27. 魔女と騎士と招待状
ニ十七話目です。よろしくお願いします。
お茶をユーリの前に置く。彼の分はちゃんと紅茶を入れている。
「ありがとう」
私もカップを持って席に着く。私のは師匠直伝の薬草茶なんだけど、はっきり言ってこれは不味い。体にはとても良いんだけどね。エレアの所に持って行っても売り物にならないだろうなあ。
「遠征大変だったわね」
「遠征の事でロッテにお願いがあるんだけど」
「何?」
「団長のジェラルドが、今回の遠征の報告書を作成するのに必要だから、ロッテから瘴気溜まり浄化の話を聞いて来て欲しいって」
「瘴気溜まりを浄化したのはミラルカだよ。私は魔力を渡しただけ」
私はミラルカが浄化した経緯を話した。
「ありがとう。これで報告書が出せる」
「私よりミラルカにお礼を言ってあげて」
「ミラルカって聖獣のことだよな。何故、聖獣はここに居るんだ?前は居なかったよな」
「居たよ、戸棚の中に。ミラルカは呪いを掛けられて魔獣みたいになってたの。それをユーリ達が討伐してしまったんだよ。私がミラルカの呪いを解いたら、彼女は私の魔力が気に入って、ここに住む事になったの」
「じゃあ俺が呪いを掛けられた魔獣と思っていた物は聖獣だったって事か」
「聖獣を討伐していたら大変な事になってたよ。今回の辺境伯領みたいにね」
「マジか…この国は二度もロッテに助けられていた訳だな」
「偶々だよ。偶々」
「それでもだよ。ありがとうロッテ」
お礼を言われると気恥ずかしい。
「それから、ロッテは行きたくないかもだけど、国王陛下から今回の瘴気浄化の祝勝会の招待状だよ」
ユーリから封蝋が押された封筒を渡された。
「…行かなきゃ駄目?」
「陛下から伝言。『祝勝会に参加してくれないと山程の贈り物を送り付けるよ』だそうだ」
「それ、師匠にも使った手じゃない」
師匠も陛下から山の様な贈り物を送り付けられて、王城に苦情を入れに行ってたっけ。
「祝勝会って何するの?」
「夜会を開いて、国中の貴族達にロッテの功績を発表するだけさ」
「夜会の時点で嫌なんですけど…。それに功績って言うならミラルカの方だよ。ミラルカも祝勝会に行かなきゃなの?」
「聖獣については本人の意思に任せるってさ。聖獣の機嫌を損ねる方が困るから」
「…私の機嫌は損ねても良いんだ…。私魔女なんだけど」
「陛下は現在の西の森の魔女に会いたいんだって。それに行かないと、この家に入り切らないほどの贈り物が届くよ」
「ずるいわ…」
これは断れないパターンだ。
「…老魔女で行くっていうのは…」
「却下。それしたら俺が山程の贈り物持ってくるよ、毎日」
国王陛下とユーリの言ってる事が同じなんだけど…。どっちにしても参加するしかないかぁ。一度位、社交界とやらを見てみるのもいいかな…と、自分を納得させてみる。
「一回だけだからね」
「ありがとう。当日のドレスは俺が用意するからね。サラサもロッテにドレスを着付けるの楽しみにしてるから」
ドレス…やだ。もう行きたくなくなって来た。
ミラルカは当然。
『祝勝会?面倒じゃ。行かん。ロッテは楽しんで参れ』
でした。
祝勝会当日、朝早くから王都のユーリの屋敷に行く。玄関でサラサさんが待ち構えていましたよ…。
「ロッテ様、お待ちしておりました。どうぞ、お二階に上がって下さいまし」
「サラサ頼んだよ」
「お任せください。夜会で一番美しいご令嬢に仕上げてみせますわ」
サラサさんの笑顔に背中がゾクッとしたのは内緒だ。
二階の部屋に入ると有無を言わせず、ひん剥かれお風呂で磨かれ、マッサージと体に香油を擦り込まれた。
ここまでで私の体力と気力はほぼゼロだ。
まだ、ここからドレスを着るためにコルセットを絞められる。…地獄だ…。
「まあまあ、ロッテ様の腰の細いこと」
「サラサ様、まだ絞めますか?」
「まだまだ行けそうね。ロッテ様頑張りましょうね」
サラサさんともう一人の侍女さんとでぎゅうぎゅうに絞められていく。
…吐く…内臓を吐く。泣きそう。
ドレスはベルラインで、上が薄い青で下に向かって青が濃くなり、裾の方はほぼ黒だ。ドレスを着て髪を結われる。
頭には青い宝石が付いたティアラが戴せられる。耳にも青い宝石のイヤリングが。
世の貴族子女はこれに耐えているのか…、貴族でなくて良かった…。
「さあ終わりましたよ。大変お美しゅうごさいます」
「終わったあ…」
「ユーリ様が一階の応接室でお待ちです。参りましょう」
「はい…」
一階の応接室に案内される。サラサさんに扉を開けて貰って中に入る。
ユーリも正礼装に着替えていた。白地に銀の刺繍がされ、胸ポケットには紫のチーフが挿されている。
「ロッテ、よく似合うよ。綺麗だ」
「ありが…とう。ユーリもカッコいい」
ユーリから腕を差し出される。
「ロッテ様、腕に手を添えて下さい」
サラサさんから教えられる。
ほうほう、これがエスコートというものなのね。
ユーリの腕に手を添える。
「表に馬車を待たせてある。行こうか」
「うん」
執事のダルマンさんが扉を開けてくれた。
外に出ると四頭立ての黒塗りの立派な馬車が待ってくれていた。御者が扉を開けてくれる。
「乗って」
ユーリに支えられ馬車に乗り込む。
こう言う時は、向かいあって座るのではないのだろうか?ユーリは横に座って、私の手を離してくれない。
「ユーリ、手を離して欲しいんだけど」
「嫌だ。本当はロッテを膝に乗せたいのを我慢してるんだから、手ぐらい繋がせて」
「理屈が分かんない」
こう言う時のユーリは引いてくれないから、私は諦める癖がついてしまった。
馬車はゆっくりと王城に向かって走り出した。
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