25. 魔女と聖獣と浄化
二十五話目です。よろしくお願いします。
そんな二人の様子にジェラルドが咳払いをして、申し訳なさそうに話し掛けてくる。
「コホン。魔女殿、ユーリとどの様なご関係なのか存じ上げませんが、ユーリを助けて頂きありがとうございます」
ジェラルドが居る事に気が付いた私は、慌ててユーリから離れて背を向けた。ユーリは今服を着ていない。ジェラルドがさり気なくシーツをユーリに掛けてくれた。…見てない私は何も見てない…。
「…ユーリは友達だから助けるのは当たり前よ」
「友人…そうですか。西の森の魔女殿、あなた様が本物の西の森の魔女殿なのですか?」
「…そう、です」
「では、リズ殿の代役と仰っていた、あの老魔女はどなたなのですか?」
「あれも私です」
ポケットから指輪を取り出して見せる。
「これは師匠のリズ様が作った魔道具で老婆になれます。若い魔女は侮られるから、魔女として仕事をする時は使えと渡されました」
「そうでしたか。では花祭りにご一緒されていたのも貴女だったと?」
「…そうです」
「それでは彼を助けて頂くのも二度目と言う事ですね」
ジェラルドが意味ありげに、にっこり微笑む。
「そう、ね」
呪いを解いた時に傲慢な魔女を演じていたのも私。花祭りに一緒に参加していたのも私だとバレて、すっごく気恥ずかしい。
「ロッテ、団長ばかり相手してないで俺に構ってよ」
ユーリがベッドから下りて私の肩に伸し掛かってくる。
「重い…」
「ロッテ、どうしてここへ来たんだ?」
「だって腕輪が…。ユーリに何かあったんじゃないかと思って…」
袖を捲って、溶けかけた腕輪を見せる。
「そっか…来てくれてありがとう。またロッテに助けられちゃったな」
「ううん、いいの。助けられて良かったわ。だけど、ユーリ重いからどいて」
「嫌だ」
腕輪を見たジェラルドが目を見開いている。迷って、ジェラルドは口を開く。
「ユーリ、この件は陛下はご存じで?」
「言ってない…」
へいか?陛下?聞きたくない単語が出てきたわ。
「あの、へいかって…」
私が『へいか』とやらの事を聞こうとしたら、騎士の一人がテントの中に駆け込んで叫ぶ。
「団長!大変です!かつて無いほど大量の魔獣が、こちらへ向かっていると斥候からの報告がありました!」
「なんだと!団員で戦える者を集合させろ!誰か、辺境伯へ伝令を!」
ジェラルドが騎士達に命令を出し、ジェラルド自身もテントの外に出ていく。
外へ出ていくジェラルドを見ていたら、ミラルカの声が頭に響いた。
『ロッテ!妾の所に戻ってたも』
「ミラルカ?分かったわ」
肩に乗っていたユーリを剥がし、彼をベッドに座らせる。
「ちょっとミラルカに呼ばれたから行ってくる」
「ロッテ、ミラルカって誰?」
「その話は後で。ユーリは大人しく寝ててね。それから、これ回復薬。怪我してる人に使ってあげて」
ユーリに回復薬がぎっしり詰まった鞄を渡し、テントの外に出る。
テントの外では騎士達が右往左往の大混乱だった。それを縫うようにしてミラルカの側に寄る。
「ミラルカ!」
「おおロッテ。なにやら魔獣が大量に湧き出ている気配がするのでな。ちと妾が出張ってやろうかと思っての。この森の瘴気溜まりを浄化するには妾の魔力だけでは足りぬ。そこでそなたの魔力を借りたいのじゃ」
「分かった。私は何をすればいい?」
「妾の背に乗って、妾に触れていてくれれば良い」
「了解。乗るね」
ミラルカに乗る。ミラルカは森より高く上がり瘴気溜まりの中心に飛ぶ。
瘴気溜まりの上から下を見る。
「酷いものじゃ。ロッテ、瘴気を祓う魔力を借りるぞ」
「うん!」
『散れ!』
ミラルカの言葉が辺りに響き渡る。私達の回りから波動が広がり、瘴気が蒸発するかの如く消えて行く。それに伴い魔獣も消し飛ぶ。後に残ったのはキラキラと光る大量の魔石だった。
暫くすると森は何事も無かったかのように、元の静けさを取り戻していた。
「う〜魔力が大量に吸われた…。眠い…」
「これロッテ、眠って妾から落ちるなよ」
「…うん、大丈夫…」
「やれやれ。でも助かったぞロッテ。やはり妾の力だけでは、あの瘴気全てを浄化出来んかったわ」
「ううん、人間を助けてくれてありがとう、ミラルカ」
「さて、妾はもう一仕事じゃ」
そう言うとミラルカは思いっきり息を吸い込んだ。
『北の森の守護者カーバンクル、イルヴァン!目を覚ませ!この愚か者が!!!』
ミラルカの怒声が響き渡る。私の眠気も飛んで行った。
暫くすると、どこからか眠そうな声が聞こえて来た。
「…酷いなあ…ミラルカぁ。いい気持で寝てたのにぃ…」
欠伸しながら出てきたのは、小さなウサギの様な生き物だった。額に紅い石がある。
「イルヴァンお主、随分と長い間森の守護を忘れて眠りこけておったようじゃな?森の七割方が瘴気に呑まれておったぞ」
「え?そんなに?ボク少ししか寝てないよ?」
「ほう…?ならば二度と目覚めぬとも良いように、その額の石を割ってしまおうか?」
「ミラルカ…酷いよぉ」
「何を言う。今回、西の森の魔女の力を借りねば森の浄化は出来なかったのだぞ」
「そうなの?ミラルカに乗ってる娘が西の森の魔女?」
「そうだ」
「ありがとなのぉ。西の森の魔女ぉ」
イルヴァンの話し方は気が抜ける。
「どういたしまして」
「イルヴァン、これからはちゃんと森を守れ」
「分かったよぉ。ボクもう帰るねぇ」
イルヴァンは森の中に消えて行った。
『また妾が様子を見に来るからの!』
『分かったのぉ〜』
ミラルカが呆れたように息を吐く。
「やれやれ、あいつと話すと疲れるわ。では先程の騎士団とやらの所に戻るか」
「そうだね」
森の入り口に戻ると騎士団の団員が歓喜に沸いていた。
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