29. 魔女と騎士と祝勝会
ニ十九話目です。よろしくお願いします。
ユーリをじーっと見る。
「何?」
「第五王子…。他に隠してる事無い?ユーリって本名?」
「本名はユリウス・フォン・ベルナーだよ」
「ユリウスだと愛称はユーリね。じゃあ最初名乗っていたクラウゼっていうのは?」
「ああ、あれは母の実家の名前だよ」
「へーそうなんだ」
今度はユーリから聞かれる。
「それより、ロッテの方が隠し事あるんじゃない?さっきのカーテシーは何?平民育ちで出来る物じゃ無いよ?」
「私には私の事情があるもの」
「ロッテの本当の髪は銀色だろ?ロッテが陛下の子供なら君と俺は兄妹になってしまう…」
それは嫌だとユーリが呟く。
でも、私の父親はバーデン公爵だ。それくらいなら言っても良いかな?私と兄妹かも?って思わせておくのは、いくらなんでも酷だ。
「ユーリ、他の人に話さないって約束してくれたら私の父親を教えるわ」
「ああ、約束する」
一拍置いて話す。
「私の父親はバーデン公爵なの。ユーリと私は従兄妹だね」
「バーデン公爵、本当に?」
「うん、母さまから聞いたから」
「何か事情があるんだろうけど、バーデン公爵か……。厄介だな」
何か思う所がある様でユーリはブツブツと呟きながら、考え込んでしまった。
部屋を出た国王と王妃は自室に戻っている。二人はロッテの容姿について話し合っていた。
二人には、もちろんロッテの姿変えの魔法は効いていない。魔法無効化の魔道具を着けているからだ。
「あなた、ご覧になりまして?ロッテ様のお姿。銀色の髪でしたわ。少し…あなたに似ておりましたわね?」
「わ、私ではない!私はお前や側妃以外に手を出してはおらん!神に誓って!」
「そうですわね。ロッテ様はあなたと言うより、あの方に似ておりますわね。特にあの紫の瞳とか」
「そうじゃな。あやつだろう」
「どうします?」
「どうしたらいいんだ?」
「わたくし、ソフィアに手紙を出しますわ」
「そうだ、それが良い!あやつの事はソフィア夫人に任せよう」
国王と王妃がこんな会話を繰り広げていたなんて、私は知る由もなかった。
何もする事がなくて退屈しだした頃、侍従が祝勝会の始まりを知らせに来た。
「ロッテ、行こうか」
「うん、やっとね。待ちくたびれちゃったわ」
ユーリにエスコートをして貰い、祝勝会が行われる大広間に向かう。
ユーリと一緒だから、私も王族側で入場しなければならないみたい。名前が呼ばれるけど、私はどうなるんだろ?
なんて考えていたら名前を呼び上げられた。
「第五王子ユリウス・フォン・ベルナー殿下、並びにロッテ嬢ご入場です」
大広間は既に大勢の人がいた。この人達みんな貴族なのね。視線が痛いなあ。令嬢たちの囁きが聞こえてくる。
(女性嫌いのユリウス殿下が女性をエスコートなさるなんて!)
(あのご令嬢はどなた?ロッテ様と呼ばれておりましたけど、家名がありませんでしたわね)
(社交界でお見かけした事ありませんわ)
(どういうお立場の方なんでしょう?まさか平民ではありませんよね?)
(平民をどこかの家の養子にして婚約を結ばれるおつもりでは?)
(平民なら許せませんわ。我が家からの婚約はすげなく断られましたのに)
そう言う意味の視線かあ。ユーリってモテるんだなあ。王子様だもんね。
ユーリの兄王子達が順に入場し、最後に国王と王妃が入場して祝勝会が始まる。
「皆のもの。今日はよく集まってくれた。先の遠征で辺境伯領の瘴気が無事に浄化された。それを祝して祝勝会を開催する」
「尚、今回の浄化の功労者である西の森の魔女殿と聖獣殿には、ご出席頂けなかった。だが感謝の意を表したいと思う」
「西の森の魔女殿、聖獣殿。感謝する」
大広間から拍手が起こる。感謝されるっていいなあ
王太子殿下と妃殿下のダンスを皮切りに皆がダンスを踊り出す。
「俺達も踊る?ロッテは踊れるの?」
「一応…」
「じゃあ行こう!」
ユーリに大広間の真ん中まで引っ張り出された。曲が始まる。不安だったけどユーリのリードが上手くて、まるで本物の貴族令嬢みたいだ私。
「上手いじゃないか」
「母さまに叩き込まれたから…」
ダンスは思ったより楽しかった。…ヒールで足が痛いけど。
ダンスが終わったら、ユーリが飲み物を取りに行ってくれたので壁際に立って待っていた。
「そこの貴女、ロッテ様とおっしゃいましたかしら?ちょっとよろしくて?」
令嬢達に囲まれてしまったよ、あらら。
「何でしょう?」
令嬢達のリーダー的な青いドレスの女性が話し掛けてくる。
「わたくしはバハルトッド侯爵家が娘、アネッサですわ。貴女、何故ユリウス殿下にエスコートされていますの?どういうご関係?」
「友人ですけど?」
「友人?社交界でお見かけしませんけど爵位はお持ち?」
「何故、貴女にそんな事を答えなくてはいけないの?」
「貴女、無礼よ!アネッサ様はユリウス殿下の婚約者なんですからね!」
取り巻きの令嬢が吠える。
ユーリの婚約者かあ。いるよね王子様なんだもん。やっぱりって気持ちもある。
結局、ユーリも王族だったって事ね。私の事好きって言ったのも、遊びみたいな物だったんだわ。うん…。
面倒だな。もう義理は果たしたよね。帰ろうかなあ…。
「ねえロッテ様、もうユリウス殿下に近づかないで下さる?身分の低い者と居るとユリウス殿下の品位が下がりますの」
アネッサとか言う令嬢は私を見下している。…ムカついてきたなあ。
油断していたらアネッサが持っていた飲み物を掛けられた。ワインじゃなかったけど、葡萄ジュースだろうな。髪から紫色の滴が落ちる。
あーあ、綺麗なドレスだったのに台無しだ。
最後まで読んで頂きありがとうございます。




