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18. 魔女と王都と花祭り 3

十八話目です。よろしくお願いします。

ユーリの姿に怯んだ男二人だったが、自分達に都合の良い話を続ける。


「な、何も?この娘が寂しそうだったから慰めてやろうとしただけだ。親切だよ!」


「なら、もうその親切とやらは不要だ。立ち去れ!」


「なんだと!偉そうに!」


男の一人が、ユーリに殴り掛かりそうな雰囲気になる。風魔法で飛ばしちゃおうか?と思ったその時、騎士団の制服を着た男がユーリに声を掛けて来た。


「副団長、何かお困りですか?」

「ああ、ハロルド。今日は祭りなのに仕事か?」


「去年は祭りに参加させて貰いましたから、今年は仕事です」

「そうかご苦労だな」


ユーリ達の会話を聞いていた男達は『騎士団の副団長?』『やべえ!』とか二人でこそこそ話しをして、そろりそろりと下がって向きを変え一目散に逃げ出した。


「なんですか彼奴等は?」

「何でもない。ただの通りすがりだ」

「そうですか。今日は副団長は祭りに参加されているのですね」

「ああ」


ユーリの背から、こっそり顔を出す私を見て、何かを察したハロルドは街の見回りがあるからと、ユーリに敬礼をして去っていった。


ユーリは私の方に向き直る。


「ごめんロッテ。怖い思いをさせた」

「大丈夫。いざとなったらこれで吹っ飛ばしてやろうと思ってたから」


呪文を唱える振りをするとユーリが笑う。


「ロッテは強いんだったな」

「そうよ」


ふふん、と私は胸を張る。


「ちょっと冷めちゃったけど、これ食べる?冷めたのが嫌なら買いなおして来るよ」

「大丈夫、勿体ないわ。冷めても美味しいでしょ?」

「ああ、そうだな」


ユーリが肉の串焼きを一つ渡してくれる。ベンチに座り串焼きに齧り付く。


「美味しいよ」

「良かった、気に入って貰えて。俺、街の見回りに出た時の昼食によく食べるんだ」


「ユーリって美味しい物がある所をよく知ってるわよね」

「まあ、どうせ食べるなら美味しい方が良いだろう?」


「今度はスイーツの美味しいお店教えてよ」

「任せておけ。俺一番のお薦め店へ連れて行ってやるよ」

「うん、期待してるね」


食べ終わってベンチから立ち上がったら鐘が鳴った。


「あ、夕刻の五の刻だな。街の広場でダンス大会があるんだ。そこに行こう」

「え?私、踊れないんだけど」

「大丈夫、大丈夫。俺がリードするから」

「でも…」


「いいから行くよ」


ユーリは私の手を取って強引に歩き出した。 



街の広場には沢山の人が集まって、男女ペアでダンスをしていた。そこに二人で混ざる。


ユーリがリードしてくれるから、踊ったことなんてないけれど何とか形になった。


「上手いじゃないかロッテ」

「ユーリのリードが良いからだよ。初めて踊ったけど楽しいね」


ふわりとスカートが揺れる。時間を忘れて踊った。もうそろそろ祭りも終わりだろうか。あれだけ沢山いた人が少し、まばらになった気がする。


「あ〜踊ったね。ちょっと疲れたわ。今日はよく眠れそう」


足が棒のよう。回復薬持って来れば良かったと後悔した。


「疲れた所悪いんだけど、最後に一箇所付き合って」

「いいよ」


疲れた私を気遣ってか、ユーリはゆっくり歩いてくれた。『背負おうか?』って言われたけど丁重にお断りした。


ちょっとだけ長く歩いた先にあったのは町外れにある大きな樹。


「大きな樹…」


樹皮に触れてみる。温かい。


「この樹は魔力があるの?何だか癒されるんだけど。だから連れて来てくれたの?」

「いや、そうじゃないんだけど、そう言う事にしておくか」


ユーリが苦笑いをしている。


急に表情を引き締めてユーリが言う。


「ロッテ、左腕を出して」

「こう?」


左腕を出すと、先程買った腕輪を嵌められる。


「あ、やっぱりこれ綺麗ね」


腕輪を眺めていたら、ユーリが腕を差し出して来る。


「何?」

「俺のはロッテが嵌めて」


ユーリも自分の分を買ってたんだ。知らなかった。腕輪を渡されたからユーリの腕に嵌める。


「これで良いの?これ何か意味ある?」

「ありがとう。深い意味は無いよ。俺の自己満足」


「ふーん…」


「さあ、もう帰ろうか」

「うん、そうね」

「今日は俺の家に泊まっていく?」


両手を無い無い!と振る。


「いやいや、あのお屋敷じゃ落ち着いて眠れないよ。帰る帰る!」

「そっか、残念」


来た道をゆっくり帰る。


屋敷に着いたら、サラサさんが迎えてくれた。


「お嬢様、お疲れでしょう?お風呂に入られては如何でしょうか?お召し物も変えなくては」


私はユーリの後に隠れながらサラサさんに言った。


「サラサさん、今回は一人で入りますからね!でないともう帰っちゃいますから」


サラサさんは残念そうな顔をした。


「そうですか?このお屋敷には女性がおりませんから、皆、お嬢様のお世話を楽しみにしてましたのに…」


ユーリはくすくす笑っている。何が可笑しいんだよ?私は真剣なんだけど。


「サラサさんごめんね?お風呂は二階の部屋だよね。じゃあ行ってくる」


ユーリの背後から抜け出て二階へ駆け上がり、部屋に飛び込んで鍵を掛けた。


今日の祭りは恋人達の祭りだった。自分とユーリの中途半端な関係を考えたら悲しくなって。曖昧な関係を望んだのは自分なのに。


「ふう…。お風呂入ったら帰ろう。なんだかここに居るのが辛いわ…」

 

お風呂から出て元の服とローブを纏う。部屋から出るとサラサさんが待っていた。


「お嬢様、ユーリ様が応接室でお待ちです。お茶をご一緒にとの事です」


「ごめんなさい、悪いけどもう帰るわ。疲れたし、ユーリに挨拶したら帰る」


サラサさんに案内され応接室に入る。


「ロッテ待ってたよ。お茶にしよう」


席に着かせようとするユーリを手で止める。


「悪いけど疲れたから帰るわ。今日はありがとう」

「え?少しだけでも…」

「帰るわ」


ユーリは私の表情を見て諦めたようだ。


「じゃあ王城まで送るよ」


「大丈夫、転移魔法で帰れるから。じゃあねユーリ。ばいばい」


呪文を唱えると一瞬で私の姿はユーリの前から消える。


「ロッテ待って!」


ロッテが消えた後、ユーリは切なそうに自分の手首の腕輪を見つめていた。




最後まで読んで頂きありがとうございます。

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