↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/87

52話 成分補給

 

 楽園のいたるところに存在するクリオネは、特になにか目的があるでもなく、ふわふわとそのあたりを浮遊し、これといったアクションを起こさない。


 ドームから外に出た小森たちは、そんな空気のようなクリオネを捕まえるべく奮闘していた。


「しかし、こう……あっちこっち光ってると探しづらいな」

「クリオネさんは透け透けなので、探すのにちょっと目が痛くなりますね」

「ぬぅ。早くしてくれぇ。小森ぃ。捕まえたクリオネが散っちゃう。」


 ヌーはエプロンの裾をつまみ上げながら小森たちを急かす。そのエプロンの中には既に大量のクリオネがうごめいていた。

 上から手で抑えないと飛んでいってしまうので、ヌーは両手がふさがり、非常に不安定な格好で歩いている。


「よし、じゃあこれが最後の1匹だ。受け取れヌー」

「うわっとと。……っていうか。こんなに要らないだろ。9個でいいって言ってたのに。」


 ヌーは文句を言いつつも、20匹を超えるクリオネを逃さないように必死に抑えている。

 そして、よろよろと危なげな動きで再びドームの方へと向かう途中で、大きくバランスを崩した。


「はうっ」

「あっ。すまん。小森。しっぽぶつけちまった。」


 ヌーは尻尾でバランスを取るしかないので、意図しない方向――つまり、小森の顔面にふわふわの尻尾を直撃させてしまった。


「……」

「小森?」

「いや……大丈夫だ。行こう」


 小森は自分を抑えるのに精一杯だった。

 ここに来るまでにヌーをずっと背負い続けていた反動を、今になって強く自覚してしまったのだ。

 背中と首元に常に与えられるふわふわの感触。ひたすら先に進むことで考えずにいられたが、今こうしてヌーを手放してみると、その喪失感は耐え難いものだった。

 それでも考えないようにしていた先の、ふわふわ尻尾びんたである。


「ヌー、コンテナの玄関は狭いからな。先頭を進んでくれ」

「わかった。転びたくないからな。ゆっくり進むぞ。」

「おう、願ってもない……」


 薄暗い通路を進んでいく。

 前方には魅惑のふわもこマスコット。

 後方には天使のように微笑むあかり。


 一瞬ためらったが、小森はついに我慢の限界が訪れた。


「ああっと! 俺氏、石に躓いてしまうーッ!」

「――ぬわっ!?」


 小森は前方のふわもこマスコットに抱きつき、首の裏あたりに顔をうずめた。


「ッスハー!」

「やっ。やめろぉっ。ヘンタイ小森っ。あかり助けてっ。」

「あわわわわっ、ヌーさんがピンチです! でもちょっと羨ましいような……」


 小森の拘束はヌーの力では到底破れない。

 ヌーがばたばたと暴れるたびに、抱え込んでいたクリオネがドーム内に散っていく。


「すんすんすん……っすはー……ヌーが悪いんだぞ……っすはー、こんなふわふわで誘惑しやがって……においも最高……すはー」

「あっ。あっ。あかりーっ。」

「あわわっ……じゃあ、わたしは小森さんの匂い嗅ぎますねっ!」


 あかりは後ろから小森に抱きついた。


「地獄かーっ。」


 それから数分、小森が落ち着くまでの間、三人のレクリエーションは続いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。