84 スケルトンと水風船
マコト&ソフィーは、目指すランク4ダンジョンがあるエジンプトの首都ホカイロに到着した。
アレクサンガリアの孤児院を出発して4日。150キロの行程はナイラ川を伝って南下した。
途中でスズキの仲間のナイラパーチなどと遭遇。何の心構えもないマコトには驚きの連続だった。
巨大スズキは2メートルサイズを8匹捕まえた。150~180キロで有機材料に回した。
…美味しくなかった。
首都ホカイロでは、とりあえず孤児院に直行。アレクサンガリアのシスターパトラに聞いていた、シスタートゥクに会いに行った。
ソフィーが母親と慕うシスターアンジェラの友人でもある。
シスターアンジェラが書いた大麦パン製法のメモ書きと、ドライイーストも寄付した。
街の有力者が定期的に寄付もしてくれるから経営状態はいい。
ちょうど、貿易に強い家門の若い姉弟が慰問に訪れていた。マコトが映画で見たことがあるファラオ夫婦みたいな格好。
濃すぎる顔が怖かったけれど、シスターが紹介してくれて軽く挨拶してくれた。名前はペルムとサンドラ。意外に気さくだった。孤児院の子供も懐いていた。
2人は、孤児院を出るとダンジョンに向かった。
アークアメンダンジョン推定で全80階。1階の魔物シールドスケルトンがレベル51。公式記録に残る50階の包帯を巻いたミイラバンパイアでレベル100。
そこから推察してダンジョンボスのレベルが最低でも130といわれている。
商業ギルドで、50階までの不完全ダンジョンガイドを120万ゴールドも出して買った。
「瘴気を纏ったガイコツとかいるよな…」
「離れて戦えば大丈夫でしょ」
◆◆
ダンジョン前には夕方に到着した。ダンジョンの周りは観光地でもあるし宿屋もある。
普通なら宿屋で1泊だけど、プレハブ小屋があればダンジョン内の宿泊でも問題ない。入ることにした。
マコトはピラミッドは地球でも見たことがない。古代遺跡を見て感動。
地球と違うのは、スフィンクス像がダンジョンだったこと。右足に入り口があった。
ダンジョン突入。通路は高さと幅が20メートルある回廊型。アンデッド基本で上に登っていくタイプ。
魔物の弱点は聖属性。
1階で1度は戦って魔物の強さを計る。
1階で厳しい戦いとなるなら、全部の戦いを避け、プレハブ転移のみでダンジョン内を移動する。
狙いは49階にある泉に湧く欠損も治せるグレーターポーション以上の物。
とにかく欠損クラスの大怪我を治せるアイテムを見つけたら帰る。
ソフィーと夕食の話をしながら歩いていると、80センチのシールドとナイフを持ったシールドスケルトンが出てきた。
丸見えになった肋骨の内側の中央に魔石が張り付いている。頭部を壊すか、魔石を奪えば倒せる。
腕などを切り落としても、トドメを刺されなければ戦い続ける厄介な相手だ。
戦利品に肉などが期待できない代わりに最低でも魔鉄製品を持っている。
恐らく目の前の敵はソフィーなら剣だけでも倒せる。
だけど2人は上層を目指す。アンデッド用に作ってきた武器が通じるのか試す。
「マコト、私に先にやらせてくれ」
「オッケー」
ソフィーが収納腕輪から新兵器を出した。直径8センチのスライムボールに液状の物がパンパンに詰まっている。
水風船にしか見えない。
「そりゃっ」
ソフィーはシールドで防がれないように、スケルトンの右足にボールを投げた。
ボールに切り込みを入れて割れやすくしてある。当たるとボールが弾け、ばしゃっ。
そしてジュワーっと、スケルトンの足首が煙を上げて溶け出した。
転んでカタカタカタと顎を鳴らし、正々堂々と戦えと抗議しているようだ。
スライムボールの中身はハイポーション100cc。買えば100ccで30万ゴールドだけど、複製材料はスライム99グラム、痛み止め1錠で満たせた。
重量の負担も少ないからゴブリン1匹分の魔石エネルギーで20個も作れる。
1個作って10回の倍々複製で1024個のストックがある。
「アンデッドには効いたね。じゃあ、こっちも試そう」
マコトは水風船も持っているが、それは予備。
空間収納口をスケルトンの胸の上に指定して大量の風呂の残り湯を落とした。中身は一応ノーマルポーションだ。
効果が弱くても量は100リットル。
「ギエエエエエ」魔石があばら骨から剥がれ落ち、骸骨が崩れ落ちた。
「効いたな」
「そうだね。俺達からしたら一番用意しやすいアイテムで倒せたね」
魔石と魔鉄製品を回収。魔石エネルギーは33d。ランク3ダンジョンのレベル48ニワトリと変わらないけど一、ニワトリは反撃が速かったし神経を削られた。
マコト的にはこっちが断然倒しやすい。
次に行くことにした。
「じゃあ、プレハブ小屋の壁抜けから違う階層に行こうか」
「ああ。転移先に倒せる敵がいたらいいな」
壁際から2人でプレハブ内に入り、中を通って異次元越しに壁の向こう側に歩いて行った。
透明モニターで行った先を確認すると、シールドスケルトン2体に斧持ちのスケルトンで計3体。
「マコト、ダンジョン情報から何階か予測はつくか?」
「ちょっと待ってね~」
途中までの情報しかないとはいっても、50枚の羊皮紙。かさばるし探すのが大変。
「あった。あのスケルトントリオは9階かな」
「チャレンジだな」
敵のレベルは59。いきなり2人のレベル54を越えてきた。
なのでマコトはプレハブ小屋に入ったまま、1体のスケルトンの足の裏に空間収納口を設置。
ハイポーションを出すと足が溶けて転倒。立て続けに2体目、3体目にも同じ事をした。
2人はプレハブ小屋から出て、ミスリルソードでスケルトンの頭部を斬った。
2体倒したソフィーと1体のマコトはともにレベル56。先にハイポーションで攻撃した分がマコトの経験値に加算され2人均等になった。
魔石エネルギーは33dと1階と変わらないが、3体分で99dが手に入った。
買った地図を見ながら少し歩くと、行き止まりになった。
レンガの仕切りがあり、そこに水がたまっている。ハイポーションの小さな泉である。収納すると5リットルくらいあった。普通の冒険者なら大きな戦利品だ。
「さあソフィー。10階フロアボスのグールは明日にして、もう休もうか」
「マコトは余裕だな。こういう場所に来るとアンタのすごさが際立つぞ」
「俺は大したことないよ。プレハブ小屋のお陰だね」
エジンプト最大の危険地帯にいるのに、マコト&ソフィーは平常運転だ。




