26. 魔女と騎士と聖獣
二十六話目です。よろしくお願いします。
騎士達のいるテントの近くにミラルカと降りる。私達を見た騎士達は歓喜に沸いていたのが、一変して唖然とした顔になる。
ジェラルドが私達の元に走って来た。
「魔女殿、今何をされたのですか?瘴気が消えて、魔獣もいなくなりました」
ジェラルドは私が乗っているミラルカに気が付いたようだ。
「その獣は?」
「ああ、彼女は西の森の守護聖獣ミラルカ。北の森を浄化してくれたんだよ」
「浄化…。あの規模の瘴気溜まりを一瞬で…」
「妾だけの力では無い。西の森の魔女の力があったればこそじゃ。それに北の森の守護聖獣も叩き起こした故、もう森にあの大きさの瘴気溜まりが出来る事は無いじゃろ」
「喋った…」
ジェラルドは驚いた顔をしたが直ぐ引き締め、私達に深く礼をした。
「聖獣様、魔女殿。感謝します。後程、辺境伯も感謝を述べたいと申しておりましたが」
「そういうのはいいです。あのユーリは大丈夫ですか?」
「ユーリはもう大丈夫ですよ。今は団員の取り纏めや後片付けに奔走してくれています」
「そっか。ならもう森に帰ろうか」
「そうじゃな。妾も疲れたわ」
ミラルカにそう言うとジェラルドが慌てて止めてくる。
「魔女殿、お待ちを!ユーリに一言告げてからお帰り下さい!」
「ごめんねぇ。疲れたから帰るわ。ユーリによろしく伝えておいて。じゃあね」
静止するジェラルドを無視して、ミラルカは上空に舞い上がり西の森に向かって走り出す。
「魔女殿…。後で私がユーリから叱られるのですが…」
ジェラルドの呟きは私には届かなかった。
「え!ロッテが帰ってしまった?なぜ引き止めてくれなかったんですか団長!俺ロッテと殆ど話せなかったんですよ?」
「団長はロッテと何話してたんですか?」
「ロッテに触ってないですよね?」
ユーリの言葉にジェラルドはタジタジだった。
「止める間もなく帰ってしまったんです!」
「瘴気溜まりを消したのが魔女殿か確認しただけです!」
「触ってません!」
私達が帰った後、ジェラルドがユーリに詰め寄られて、団長可哀想という雰囲気が騎士団中に流れていたとか。ユーリが独占欲の塊だと噂になっているとか。
それは私の預かり知らぬこと。
家に戻ったミラルカと私はそのまま眠りにつき、翌日の昼まで眠り込んでしまった。
ユーリが北の辺境伯領から帰って来たのは三日後だった。
「ただいま」
「お帰りなさい。お疲れ様でした」
ユーリは帰って来るなり私に抱きついた。
「ロッテ酷いよ。俺を置いて帰るなんて」
「だって、魔力の使いすぎで眠かったんだもの」
更に力を入れて抱きつかれる。
「ねえ、離れて」
「嫌だ、ロッテが足りない」
腕を突っ張って無理矢理ユーリを引き剥がす。
「ユーリ、私聞きたい事があるんだけど…これ何かなあ?」
左腕の腕輪を見せてにっこり笑う。反対にユーリは渋い顔になった。
それは数日前の話。
いつもの様にエレアの所に薬を届けに行った時の事。目敏いエレアに左手首の腕輪に気付かれた。
「ロッテ!水くさいじゃない。結婚したなら私に教えてよ!相手はあの騎士様?」
「へ?結婚?誰が?」
エレアが肘で突いてくる。
「もう惚けちゃって。ロッテがあの騎士様と結婚したんでしょ?おめでとう!」
私は首を傾げる。
「してないよ、結婚なんて」
エレアが私の左腕を持ち上げて腕輪を指差す。
「じゃあこれ何?」
「ユーリから貰っただけだよ?」
私はエレアに花祭りの時の話を聞かせた。ぶわっはっはっ!とエレアが吹き出した。
「じゃあロッテは知らないで腕輪嵌めちゃったんだ」
「うん。この腕輪って何なの?」
ひーひー笑うエレアは、息も絶え絶えに教えてくれた。
「それ…結婚腕輪って言うの!」
「!」
「結婚した二人がお揃いで着けるものよ。最近、王都で流行っているらしいわ。まだ、この村じゃ知らない人の方が多いけどね」
…またユーリに謀られた…。
それから暫く、エレアに揶揄われ続ける羽目になった。
「って事があったんだけど?ユーリこれはどう言う事かな?」
「ごめん」
「何事も、ちゃんと私の意思を確認してって言ったよね?」
「ごめん。あの時には遠征がほぼ決まってたし。俺が参加するのも確定事項で危険な戦いになると思ってた。だから、無事に帰って来る為に少しでも心の支えが欲しくて」
「でもねえ…」
今まで傍観していたミラルカが会話に割り込んで来た。
「もう許してやるがよかろう。切ない男心ではないか。そこまで思われてロッテは幸せ者じゃのう」
「ミラルカがそう言うなら…。仕方ないわね。今回はミラルカに免じて許してあげる」
「ありがとうロッテ!」
「だから!抱きつかないでって!」
ユーリに抱きつかれて、じたばたしていたらミラルカから生暖かい視線を投げかけられる。
「仲が良いのう。妾は森の見回りにでも行ってくるかの」
「ミラルカ!置いて行かないで!」
「後は二人でゆっくりするが良いぞ」
そう言ってミラルカは出ていった。
二人きりになると気まずくて黙り込んでしまう。
「お、お茶にしましょう。喉が渇いたわ」
「そうだな…」
ユーリから離れて、溶けてしまった腕輪を戸棚に仕舞った。それからキッチンにお茶を入れに行く。
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