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異世界でプレハブ小屋をもらうとチート機能が付くようです  作者: とみっしぇる


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95 キャラバン隊とトマトソーススパゲッティ

ソフィーのルーツと思える猫獣人の集落に行ったが到底、受け入れてもらえるムードでもなかった。


マコト&ソフィーの中にあった最終的な定住地候補から、獣人のエリアは外れた。


けれどソフィーは落ち込まない。


すでに、イタリアン南部で男爵になったマルゲーリが領地で歓迎してくれると言うし、帰ってもいい場所はある。


何よりも、そういう自分の事情を踏まえて大切にしてくれるマコトがいる。


「マコト」

「ん?」


「獣人と仲良くなれなくても、アンタがいてくれて幸せだぞ。決して強がりではない」

「…うん」


獣人の村を出て数時間後の夕暮れ時、ナイラ川沿いの簡易な野営地の真ん中でテーブルを出して2人でビールを飲んでいる。


「俺も。ソフィーと出会ってから旅がすごく楽しくなったよ」

「ははは」


地平線に日が沈み始めた頃、マコト達が向かう南側から20人ほどのキャラバン隊が野営地に向かって進んできた。


ただ、焦っている感じでジグザグに蛇行して走っている。何かから逃げている感じだ。


よく見ると2トンもあるカバに追われていた。恐らく縄張りに入ってしまったのだろう。


ラクダに乗ったキャラバン隊の先頭の人がマコトに気付いた。


「逃げてくれ! カバが追いかけてきてるんだ」


悪人と善人が1体1の世界だけど、善人寄りだと判断した。


ふたりで最後尾の人とカバの間に入って食い止めることにした。


2トンのカバが時速30キロで走ってくる。殴って止められるかもだけど、そこで危険な賭けに出る気もない。


カバの対応はソフィーに任せた。加減が下手なマコトだと、カバに大けがをさせてしまう。


ソフィーはミスリルホイルに魔力を流してカーブを作り、直進しかできないカバの左半身に当てた。


「ふんっ」。そうして強引にカバの進路を曲げてナイラ川の方に誘導した。


どっぼーんと、巨大な水しぶきを上げてカバはナイラ川に落ちた。ここは別の個体の縄張り。怒られて、慌てて自分の縄張りに引き返していった。


「ありがとうございます。助かりました」


サファテという商人がキャラバン隊の隊長で、マコトが向かうエチオーピアを巡ってエジンプトに帰るところだった。


彼らは野営の準備を始めた。助けてくれた礼に、干し肉などの保存食だけど食べていってくれと言われた。


なので善意には善意で。保存食ばかりで過ごしてきたという彼らに、新しい料理を振る舞うことにした。


マコトのマイキッチンはすでに出してある。


まずホカイロの街で作っていたトマトソースに小さく切った豚の燻製肉を混ぜた。今回は胡椒も入れた。


麺はソフィーに5ミリで切ってもらった複製生パスタを大量に出して軽くゆでた。


麺とトマトソースを混ぜて葉物野菜も絡めた。


続いて角切りにしたモッツレラチーズを投入して完成。


「さあ、マコトが考えた麺料理だ」

「遠慮しないでどうぞ~」


「初めて見る料理だぞ」

「麺って何だ?」

「トマトって、あの観葉植物か」

「けれど、すごくいい匂いがするぞ」


商隊長のサファテが思い切って口に入れた。そこから手が止まらず、次から次にフォークで口の中に麺を運び出した。


「どうですかサファテさん」


「うまい!」

みんな続いた。


ソフィーも気に入ったようで、ちゅるちゅると美味しそうに食べている。


「食感がいい~」


商隊の人間は10日ぶりのフレッシュな肉や野菜。あっという間に40人分の麺がなくなった。


「追加で、ピザって料理も作りますよ」


「おおっ」「いいんですか」「こんなウマイもんが、また出るのか」


続いて改良したピザ。トッピングは新鮮な牛、豚、エビ、イカををたっぷり乗せた。


異世界には宗教による食べ物の禁忌はなかった。


マコトの大判振る舞いで最後はビール。みんな酒が好きだそうだ。


かなり盛り上がって楽しめた。


有益な情報も手に入った。初めてコーヒー豆の存在を知っている人と会えた。


名前はコーヒーではないし煎った豆でもない。というかまだ正式名称すらない。


「ああそれは、きっと低木に実る小粒の赤黒豆だ」

「そうです。確かに未処理だとそんな色でした」


エチオーピアの高原地帯を交易で通ったとき、立ち寄った村で商隊のメンバーも何人かかじったとか。


「売ってたんですか?」


「いいや、羊飼いが放牧地の近くで元気がないゴブリンを見つけたとき、その実を食べてたそうだ」


「へえ…」

「それでね、食べたゴブリンが興奮し始めて、無謀にも武器を持った数人の羊飼い素手で挑んできたそうだ」


羊飼いはゴブリンを返り討ちにしたあと、実をつまんでみた。


苦いけど頭がスッキリ。その村では気付け薬に使い始めている。


異世界ならではのエピソードだと思うマコトだ。


「…マコト、その赤黒豆って」

「恐らくコーヒーだね」


「手掛かりが見つかったな」


「ソフィーと一緒に人助けすると、何か情報が帰ってきたりするよね」

「あはは。またも偶然だな」


ここから30キロ南の地点でナイラ川が大きく2つに分かれる。そこを東側、進行方向に沿うなら左側に進む。そこから200キロほどの村だそうだ。


「ところでカバから助けてもらった礼だが…」


「いや、コーヒーの情報で十分です。そのために、この大陸に渡ってきたんです」

「そうそう。アンタのお陰でエチオーピアを闇雲に探さなくてよくなった」


逆に情報料として、胡椒、ギョニクソーセージ、砂糖を渡された。


商隊のみんなは驚くが、納得もした。


普通なら権力者が武力をちらつかせて囲ってしまうほどの人材だ。


だけど、それを退ける力がある。


黒髪男子は大容量と思える空間魔法を持っていて、砂漠でキンキンに冷えた洗練されたエールを出してくれた。


スキルの性能が破格であることは間違いない。


相棒の女子の方は、薄い布の魔道具だけを使って2トンのカバを怪我させず退けた。


双方がDランク冒険者らしいがたまに漏れ出す魔力が尋常ではない。中身はハイレベルの怪物だろう。



商隊に引き込みたい本音を隠し、次の朝に別れた。

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