表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/16

15. 魔女と騎士とモヤモヤ

十五話目です。よろしくお願いします。

森の入り口まで戻って来た。


「ユーリはこの後どうするの?」

「今日はもう帰るよ。団長に報告もしなきゃだし」


「じゃあ、またね」

「ロッテも気を付けて帰れよ」

「大丈夫だよ」


ユーリは手を振りながら、転移陣がある方へ歩いて行く。見送ってから私も森の中へ入って行った。



家に戻り、裏の薬草畑に肥料を撒いて成長促進の魔法を掛ける。普通に育つのを待っていたら、騎士団の注文には間に合わない。


作業が終って家に入りお茶を入れて漸く一息つけた。


今日の私とユーリを見て、エレアは何かを期待していた様だが、後一週間もしたらユーリは毎日来る事はなくなる。そうしたら、いつもの生活に戻るだけだ。


ユーリが居ないと音がしない。静かすぎて、なんだか家の中が広く感じる。一人が寂しいなんて師匠が旅立った時にも感じなかったのに。


でも今は寂しいって気持ちが私の心の中に住み始めた…。


「ユーリのせいだ…」




夕食を取ってから薬を作って作って作って、エレアの店の注文分と騎士団からの注文分を一晩掛けて作った。


朝方、疲れて床に寝転ぶ。そのままぐっすり眠り込んでしまった。起きたら昼の一の刻を少し過ぎた所だった。


顔を洗う為の水を汲みに外に出る。扉に小さなメモが貼ってあった。



『今日は留守だった?ノックしたけど返事が無いので帰ります。このメモを見たら連絡下さい。ユーリ』



「ユーリ来てくれてたんだ…悪い事しちゃったな…連絡…した方がいいか」


そう考えて、ふと気付く。


「私からユーリに連絡する方法が無いわ」


転移陣は多分私は使えない。連絡手段が何も無いことに今更ながらに気が付く。


「連絡する方法が無いから連絡しないのは仕方ないわよね。うん」


自分に言い訳して水を汲んで家に戻る。メモには気付かなかったふりをして。




今日は、成長した薬草を刈り取り乾燥させる為に干したら、もうする事が無い。次の納品予定の薬は作り終えてしまった。だけど手持ち無沙汰だと余計な事を考えて苛々する。


「あ〜〜〜!私らしくない!ちょっと気分転換しよう。そうしよう」


鞄に瓶に入ったお茶とお菓子を詰めて家を出る。久しぶりに母さまの墓参りに行こう。


途中、珍しい薬草を見つけて摘んで鞄に入れる。散策しながら歩いていると森の奥の母さまのお墓まで来た。お墓の前に座り込む。


「母さま、ごめんね。久しぶりになっちゃったね」


墓石の上の埃や落ち葉を払う。


「母さま…私どうしたら良い?ユーリは良い人だと思う。多分、嫌いじゃない。でも好きかと言われれば…分からない」


ユーリから好きと言われた事は無いが、彼からの好意は伝わってくる。でも後一週間もしない内に来なくなる。


「ユーリが来なくなるのが寂しいって思ってる。この気持ちは何だと思う?母さま」


今、思ってる事を母さまになら素直に話せる。心に溜まっていたモヤモヤを吐き出した。


「母さまに話したら少し気持ちが楽になったよ。ありがとう、母さま。また来るね」


母さまのお墓にお菓子をお供えして帰る事にした。




家に着くとユーリが来ていた。私の姿を見付けて駆け寄ってくる。


「ロッテ、やっぱり出掛けていたんだね」

「ユーリ、来てくれてたんだよね。ごめんね。森の奥の母さまのお墓参りに行ってたんだ。それから珍しい薬草や野草探しもしてたんだ」


鞄から摘んできた薬草を出して見せる。


「良かったよ何も無くて。ロッテは一人暮らしだろ?何かあったら大変だと思ってさ。心配だった」


「ごめんね。でも大丈夫だよ。今まで一人でやって来れたんだから」


扉の鍵を開けて、ユーリと家に入る。



「ちょっと薬草の下処理しちゃうね。この薬草は鮮度が命なんだ」


「うん、俺の事は気にしないで」


ユーリは慣れた様子で、二人分のお茶を入れていた。薬草の下処理を終えて私も席に着く。



「お母さんのお墓って、お母さん亡くなってるの?」

「うん。私が十二歳の時に病気でね」


「そっか、悪い事聞いちゃったね」

「ううん、大丈夫」


「じゃあ、お父さんは?」

「…それは、秘密です」


お茶を一口飲んでコップをたん、と置く。


「そう言うユーリこそ家族は?」

「俺?俺は父と母と兄が四人と妹が二人と弟が一人…かな?」


「大家族だね。びっくり」

「まあ家族は仲いいよ、喧嘩もするけど」


「家族かあ、羨ましいなぁ…」

「だったら俺と家族になれば良いじゃない」

「じゃあ、私は妹になるわね」


ユーリがジトッとした目で見てくる。


「分かってて言ってる?」

「何の事かしら?」 


惚けたら呆れたように、ユーリはため息をつく。


「…もういいや。あ!忘れる所だった。ロッテ、明日の予定空いてる?王都で花祭りがあるんだ。一緒に行かない?」


「明日は空いてるけど、どうやって王都まで行くの?馬車だと二日掛かるよ?」


私は王都には行った事が無いから、転移魔法は使えない。


「大丈夫、ロッテの転移陣の使用許可を取ってきたから」

「え!?本当に?」


「だから、行こうよ花祭り」

「う〜ん、どうしよう」


王都に興味はある。でも人が多い。悩んでいるとユーリがぽそっと呟く。


「もうロッテの祭りの衣装を用意してるんだよな。来てくれないと無駄になるなあ…」


一瞬、耳を疑った。


「はあああ?祭りの衣装を用意したってなに?ずるいわ、断れないじゃない!」

「あれ?断る気だった?」


「う〜〜〜っ…分かった。行くわ花祭り」


ユーリから満面の笑みが返ってくる。


「ありがとう!じゃあ明日迎えに来るから。ロッテは何も用意しなくていいよ。身一つで来てくれたら、こっちで全部用意してるから安心して」


「…分かった」

「じゃあ、今日は帰るよ。また明日」


ユーリはご機嫌で帰って行った。



「…なんだかモヤモヤする…」


ユーリにうまく乗せられた気がして悔しかった。




最後まで読んで頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ