23. 魔女と薬作りと新同居人?
二十三話目です。よろしくお願いします。
朝が来て昼になって、夕刻になってもユーリが帰って来る事はない。
ユーリが居ない、それだけで部屋が広く見える。
遠征に出て何日経っただろう?
怪我をしていないだろうか?疲れて倒れるほど頑張っていないだろうか?心配し始めたらキリがない。
本当は、遠征に付いて行きたかった。でも、魔女は国に関わってはいけない。
「…追加で回復薬作ろう。騎士団から依頼が来ても良い様に」
何かしていないと不安で落ち着かないのだ。薬作りは没頭出来るから良い。
「こんな事…してたら…また…ユーリに叱られちゃうな…」
薬作りに疲れて床に倒れるように眠り込む。そのまま、朝まで目が覚めることはなかった。
朝、目が覚めたら体のあちこちが痛い。
「やっぱり床なんかで寝たら体中痛いわ」
立ち上がって、昨日作った大量の回復薬を見ると一本だけ色の違う物があった。
「あれ?何だろこれ?回復薬…?だよね」
普通の回復薬は薄い緑色をしている。でもこの一本は黄色…と言うか、金色?に輝いている。
「たしか師匠のレシピに何か記述があった気が…探しに行こう」
師匠のレシピは師匠の部屋の本棚にある。部屋に入り本棚のレシピを探す。
「あった、これだ。えっと…」
それはレシピの端に書かれていた。
『回復薬を作成した中に稀に金色に輝く物が出来ることがある。これは鑑定の結果、完全回復薬だそうだ。死亡以外の全てを治す事が出来る。完全回復薬の作成方法は確立されていない』
「完全回復薬かあ…ユーリに渡したかったな…」
レシピを戻し部屋を出る。
完全回復薬は棚に仕舞っておく事にした。
毎日がただゆるゆると流れて行く。
薬を作りエレアの所に納品して、朝が来て夜が来て、元の生活に戻っただけなのに足りない。
「ユーリ…元気かな…」
何もしない時間は不安ばかり押し寄せてくるから、つい薬作りに勤しんでしまう。今日も作業場の床で寝てしまった。小鳥の声がする、朝になったようだ。
「ふぁぁ、もう朝?」
欠伸しながら体を起こす。いつもの如く床で眠ってしまったから体が痛い。
『ロッテ』
どこからか呼ぶ声がする。
「誰?」
『妾じゃ。ミラルカじゃ』
「ミラルカ?」
慌てて戸棚を開ける。結界から出た小さなミラルカが座っていた。
「おはようございます、ミラルカ」
「おはよう、ロッテ」
戸棚からミラルカが下りてくる。床に降り立ったミラルカは少し大きくなる。大きさは中型の犬ぐらいだろうか?
私は視線を合わせる為にミラルカの前に座り込む。
「ミラルカ、もう体は大丈夫なの?」
「そうじゃ。お主の魔力のお陰で完全復活じゃ」
「ミラルカはこれからどうするの?」
「…その事じゃがのう。ロッテ、妾もここにおってはいけんか?」
「一緒に住むって事?」
「そうじゃ。お主に迷惑は掛けんよ。寝床を貸してくれるだけで良い。駄目かの?」
ちょっとしょんぼりしたミラルカが可愛い。
「いいよ。ミラルカなら大歓迎」
…ユーリが居なくなって寂しかったんだろうな私。思わず即答してしまった。
「そうか!妾も嬉しいぞ!」
「今から朝ご飯なんだけど、ミラルカも食べる?」
朝食を用意しようと立ち上がるとミラルカに呼び止められる。
「ロッテよ、妾に飯は不要じゃ。森で狩って済ますよっての」
「遠慮しなくていいのに」
「気持ちは嬉しいがの。人間の食べ物は口に合わんのよ」
「そっか、残念だね」
「じゃから森に行ってくる。暫く留守にしておった故、瘴気溜まりが出来てるやもしれんしの」
「瘴気溜まりが出来てたらどうするの?」
「妾が浄化するのじゃよ。故にこの森には殆ど魔獣は出んじゃろ?」
少し考えて答える。
「そう言えばそうだね。魔獣が出ないのはミラルカのお陰だったんだね」
「妾はこの森の守護者じゃぞ。自分の住む森を守らんでなんとする」
少し自慢げなミラルカだった。
「では行ってくる」
「気を付けてね」
「うむ」
ミラルカは扉を器用に開けて、スルッと出て行った。ミラルカが復活してくれて良かった。今日からまた新しい生活になる。
「自分の朝ご飯を用意しよ」
食事を取ってから日課を熟す。少しだけ気持ちが前を向いた気がする。
昼を過ぎた頃、ミラルカが帰って来た。
「ロッテ、今戻ったぞ」
「お帰りなさいミラルカ。森はどうだった?」
「おお。小さな瘴気溜まりがいくつか出来ておった故、浄化してきたわ」
「そう、お疲れ様でした。そうだわ、ミラルカはどこに寝るの?」
「どこでも良い。そこのソファでもよいぞ」
「ミラルカが良いなら、どうぞ使って」
「うむ」
ミラルカがソファに座るのを見ながら作業を再開する。収穫して乾燥させた薬草を刻んでいる。
「ロッテは何をしているのじゃ?」
「回復薬の材料の薬草を刻んでいるんだよ」
ミラルカは作業場の隅に積み上げられた回復薬が入った箱を見て呆れたように言う。
「あれだけ回復薬があって、まだ作るのか?」
「だ、だって回復薬はいついるか分からないもの。北の辺境伯の領地で魔獣が大量発生しているんだから」
「北方で魔獣が…?」
私の言葉を聞いて、ミラルカは考え込んでしまった。黙ってしまったミラルカに声を掛けようとした時だった。
「ミラルカ、どうし…熱っ!」
「ロッテどうした!」
「腕輪が急に熱くなって…」
袖を捲って腕輪を見ると、腕輪は高温に晒されたように溶けていた。
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