75 蒸しプリンと茶碗蒸し
マコトはローマンの街で知り合った貴族家三女マルゲーリと漁村で再会。2日過ごしてから、暗黒大陸アフリカに渡ることにした。
空路と海を利用する渡航の準備と同時に、漁村で食材集めと調味料作りをする。
集めている物は海草で海苔である。乾燥させて複製する。
寿司を握るようになったら、当たり前のように巻物も欲しくなった。
軍艦巻き、鉄火巻きもマコトは好きだ。
ふと思い出すと、異世界に来てイタリアンで3か国目だけど、どんな港でも海藻食品は売ってなかった。
ソフィーも、ダシを取るのに昆布、要するに海藻を鍋に入れたら驚いていた。海藻を食べた人の話は聞いたことがないそうだ。
「異世界では海藻食の習慣がないのか」
つぶやくマコトだけど、海藻を食べる国は地球でも日本、ほか数カ国しかないと思っていなかった。
さらに日本人は、世界でも珍しい海藻を消化できる民族であることも知らない。
ともあれ、海の栄養が豊富なのか黒々とした海苔が取れた。村人には何に使うか聞かれたから、「錬金術」と答えた。
大量に集めた岩海苔を風呂場の乾燥機能で乾燥させて、強引に30センチ角の海苔1枚を作った。
魚同様に異世界の海産物は旨い。見た目はカラカラなのに、かじると風味豊かで、確かに海苔だ。
待ったなしで複製開始。4回の倍々複製で16枚はストックする。
海苔を取った岩場の海中にウニらしき物も発見。ソフィーにミスリルホイルで取ってもらうと、立派なムラサキウニだった。
「おおっ、ウニだな」
「知ってるの?」
「身が少ないが美味いと聞いたことがあるぞ」
異世界でもウニ食文化はあるようだ。50個取って複製し、料理を作る準備をしている。
◆◆
夕方になって帰ってきたマルゲーリの父親、ペルネ騎士爵と会った。
マコトはイタリアン貴族の獣人に対する差別の激しさを知り警戒していた。が、ソフィーが何者かを知って頭を下げて挨拶してくれた。
「娘が大変お世話になりました。引いては我々も恩恵を受けることができます。いざという時は、ここに来て下さい」
海で隔てられているとはいえ、シチリトア島を渡れば暗黒大陸自体は最短で100キロ。先祖は獣人とも交流があった。
騎士爵自体も、奴隷として連れてこられた獣人が逃げる手助けを1度だけしたことがあるという。
末端でもイタリアン貴族だから表面上は人間至上主義者となっているが、内面は違うようだ。
ソフィーの直感スキルも警戒を示してないし、マコトの第一印象も良かった。
マルゲーリもすでに事情を知っていた。その上で再会直後の歓迎ぶり。ソフィーと友人になりたいと言ってくれた。
「…いいのか?」
「こちらこそお願いします」
少し目が潤んだソフィーを見たマコトは、自分の方が泣いてしまった。
◆◆
次の日は村人にマグロの身をスモークしてもらっている。
刺し身用の中トロ、赤身、大トロは確保した。燻製も少しずつストックすればいいし、残り100キロほど村に置いていく。
それよりもパラグライダーの調整だ。一晩で3セット複製。1セットは船の牽引用、1セットが滑空用、2セットが予備。
操作用のミスリルロープなどを入れても8キロ。高性能なのに1セットを4d、角ウサギ2匹分の魔石エネルギーで作れた。
小高い丘に登り、傾斜がきつい斜面を探して滑空用の実験。子供も10人付いてきた。
大鍋で型どりし丸いスライムシリコンゴムの座席を作り、パラグライダーに取り付けた。
高度2000メートルから飛ぶ予定だから、落下対策でプレハブ避難が使えるマコトがパイロット。
「さあ飛ぶよ~」
風を受けたパラグライダーは空に浮いた。
「おおおおお~」子供が大興奮。本当はソフィーを子猫化させて一緒に飛ぶ予定だったけど、子供がいるから今は保留。
魔力を込めて強引に帆をねじると、風向き次第では幾らか上昇もできることが分かった。これは大収穫。
上に浮きすぎないように100メートルのロープを繋いでいて、それをソフィーが引っ張って1回目の実験成功。
「僕の乗りたい」「あたしも!」
ソフィーも乗りたそうにうずうずしている。子供を膝の間に乗せて、低空飛行の訓練。5メートル以上は上がらないようマコトがロープを持って並走した。
今のマコトはレベル54。降り斜面なら60キロで走りながら周囲を気にする余裕がある。
「たのし~」
「はや~い」
「空を飛ぶのって面白いな」
2時間ほど子供を楽しませながら微調整も完了。
おやつには夕べ作って冷やしておいた、手作りプリンを出した。子供達には大いに喜ばれた。
日本から持ち込んだプリンもある。このプリンは『ついでに』作った。
エビ、魚、ダシなども手に入った。また、村で素焼きの茶器ももらった。だから茶碗蒸しに着手した。
茶碗蒸しにするためダンジョン13階の卵を30個溶くと、ソフトボール大の大きな卵だから卵液がかなり余った。
なのでマコトが茶碗蒸しを用意する横で、ソフィーが卵液に砂糖、牛乳を入れてプリンを作った。
どちらも蒸して出来上がり。
「ほれ~~~!」
ソフィーは子供が驚く顔を見たくて、直径30センチの丸い陶器鍋でプリンを作った。
ひっくり返して大皿に出すと、プリンプリンと揺れている。
「うわあ~」「これがお菓子?」「甘い匂い~」
マコトに習って作ったカラメルソースをドバドバとかけて、好きなだけ皿に取らせた。
「甘くておいしい~」
「ぷるぷる、つめた~い」
残りは村の女性達のおやつになった。
夜には早くもマコト&ソフィーの送別会。
そこで茶碗蒸しを披露した。
マルゲーリ親子に食べさせると、目を丸くしていた。
特に、卵がダンジョン産だと聞いて。
魚醤、魚の干物、柑橘類、もち麦をもらった。
代わりに衣類を可能な限り出した。
マルゲーリは次に王都に行くとき、マコト&ソフィーと交流があった孤児冒険者を探してみる。
本人達が希望するなら、新しい領地の領民になってもらうそうだ。
半分は実益、半分は恩人のソフィーが気にかけている子を助けたいからだ。




