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16. 魔女と王都と花祭り 1

十六話目です。よろしくお願いします。

今日も早朝からノックの音が響く。扉を開けると満面の笑みを浮かべたユーリが居た。


「おはようロッテ。今日はいい天気だね」


思わずジト目になってしまった。


「…おはよう。ちょっと早すぎない?」

「いやいや、準備もあるから早く行かなきゃ」


はあ…とため息をつく。


「ちょっと待ってて。準備するから」

「何も要らないよ」

「それでもだよ。ちょっと待って」


ちょっと言葉に怒気を含ませるとユーリは大人しくなった。


「わ、分かった」


ローブを深く被って魔道具の指輪を嵌める。ユーリは魔法無効の指輪を付けているから、いつものロッテに見えている筈だ。ユーリ以外の人間には老婆の魔女に見える。鞄を掛けてユーリの元へ向かう。


「お待たせ」


「ああ…あれ?ローブなんて着てるんだ?」

「だって、王宮の中を通るんでしょ?ローブは魔女の正装だもの」

「…そんなものなのかな?まあ、街に出る時は祭りの衣装に着替えるからローブは脱いでよ」


「分かったわ」



家を出て、ユーリの案内で転移陣へ向かう。思っていたよりも森の入り口近くにあって驚いた。


「こんな所にあったんだ。ん、これは認識阻害の魔法が掛かってるわね。気付かないはずだわ」


「そんな事より、さあ行こう」

「転移陣は初めてだからドキドキしちゃう」


ユーリに手を取られて転移陣に入る。




一瞬で景色が変わる。


「ほらもう着いたよ」

「ここはもう王宮の中なのね?」

「ああ」


転移陣のあった部屋は王宮と言うより研究室といった趣のある部屋だった。


「この部屋は誰か使っていた?」

「うん。昔、王宮お抱えの魔術師がね。研究室にしてたんだ」


「へえ…」


「帰りにゆっくり見たらいいよ。早く王都にある俺の屋敷に行こう。家の者が痺れを切らして待ってる」


部屋にはかつての魔術師の研究道具が残っていて興味があったから、色々見ていたかったけど、ユーリに急かされて部屋を出る。


綺羅びやかな王宮の廊下を歩く。すれ違う王宮の使用人たちが、端に寄って頭を下げる。


ユーリは間違いなく高位の人間だ。



王宮を出て、園庭の先にある馬車乗り場へ続く道すがら騎士団団長のジェラルドに会った。ジェラルドが手を上げて声を掛けてくる。


「ユーリ!…と、魔女殿」


ユーリの後にいた私に驚いたみたいだ。そうだろう、若い騎士とローブを着た老婆の魔女が一緒にいるのだから。


「魔女殿、先日はユーリがお世話になりました。今日は何故王宮に?ユーリとお知り合いで?」


ジェラルドが質問を投げてくる。


「今日はの、この若いのが王都の祭りに誘ってくれたんじゃよ。若いもんと一緒だと気持ちが若返るわ」


カカカと笑う。


「それはそれは。王都の祭りは華やかですから是非楽しんで下さい」

「ありがとうよ。楽しませて貰うとするわい」


「では、私は訓練がありますので失礼します。ユーリもまたな」


ジェラルドは一礼をして走り去っていった。



ユーリが冷めた目で睨みつけてくる。


「ロッテ、まさかと思うけど今、老婆の姿なのか?」

「魔女の正装だもん」


「まさか祭りも老婆の姿で行くつもり?」

「ユーリには姿変えの魔法効いてないんだから良いじゃない」


無言になってしまったユーリ。ちょっとイジメすぎたかな?


「…ロッテ、何か怒ってる?」

「ちょっとね。祭りに来るのは別に良かったよ。私も興味あったし」


ビシッと指を突き付けて言う。


「でも、断りづらい状況にして連れて来るのは違うと思う。そこに怒ってる」


「ごめん。悪かった。…絶対にロッテと花祭りに来たかったから我儘を押しつけた。ごめん」


あまりにしゅんとなってしまったユーリに罪悪感を感じる。


「分かったわよ。でも次からは、どんな事でもちゃんと私の意思を確認して」

「うん。ごめん」


「さ、行きましょ。時間が無くなっちゃうわ。でも、馬車に乗るまでは老婆の姿は解かないわよ」

「…了解」



馬車に乗りユーリの屋敷へ向かう。王都は祭りのせいもあって華やかだ。暫く走って馬車が止まると目の前には大きなお屋敷がでん!と鎮座していた。


「大きい…。ユーリ、やっぱり帰って良い?」

「ここまで来て何言ってるんだよ!ほら早く中に入って入って」


扉を開けて中に入ると、年配の男性と女性が居た。


「ユーリ様、お帰りなさいませ」


年配の男性が迎えてくれる。


「ああ待たせた。こちらがロッテ嬢だ。ロッテ、執事のダルマンと侍女頭のサラサだ」


ユーリが二人を紹介してくれる。


「ロッテです。今日はよろしくお願いします」


ぺこっと頭を下げる。


「あらあらまあまあ、お可愛らしい方!ロッテ様、我々は使用人でございますよ。頭を下げて頂く必要はございません」


「でも私は平民です。このお屋敷の使用人でもサラサさんは貴族の方ではありませんか?」

「そうですが、ロッテ様は坊っちゃんのお客様ですから」


ユーリが顔を赤くして言う。


「サラサ、坊っちゃんは止めてくれ」

「はいはい、ユーリ様。ロッテ様はお着替えに向かわせて頂きますよ」


「ああ、よろしく頼む」


「さあ、ロッテ様こちらですよ」


サラサさんに連れられて二階の部屋に行く。サラサさんがくすくす笑っている。


「あんな柔らかい表情のユーリ様のお顔を初めて見ましたよ。ロッテ様といるのが余程嬉しいのでしょうね」

「そうなんですか?私にはいつも通りのユーリだけど…」

「そうなんですね…。さあロッテ様、こちらのお部屋にお入り下さい」


サラサさんに扉を開けてもらい部屋に入った。




最後まで読んで頂きありがとうございます。

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