28. 魔女と騎士と王城
ニ十八話目です。よろしくお願いします。
走っている馬車の窓から外を眺めていると王城が近付いてくる。
豪奢な門をくぐり馬車止めへ。ユーリに馬車から降ろしてもらった。辺りを見渡しても、まだ他の貴族は来ていないようだ。
ユーリにエスコートされながら、王城の廊下を歩く。
「ユーリ、夜会には早くない?他の人が見当たらないよ?」
「ああ、まず陛下にお会いして貰うから、少し早く来たんだ」
「あの〜ユーリさん?陛下に会うって聞いてないんですけど?夜会の時に会うんじゃないの?」
「夜会の前に、国の危機を救ってくれた魔女殿に直接お礼を言いたいんだってさ」
「そんな事良いのに」
ユーリに案内された部屋は、王族のプライベートルームだった。
「こんなとこに入って来ていいの?」
「大丈夫、陛下からここに案内する様に言われてるんだ」
ユーリとやいやい言ってたら扉が開いて、品の良い男性と女性が入って来た。侍従が告げる。
「国王陛下、並びに王妃陛下であらせられます」
侍従は一礼して部屋から出て行った。両陛下はソファに座り、私とユーリにも席を薦める。
「魔女様、どうぞお座りになって」
王妃陛下だ、綺麗な人だなあ。
国王陛下は銀色の髪に青い瞳、王妃陛下は金色の髪に緑の瞳だ。
私はドレスを摘み、カーテシーをする。
「お初に御目に掛かります。西の森の魔女ロッテで御座います。本日はお招き頂きありがとうございます」
両陛下もユーリも私がカーテシーをした事に驚いていた。
母さまは子爵令嬢だったけど、高位貴族の屋敷で働けるくらいの礼儀作法を学んでいた。母さまは私の将来のもしもに備えて、貴族令嬢としての礼儀作法を叩き込んでくれたんだ。
まさか、本当に使う日が来るなんてね。びっくりだわ。まあ、魔女は王族と言えど遜る必要は無いんだけど。ユーリの手前、あまり不遜な態度も悪いかと思ってね。
「丁寧な挨拶をありがとう。頭を上げて下さいなロッテ様。ほらユーリ、貴方もロッテ様とお座りなさい」
「はい。ほらロッテ嬢座ろう」
ユーリに促され私も座る。
国王陛下が口を開く。
「この度は、国の危機を救って頂き感謝する。若き西の森の魔女殿」
国王陛下と王妃陛下が頭を下げる。
「頭を上げて下さい。瘴気に関しては私一人の力じゃありません。聖獣のミラルカ様が居てくれたからこそです。感謝はどうぞ、聖獣ミラルカ様にお願いします」
「聖獣ミラルカ殿には来ていただけなかったが、聖獣殿にも感謝をお伝えくだされロッテ殿」
「分かりました。必ず伝えます」
「それにユーリも何度も助けて下さったそうね。ありがとうロッテ様」
「それに関しましては、成り行きと言いますか、偶々と言いますか。まあ、最初は仕事でしたし。二度目はユーリ様は友人だから助けただけで…。」
「それでもよ。ありかとうロッテ様」
「いえ…」
それから夜会の前に、これだけは絶対言っておかなきゃ。
「国王陛下、お願いがあるのですが」
「何かな?私で叶えられる願いなら何なりと申すが良いぞ」
「今日の祝勝会で私を西の森の魔女だと紹介しないで頂きたいんです」
「何故かな?」
「私は森で静かに暮らしたいんです。多くの人に顔を知られたら、それもできなくなるかと」
「あい分かった。だが、瘴気浄化に西の森の魔女殿の力を借りたと告げるのは構わないかね」
「その程度でしたら…」
「分かった。魔女殿の名前、姿は明かさんよ」
「ありがとうございます」
一段落ついた所で、侍女がお茶を入れてくれる。
「ロッテ様、ここからは堅苦しい話し方は止めて普通に話してくださいな」
「良いんですか?王妃様」
「ええ、もちろん」
終始、にこにこ顔の王妃様に何か怖いものを感じるんだけど気のせいかなあ?
「ねえ、ロッテ様。ロッテ様はいつユーリと結婚して下さるの?」
私は飲みかけていたお茶を吹き出しそうになった。それはユーリも同様だったらしい。むせている。
国王陛下から突っ込みが入った。
「王妃、話が早すぎる!ユーリはまだロッテ殿から交際の返事さえ貰っていないらしいぞ」
「あら嫌だ。そうなの?ロッテ様」
「結婚も何も。付き合ってさえいませんから。ユーリ様から好意は伝えられましたけど…」
「まあ残念」
王妃様はふふっと笑う。
「王妃陛下、ロッテ嬢を困らせないで下さい」
「だって、ユーリがグズグズしてるから。わたくし焦れったくて」
ユーリと陛下達はどんな関係なんだ?随分と親しそうだけど。
「あの、王妃様とユーリ様って、どう言う関係なんですか?」
「ユーリは第三側妃の息子で第五王子なの。子供の頃から側にいるから息子みたいなものよ」
「王妃陛下!それはまだ、ロッテ嬢には言わない約束です!」
「……第五王子…」
思わずユーリを見る。ああ、ああ、確かに国王陛下に似てるわ…。髪は多分、母親似なんだろうけど、顔の作りや瞳の色は国王陛下だわ、うん。
「ごめんなさいね。でもロッテ様、ユーリは、いずれ爵位を貰って臣籍降下するけれど優良物件だと思うの。結婚を考えてやって貰えない?」
「すみません、情報量が多すぎて処理出来ません。少し時間を下さい…」
ユーリが謝ってくる。
「ごめんロッテ。王妃陛下の言葉は気にしないで」
「そうも行かないでしょ?」
王妃様の言葉に困っている私達を見て、国王陛下が王妃様を嗜める。
「王妃よ。二人には二人の都合があるのだ。あまり深入りするでないわ」
「でも、あなた」
「さあ、引き上げよう。ユーリよ、夜会までここでゆっくりするがよい。ロッテ殿、すまなかったな」
「いえ…」
国王陛下は王妃様を連れて退出して行く。
「また会いましょうね、ロッテ様。今度は二人でお茶しましょう」
王妃様が手を振ってくれた。
部屋に侍女は居るが、二人で残されてお互い言葉が出なかった。
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