。呪文を止める。
「全然大丈夫だよユーリ。出来たら後ちょっと遅く来てくれたら良かったなって思うけど」
ユーリが息を吐く。
「そうしたら碌な事にならないだろう?なんの魔法を使おうとしてたのか聞くのが怖いよ」
私とユーリの話に公爵が割り込んでくる。
「ユリウス!その者は魔法を使って、公爵である私に害を為そうとしたのだぞ!早く捕まえろ!」
夫人が前に出て、私ににっこりと笑い掛けてくれる。優しそうな方だ。この方が公爵夫人なら昔、母さまを公爵から逃がしてくれた恩人だ。
「捕まるのは貴方ですわ、旦那様。この方は西の森の魔女様。貴方は不可侵条約を破ったのです」
「なっなんだと。この娘が魔女?」
公爵は心底驚いている。
「ええお父様、私は貴方の娘でありますけど、西の森の魔女でもありますの」
「魔女という事は魔力持ちか。お前、私の娘だと言うなら私の役に立つ機会をやろうではないか。そうすれば私への無礼な態度も許してやる」
この男はとことん人を失望させるのが上手いらしい。
「馬鹿ですか?魔女は誰にも縛られないの。それに貴方とお会いするのは今回で最後かも知れませんし」
「…っ」
私の言葉を理解しているのかしていないのか。呆然と立ち尽くしている公爵を騎士達が拘束する。
「ボーデン公爵、魔女不可侵条約に対し違反行為があった為、拘束させて頂きます!」
騎士達に連れて行かれる公爵は振り向いて公爵夫人に懇願する。
「ソフィア、助けてくれ!」
「無理ですわ。大人しく刑に処されてくださいまし」
「私は無実だ!魔女だなんて知らなかったんだ!ソフィア頼む!」
「嫌です」
公爵夫人の拒絶に公爵は諦めて大人しく騎士達に連れて行かれた。
スッキリした顔をする公爵夫人に誘われた。
「魔女様、殿下。色々お話したいわ。お茶にいたしませんこと?」
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