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13. 魔女と騎士と日常 1

十三話目です。よろしくお願いします。

あのお茶会以降、ユーリは私の仕事を手伝ってくれるようになった。薬草畑の草むしりをしてくれたり、薬作りを手伝ってくれたり。


偶に森に入って狩りをしてくれて、仕留めた獲物の解体もしてくれる。私は解体が苦手だから助かる。新鮮なお肉が食べられるのは嬉しい。



朝に来て、私の仕事の手伝いをして昼過ぎに帰って行く。ユーリがお菓子を差し入れてくれる日はお茶をしてから帰る事もあるが。


最初は手伝いのお礼にお金を渡そうとしたが固辞された。代わりに昼食をご馳走している。ユーリの好きなのは大きな野菜が入ったシチューだ。私の数少ない得意料理で良かった。


今日も家の裏にある薬草畑の雑草抜きをしてくれている。畑を耕すのもやってくれるから本当に助かっている。



時計を見るとそろそろ昼中の十二の刻になるところだ。ユーリに声をかける。


「ユーリ、そろそろお昼にしない?」


「今日のお昼は何?」


ユーリは道具を片付け、手を洗って席に着く。


「今日は鶏肉のソテーとカボチャのスープだよ」

「ロッテの料理は個性的だから、いつも楽しみだよ」

「褒められてる気がしない…」


テーブルにカトラリーをセットして、鶏肉のソテーとスープ、それから籠に入ったパンを置く。


「さあ召し上がれ」

「ありがとう。いただきます」 


一口食べてユーリから言葉がこほれる。


「今日は食べられる味だよ。美味しいよ」

「……本当に褒められてる気がしないわ…」


私だって頑張って料理してるんだけど、何故か上達しない。今度エレアに料理を教えてもらおうか。


昼食の間は色々とお喋りをする。ユーリは二十三歳で十五歳から騎士団にいるとか、副団長をやっているとか。騎士団の面白い話を聞かせてくれる。


私が十六歳だと言うと驚かれた。解せん。私には話せる事が殆ど無い。小さい頃に師匠に弟子入して今は独り立ちして魔女やってます、くらい?


今日は用があるからと、昼食が終わると早々にユーリは帰って行った。




ここ半月、毎日のように私の所に来ているユーリ、騎士団の仕事は大丈夫なんだろうか?気になった事は聞いてみるに限る。


「ねえユーリ。貴方、毎日私の所に来ているけど、騎士団の仕事は大丈夫なの?」


「うん?大丈夫だよ。全然休暇取ってないから暫く休んでろって団長から言われてるよ。だから、後一週間は大丈夫。それよりロッテ、これ騎士団からの正式な依頼なんだけど」


ユーリが1枚の羊皮紙を差し出して来た。


「依頼?」


羊皮紙を受け取って読む。


『西の森の魔女殿に依頼する。回復薬を週五十本、頭痛薬、風邪薬、腹痛の薬をそれぞれ五本をお届け頂きたい。納品開始時期は副団長ユーリ・クラウゼと相談されたし。騎士団団長ジェラルド・ミューラー』



「こんなに沢山回復薬が要るの?」


「今、北の辺境伯領で魔獣が増えていると言う報告が上がって来ているんだ。今の所、辺境伯の軍だけで討伐出来ているんだけど、負傷した兵が増えているんだよ。その為に回復薬が必要なんだ」


「事情は分かったけど、薬の依頼は村にあるエレアの薬屋を通して欲しいんだけど」


「ロッテに直接じゃ駄目なのか?」


「エレアとの契約があるの。私の薬はエレアが取り仕切ってくれてる。貴族からの無理な注文や、転売目的の買い占めを止めてくれてるんだから」


「エレアって娘は何者なんだ?平民が貴族からの依頼を断れるのか?」

「エレアはギルド長の娘だよ。エレアのお父さんは昔は凄腕の冒険者で、今はギルド長をやってるの。だからかな、エレアに無理を言う人はいないわ」


「そう言う事なら分かった。エレアの薬屋に依頼するよ」


「お願いね。でも、私が注文を受けたとして、ここから王都まで馬車で二日掛かるんだよ?それはどうするの?」


ユーリが納得してくれたので、羊皮紙を畳んで返す。


「それは大丈夫だよ。ロッテの薬には保存魔法が掛けられてるだろ?それに森の入り口近くに王宮と、この森を繋ぐ転移陣があるからね。俺は毎日それを使ってここに来てるから」


「え!?」


転移陣や王宮とか、私の知らない情報に驚いて思わずユーリに詰め寄った。


「転移陣なんて初耳なんですけど?何してくれちゃってるんですか!」


私の迫力に慄いて、思わずと言った感じでユーリが後ずさる。


「だ、大丈夫だよ。転移陣は王城の奥にあって、ごく限られた人間しか使えないし。転移陣を使うにも王の許可がいる。それにその転移陣を設置したのはロッテの師匠のリズ様だぞ」


「師匠が?私聞いてないんだけど。それに王城にあるって?こちら側の転移陣から王城に侵入する者があったらどうするのよ?」


「その辺も大丈夫だよ。自分の師匠を信じろよ」

「そりゃあ師匠の事は信用してるし、信頼もしてるけど…」


師匠が作った物なら、侵入者とか色々対策してある筈だ。


「はあ…取り敢えず薬の運搬に関しては問題ないって事ね?」


「そういう事だ。よろしく頼む」



師匠は転移陣を設置した事なんて、とっくの昔に忘れてるんだろうなあ。でも何で王城に?そう言えば私も師匠の過去は何にも知らないなあ。今度、師匠が帰って来たら聞いてみよう。


今日は驚く事ばかりだ。王の許可の要る限られた人間しか使えない転移陣…。それを使って毎日ここに来るユーリ。一体何者なんだろう。


整った顔と綺麗な所作。着ている服もシンプルな白のシャツと黒のパンツだが仕立てが良いのは見れば分かる。


もう、ただの騎士だなんて思えるはずがない。何となく予想は付くが、今はまだ答えを出したく無かった。



最後まで読んで頂きありがとうございます。

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