97 コーヒーの実と薫製卵
マコト&ソフィーは、早朝からトレントのダンジョンに入った。
メインはもちろんコーヒー豆の採取だけど、香りがいいトレントの枝集めもやる。
薫製のチップを作る。
「リンゴ、ナシ、コーヒー、サクランボ、カキ、バナナの6種類みんなのトレントの枝を集めるのだな」
「だね。まず試しに今から薫製を作ろう」
「うまかったら全種類でやってみたいな」
「じゃあ採取は3階からだね」
まずはプレハブ小屋キッチンのオーブンを使った。2段になるように鉄網の仕切りを入れた。下段に1階リンゴトレントのチップに点火。
上段にダンジョン3階の殻むき茹で卵、鶏モモ、豚肉、モッツレラチーズを置いた。
終わったら魚類。マグロ、カツオ、タイ、アジ、サバ、ホタテをスモークする。
「なんか煙の香りもいいし。見てるだけでヨダレ出てきたぞ」
「俺も期待してる」
「さあ、腹を減らすために走るか!」
前の日にトレントの枝を手に入れた1階と2階は走り抜けてスルーした。これで約8キロのマラソン。
3階はバナナの木が生い茂っていた。無造作に木に近付くと、1本の木からバナナが伸びてきた。
ただし、皮がむけて先が尖っている。獲物に刺してバナナから体液を吸う凶悪仕様だ。
「吸血バナナだぞ」やられたらトラウマでバナナが食べられなくなりそうだ。
しかし2人は、もうこんな場所で苦労するほど弱くない。サクッと倒して普通のバナナと、バナナトレントの幹をゲット。
次の4階に走った。コーヒートレントが出るエリアだ。
5メートルほどの細い幹の木が立ち並び、沢山の枝が伸びてびっしりと実が成っている。
が、ここでは採取しない。
階段横の壁を抜け、プレハブ小屋転移でレベルが高いコーヒートレントがいる下層を狙う。
転移先でソフィーと2人でフィールドに出ると、10メートルの大きなコーヒーの木が生えていた。
枝にびっしりと赤くて小さな実が成っている。
村長情報によると、10メートルのコーヒートレントが出るのは25階だ。最近までコーヒー豆を採取する人間はいなくてスルーされていた階層だけど情報はあった。
マコトとソフィーで一粒を取ってかじった。表面に少しだけ果実があるけど小さいし腹も膨れない。
普通は、同じように危険を冒すならリンゴやサクランボの方がいい。マコトだけは喜んでいる。
「ラッキー、このダンジョンのコーヒー豆で恐らく1番高品質階層だよ」
「おおっ、それならここから下層にはリンゴ、カキ、ナシ、サクランボがあるのだな」
「下層にも寄っていこうね」
「おお。より美味しいジャムが作れるな」
マコトはコーヒーが楽しみ。ソフィーは趣味のひとつと化してきたジャム作りに意欲的だ。
1本目の木を切ろうとしたら、いきなりトレント。慣れない植物魔物に戸惑うマコトをかばいながら、ソフィーがミスリルソードで幹を切断して討伐終了。
「あはは、マコト驚きすぎだ」
「えへへ。俺の世界の木はこんなに動かないんだよ」
和気あいあいと討伐して、ブランチタイムにする。
◆
時間としては薫製をセットして2時間。何とか味は付いているだろう。
プレハブ小屋に入ってオーブンを覗くと、いい匂いが漂っている。
ソフィーが肉や卵を切って盛り付けて、マコトは一部屋を使ってコーヒーの実を並べた。
乾燥させて、何かかして、熱を加えるかして黒くして、そうして何かで漉す。そうすればコーヒーが飲める。
ようするに、これから試行錯誤が始まる。
とりあえず今は薫製だ。
「マコト、用意できたぞ」
「おお~」
豚、鶏モモは炙って細く切ってある。チーズも表面だけ茶色で切断面がトロリ。
目を引くのは薫製卵。
半熟に茹でて殻をむいてからスモークしたから、表面が少し飴色。それを4つにカットして絶妙な固さの半熟の黄身が白身とのコントラストで映えている。
「マコト、卵からいっていいか」
「どうぞ~」
ソフィーぱくり。もぐもぐとスモークされた表面と黄身の味を楽しんでいる。
「……香ばしい香りで旨さ倍増だな」
「ん~、ビール出そうか」
「おお、サンキュー」
ぐびっといって、次は鶏モモ。
「はう~~」久しぶりにハモってしまった。
レベルが上がって肝臓も強化されたのか、ビール1本くらいでは酔わなくなった。
◆
トレントチップでスモークした食べ物は、地上の木でスモークした物より美味しかった。
なので26階以降も各種トレントの枝と実を集めた。
最後にダンジョンボス。
単なる採取感覚の2人は魔物はみんなソフィーのミスリルソードでサクリ。3階も30階も変わらない。
高レベルのふたりに最終ボスでレベル40のランク2ダンジョンでは、経験値も入らない。
魔石エネルギー112d、有機材料600キロが収穫である。
ダンジョンボスの枝も複製可能だったし1本採取で帰ることにした。
村に戻って羊毛の対価に約束していた物資を渡した。
100グラム5000円の適当換算で物資を渡すと喜ばれた。
その後は村人も交えて薫製を出して味見をしてもらった。かなり喜ばれ、向こうも取っておきの食べ物を出してくれた。
味はともかく善意あふれた食事。笑顔で食べられた。




