15. 魔女と騎士とモヤモヤ
十五話目です。よろしくお願いします。
森の入り口まで戻って来た。
「ユーリはこの後どうするの?」
「今日はもう帰るよ。団長に報告もしなきゃだし」
「じゃあ、またね」
「ロッテも気を付けて帰れよ」
「大丈夫だよ」
ユーリは手を振りながら、転移陣がある方へ歩いて行く。見送ってから私も森の中へ入って行った。
家に戻り、裏の薬草畑に肥料を撒いて成長促進の魔法を掛ける。普通に育つのを待っていたら、騎士団の注文には間に合わない。
作業が終って家に入りお茶を入れて漸く一息つけた。
今日の私とユーリを見て、エレアは何かを期待していた様だが、後一週間もしたらユーリは毎日来る事はなくなる。そうしたら、いつもの生活に戻るだけだ。
ユーリが居ないと音がしない。静かすぎて、なんだか家の中が広く感じる。一人が寂しいなんて師匠が旅立った時にも感じなかったのに。
でも今は寂しいって気持ちが私の心の中に住み始めた…。
「ユーリのせいだ…」
夕食を取ってから薬を作って作って作って、エレアの店の注文分と騎士団からの注文分を一晩掛けて作った。
朝方、疲れて床に寝転ぶ。そのままぐっすり眠り込んでしまった。起きたら昼の一の刻を少し過ぎた所だった。
顔を洗う為の水を汲みに外に出る。扉に小さなメモが貼ってあった。
『今日は留守だった?ノックしたけど返事が無いので帰ります。このメモを見たら連絡下さい。ユーリ』
「ユーリ来てくれてたんだ…悪い事しちゃったな…連絡…した方がいいか」
そう考えて、ふと気付く。
「私からユーリに連絡する方法が無いわ」
転移陣は多分私は使えない。連絡手段が何も無いことに今更ながらに気が付く。
「連絡する方法が無いから連絡しないのは仕方ないわよね。うん」
自分に言い訳して水を汲んで家に戻る。メモには気付かなかったふりをして。
今日は、成長した薬草を刈り取り乾燥させる為に干したら、もうする事が無い。次の納品予定の薬は作り終えてしまった。だけど手持ち無沙汰だと余計な事を考えて苛々する。
「あ〜〜〜!私らしくない!ちょっと気分転換しよう。そうしよう」
鞄に瓶に入ったお茶とお菓子を詰めて家を出る。久しぶりに母さまの墓参りに行こう。
途中、珍しい薬草を見つけて摘んで鞄に入れる。散策しながら歩いていると森の奥の母さまのお墓まで来た。お墓の前に座り込む。
「母さま、ごめんね。久しぶりになっちゃったね」
墓石の上の埃や落ち葉を払う。
「母さま…私どうしたら良い?ユーリは良い人だと思う。多分、嫌いじゃない。でも好きかと言われれば…分からない」
ユーリから好きと言われた事は無いが、彼からの好意は伝わってくる。でも後一週間もしない内に来なくなる。
「ユーリが来なくなるのが寂しいって思ってる。この気持ちは何だと思う?母さま」
今、思ってる事を母さまになら素直に話せる。心に溜まっていたモヤモヤを吐き出した。
「母さまに話したら少し気持ちが楽になったよ。ありがとう、母さま。また来るね」
母さまのお墓にお菓子をお供えして帰る事にした。
家に着くとユーリが来ていた。私の姿を見付けて駆け寄ってくる。
「ロッテ、やっぱり出掛けていたんだね」
「ユーリ、来てくれてたんだよね。ごめんね。森の奥の母さまのお墓参りに行ってたんだ。それから珍しい薬草や野草探しもしてたんだ」
鞄から摘んできた薬草を出して見せる。
「良かったよ何も無くて。ロッテは一人暮らしだろ?何かあったら大変だと思ってさ。心配だった」
「ごめんね。でも大丈夫だよ。今まで一人でやって来れたんだから」
扉の鍵を開けて、ユーリと家に入る。
「ちょっと薬草の下処理しちゃうね。この薬草は鮮度が命なんだ」
「うん、俺の事は気にしないで」
ユーリは慣れた様子で、二人分のお茶を入れていた。薬草の下処理を終えて私も席に着く。
「お母さんのお墓って、お母さん亡くなってるの?」
「うん。私が十二歳の時に病気でね」
「そっか、悪い事聞いちゃったね」
「ううん、大丈夫」
「じゃあ、お父さんは?」
「…それは、秘密です」
お茶を一口飲んでコップをたん、と置く。
「そう言うユーリこそ家族は?」
「俺?俺は父と母と兄が四人と妹が二人と弟が一人…かな?」
「大家族だね。びっくり」
「まあ家族は仲いいよ、喧嘩もするけど」
「家族かあ、羨ましいなぁ…」
「だったら俺と家族になれば良いじゃない」
「じゃあ、私は妹になるわね」
ユーリがジトッとした目で見てくる。
「分かってて言ってる?」
「何の事かしら?」
惚けたら呆れたように、ユーリはため息をつく。
「…もういいや。あ!忘れる所だった。ロッテ、明日の予定空いてる?王都で花祭りがあるんだ。一緒に行かない?」
「明日は空いてるけど、どうやって王都まで行くの?馬車だと二日掛かるよ?」
私は王都には行った事が無いから、転移魔法は使えない。
「大丈夫、ロッテの転移陣の使用許可を取ってきたから」
「え!?本当に?」
「だから、行こうよ花祭り」
「う〜ん、どうしよう」
王都に興味はある。でも人が多い。悩んでいるとユーリがぽそっと呟く。
「もうロッテの祭りの衣装を用意してるんだよな。来てくれないと無駄になるなあ…」
一瞬、耳を疑った。
「はあああ?祭りの衣装を用意したってなに?ずるいわ、断れないじゃない!」
「あれ?断る気だった?」
「う〜〜〜っ…分かった。行くわ花祭り」
ユーリから満面の笑みが返ってくる。
「ありがとう!じゃあ明日迎えに来るから。ロッテは何も用意しなくていいよ。身一つで来てくれたら、こっちで全部用意してるから安心して」
「…分かった」
「じゃあ、今日は帰るよ。また明日」
ユーリはご機嫌で帰って行った。
「…なんだかモヤモヤする…」
ユーリにうまく乗せられた気がして悔しかった。
最後まで読んで頂きありがとうございます。




