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異世界でプレハブ小屋をもらうとチート機能が付くようです  作者: とみっしぇる


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72 キャリーバッグの車輪とスライムシリコンゴム

マコト達の次の旅はイタリアン王国の首都ローマンから、エジンプトのナイラ川流域にある古代遺跡群まで。


地球の地図に照らし合わせたら直線距離で南東に2000キロ。


陸路と海路で行けば2600~3000キロくらいで、陸路部分の2000キロがオール砂漠だ。このルートは避けたい。


普通はローマンの港から商船に乗って海を渡るそうだ。


金を積めば一般人でも乗せてもらえるが、船の持ち主と交易に向かう責任者は選民意識が強いイタリアンの上位貴族。


黒目黒髪のマコトは歓迎されない。船の持ち主が黒髪の錬金術師マコトを知っていれば、なお悪い。当たり前のようにパートナーのソフィーが獣人と分かる。


トラブルになっても、プレハブ小屋に逃げ込めばいいと思うが、船上でやると大変なことになる。


プレハブ小屋は動かない。なのに船は進んでいく。マコト&ソフィーは、海の上で異空間に取り残されることとなる。


プレハブ転移を利用した空中遊泳で渡ることも可能だろうが、実際に歩くのはプレハブの中を2000キロ。やるなら最終手段だ。


なのでローマン近くの漁村で、引退したい老漁師から長さ3メートルの釣り船を破格の値段で買った。


ソフィーは小船の船尾でミスリルホイルをらせん状に動した。スクリュー的な感じだ。


走るより速く船は進んだ。代わりに魔力消費は激しい。真っ直ぐ走り続けるための魔力操作も難しかった。


10キロ進んで砂浜を見つけて休憩。ソフィーはぐったりだ。非常手段には使えるけど、2000キロの移動は無理。


船は収納。


昼ご飯はマコトが作った。久々のニンニク醤油チャーハン。ダンジョン3階の卵で作ったタマゴスープも添えた。


「うまい~。あっという間に魔力が回復しそうだ」

と、ソフィーは言ったが、3時間は休ませないといけない。


空は薄曇り。マコトは海岸近くの松の木の間に布を張り、影になった砂地に布団を敷いた。その上でソフィーを昼寝させた。



砂浜に直径2メートルの丸テーブルを出し、にわか錬金術師マコトの生産活動だ。


日本から持ち込んだ物資で、ひとつだけスライムと融合させていない物質が残っていることに気付いた。


キャリーバックの車輪を覆うプラスチック風の部品。カラーリングは黒。


「材質の名前、何だったっけ。ビニールでもプラスチックもなかったよな」 

  

呟きながらスライムと車輪カバーを混ぜた。


すると、車輪カバーとスライムが溶け合い、融合体は表面がテカテカで周囲に広がっていった。


レジャー用のビニールシートくらいの厚さだけど、弾力がものすごい。丸テーブルを覆いはじめた。


マコトは車輪カバーの材質名が出てきた。


「思い出した、シリコンだ」


風圧を受けて空を飛ぶパラグライダーの翼のコーティングに使われるし、弾力製品の中でも耐水性はピカイチだ。


丸テーブルの真ん中にスライムシリコンが存在する。マコトが用意していた4個の車輪カバーを加えるとテーブル一杯にシリコンゴムが広がり20分ほどでスライムの水分が抜けた。


20キロの魔鉄を包んで振り回しても伸びるけど破れない。マコトが欲しかった弾力シードが出来上がった。


1・8メートルの円形。黒くて半透明だ。


まず、スライムと結束バンドを融合させて作ったスライムビニールシートとスライムシリコンを貼り合わせた。


ミスリルホイルを切って、スライムシリコンの上にアップルパイのように縦横に乗せた。接合面の端をミスリル銀入りスライム糊でくっつけてトランポリンのような土台は完成。


周囲は固くなるスライム糊を使ってミスリルホイルを固め、真ん中だけ弾力を持つようにした。


最後にミスリルホイルを縦にくっつけた長さ120メートルのミスリルホイルのひもを4か所に接着。


凧にした。


凧にしたのには理由がある。


完成した頃にソフィーが起きてきた。


「ふああ~。マコトのお陰でゆっくり眠れた」


「ちょうど良かった。移動手段に使える物ができたよ。とりあえず船で移動するときに役立つと思うよ」

「早いな。さすがマコトだ」


見る前から褒めてくれるソフィーだ。



凧を持って船に乗った。そしてミスリルホイルの端を紐で結んで、4カ所とも船にくくりつけた。


魔力操作と魔力量の関係から、マコト&ソフィーのふたりで動かすことを前提で作った。


「マコト、ほとんど風が吹いてないから、マコトの帆は空に浮かないぞ」


「そこはミスリルホイルで作ったヒモが役立つよ」


マコトは帆から伸びた4本のホイルをまとめてつかみ魔力を込めた。向きは真上。


するとミスリルホイルがピンと立ち、5秒で帆は120メートル上空に浮いた。マコトは魔力操作は下手でホイル硬化の1択だが、魔力攻防力はピカイチだ。


地上の摩擦の影響を受けにくい上空は、いつも風が吹いている。凧が風を受けて斜めを向き、船を沖の方に引っ張り出した。


「おおっ。なかなか速い。マコトの魔力消費量は大丈夫か」

「一度ホイルを固くして形状を変えなかったら、魔力が循環してくれるんだよね。4時間くらい持ちそう」


「すごいな…。しかし目的地は岸沿いに南なのに、東の沖の方に向かってるぞ」


「そこはソフィー頼みで」


1本のミスリルホイルをソフィーに持たせ、魔力をうまく使って帆の向きをずらしてもらった。すると、進路が狙った方向へと戻されていった。


「これはいい。商船よりスピードが出ているな」

「帆をもっと大きくすれば速くなると思うし、うまくいけば空を滑空できる方法もみつけられる」


「マコトは天才だな!」


マコトは、わずかながら自分とは違う性質の魔力を感じた。ミスリルホイルを通して、ソフィーの魔力が手に流れ込んできた。


「ソフィーの魔力を感じる…。やっぱり柔らかい」


「そうだ。私がマコトに魔力を流せば、ミスリルホイルを柔らかく操作するコツがつかめるかもしれん」


片手を空けて指を絡めて練習したら、マコトはミスリルホイルの端だけは柔らかくできた。


少し進歩した。


帆にした凧の大きさの関係で最高時速20キロだけど、海上移動の練習はふたりとも楽しかった。


ただ、ふたりして陸から10キロ離れた場所で魔力切れ。


船ごとプレハブ小屋に入り、初めて海の上の異空間で泊まった。


プレハブ小屋の周囲を透明にすると、魚の群れが異空間の周りを泳いだりしてて、なかなか幻想的だった。



次はパラグライダー作りに挑戦である。

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