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77話 再会

 

「よォ。スーパーノービスさん」

「……ふふふ。久しぶりね、あかりちゃん」


 レインコートの不審者二人は、正体を現した。


「ザルドさんにクロキさん!」

「どうしてここにいるんだ? 暗殺者ってあんた達の事なのか?」


 近付こうとするあかりを、小森は静止した。

 まだ彼らの目的が明らかになったわけでは無いのだ。


「ったく、用心深ェな。強ェんだからもっと慢心しとけ。オマエらが堂々としてくれりゃァ、俺様もこんな汚れなくて済んだのによォ」


 ザルドは血塗れの剣をあさっての方向に放り投げた。静かな船内に金属音が鳴り響く。


「……はぁ。ザルドもジョンもやる気無さそうだから、私から説明するわね」


 クロキも後に続くようにして、そっと剣を置く。


「オウ。勝手にしろ。俺様は休ませてもらうぜ。この調子じゃァ、もう誰も残ってねェんだろうしな」


 ザルドはワイン片手に突っ伏しているジョンの隣に座ると、その手からグラスを引ったくって、中身を一気にあおった。


「……まずは誤解を解かないとね。私たちは暗殺者では無いわ。船長のジョンは見ての通り――ちょっと紛らわしいけど、無事よ。呑んだくれてるだけ。他の船乗り達は……もう居ないのかしら。多分、あなたたちの方が詳しいんじゃない?」

「どこにもいなかったぞ」

「そうね……。それなら安心していいわ。もう暗殺者はここにはいないって事だから」

「どういう意味だ?」

「……順を追って説明するわ。どうぞ中に入って」


 小森たちは部屋に入り、好き好きに腰を落ち着けた。


「この船を用意したヤツって、誰だか分かるかしら? そこでヘタレてるジョンではなくて、今回の作戦に割り当てたヤツの事ね」

「黒騎士か?」

「そう。今回の黒幕よ。暗殺者たちのオーナー。あいつ、あなたの事が憎くて仕方がなかったみたいね。最初から作戦を成功させる気が無かったのよ」

「最初から……ということは」

「この船に乗った時点で、あなたは暗殺者の手のひらの上ってわけ。ちなみに、暗殺者っていうのは私とザルド以外の船乗りすべてよ。ジョン含めてね」

「おいおい……。ジョンもなのか」


 小森は空を仰いだ。と、いってもすぐそこにあるのは低い天井である。

 そして、すぐに疑問が湧いてきた。


「ん……? しかし、俺たちはジョンに忠告を受けて匿(かくま)ってもらったんだぞ。他の奴らと共謀してるようには見えなかったが……」

「それはジョンが黒騎士を裏切ったからよ。元々、黒騎士の計画は小森くん達をこの船に置き去りにして遭難させることなの。暗殺者達に出した指示は『物資をもってテレポートストーンで退避しろ』というものだったわ」

「なるほど。じゃあ突然船乗りたちが消えたのはテレポートしたからだったのか。ホセさんも同じような術を使っていたな」


 この大きな船には小森たち3人と、ザルド・クロキ・ジョンの合計6人しかいないということになる。

 呑んだくれの船長はすでにぐぅぐぅと大きなイビキをかき始めていた。それは静寂を破るというよりも、さらに他に音が無いことを引き立てているように感じる。


「ところで、俺たちも街に戻った方がいいんじゃないか? 6人じゃ流石に船も動かせないだろ」

「……テレポートって、かなり高度な魔法なのよ。王国の主要人物しか取り扱うことを許可されていないの。私も触媒持ってないし」

「おい。それってつまり……」

「私たちは遭難して、黒騎士の作戦は成功したってことね」


 再び小森は空を仰いだ。


「遭難しすぎだろ、俺たち……」

「なんとかなりますよ! 今までそうだったじゃないですか!」

「そうだぞ小森。諦めんな。ヌーが首を長くして待ってるんだぜ」


 応援の言葉も二回までで終わり、静寂の気配が覆いかぶさってくる。

 そして、それに上乗せするかのようにザルドは口を開いた。


「とりあえず、凪が終わるまで何もする事がねェよ。釣りもダメだ。潮の流れがないから魚が泳いでねェ」

「魚なんか呑気に釣ってられるかよ。漕いだりできないのか? この船は」


 小森はザルドに対してすぐに反論した。

 こんなタイミングで魚釣りなんて冗談にもならない。今やれる事をやるべきだ、と。


「クロキの説明聞いてなかったのかよ。船乗りたちは、『物資をもってトンズラこいた』ッつってたろォ? メシも無けりゃオールも破壊されてんのよ。オマエの卵は守ってやったけどな。だが、こいつが目玉焼きになって俺様たちの胃袋に収まるのも、そう遠くはないぜ」


 ザルドは飛竜の卵を愛おしそうに撫でた。

 赤ら顔の口端から、少しよだれが見えている。


「おい、ふざけるなよザルド! ゴルゴンゾーラは食べ物じゃねぇ!」


 小森は卵を抱えて、部屋の隅に避難させた。


「……まぁ、とりあえず身体を休めておくのがいいわ。霧が晴れて凪が終われば、やる事も出てくるでしょうから」



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