68 白ワインと代用みりん
マコトは棒寿司を作った次の日にソフィーと、白ワインとワイン調味料で楽しむことにした。
カラブリア伯爵に白ワイン3本をもらって3日、ようやく準備ができた。複製したりと色々あるから、今回は時間がかかった。
白ワイン3種は2本に複製した直後に、各1本を調味料に回した。
代用みりんを作った。
貰ったワインはガラス瓶ではなく、陶器の容器に各500ミリリットル入り。
マコトは瓶を山ほど持っている。使い終わった容量450ミリリットルのオリーブオイル瓶を複製。今回は6本の空瓶を用意した。
そこにワインと砂糖の配合を1対1、6対4と、ふたつのパターンでワインベースみりんを作った。
ワインが3種だから6本できた。
瓶の半分までワインを注いだあと、どばっと満タンになるまで砂糖を混ぜていくマコトに、ソフィーは目を丸くする。
適当だから、瓶の周りに砂糖がこぼれている。
「おう…、貴重な砂糖を惜しげもなく…」
「そんな調味料なんだよね」
砂糖を使うようになったソフィーだけど、高値だとは分かっている。
街で確認したら、昨日の砂糖1キロが52万ゴールドで取引されていた。ワインも高いはず。
「深く考えないことにしよう…」
現地価格では、ワインみりん製作費用は1本50万ゴールドを越える計算だ。
それを寝かすこと2日半。
ワインみりん6種は各3リットルに増やした。ワインは各16本ずつキープ。
◆◆
昼になって、2人で海辺の休憩地に行った。
港でアナゴが大量に獲れたと聞いて、生きたやつを買い求めた。
「へえ、アナゴって異世界のナーロッパでは食べるんだ」
マコトよ、意外だろうが地球の中世ヨーロッパでもタンパク源として獲られていたのだぞ。
異世界アナゴは基本が保存食。港で塩漬けにして出荷されるから、その前に求めないと加工場に持っていかれる。
ウナギと違い1匹が800ゴールドと比較的安い。サイズはバラバラだけど、40センチ前後を30匹買った。
立ち寄った人が飲食スペースにしている場所に行くと知った顔があった。
ランク3ダンジョンから出たあと一緒にすき焼きを食べた15歳の冒険者男女に会った。
「よっ、また会ったな」
「君達も魚を買いに来たの?」
「あ、ソフィーさんとマコトさん」
「この前はお世話になりました」
名前はジョバンとアエラだった。標準的な美男美女で孤児。
今日は休息日でローマンまで来たけど、街の食堂は高い。安い魚を食べさせてくれる店を探しに来たそうだ。
彼らは自分の生活も楽ではないのに、同じ境遇の子供達の面倒を見ている。ソフィーは、こんな子を放っておけない。
「ちょうど良かった。新しい料理に挑戦するから、食べていかない?」
「マコトがこう言ってる。そこに座ってくれ。酒は飲めるな」
ソフィーが有無を言わせない。収納腕輪からテーブルと椅子を出した。
気に入った人間にしか飲ませないビール『イチバンの搾り』を出した。ジョッキについで渡して、自作フライドポテトを皿に置いた。
「飲め」
ジョバンがグビッといった。
「食え」
アエラはポテトを食べた。
「美味い…」
「美味しい…」
「だろ。メイン料理はもっと美味いからな。待ってろ」
数日したら、マコトと海を渡って街が少ない暗黒大陸に行く。そう思うと、人が多い場所で2人で楽しんでおきたい。
マコトも同じ気持ち。空間収納からマイキッチンを出した。
すでに何匹かウナギをさばいたソフィーは、アナゴも軽々とキレイな背開きにした。
マコトは準備していた熱い油を出し、適当な大きさにアナゴをカットして衣を付けて投入。
今回の影の主役は、もちろん白ワインみりんを使った調味料。
水に醤油、干しカツオのダシ、そこに代用みりんを入れて、ひと煮立ち。
天ぷらのつゆを作ってきた。
今日は癖がなくフルーティーなワインから作ったみりんを使用。マコトはワインみりんと呼ぶことにした。
ワインみりんと醤油を混ぜる割合を試行錯誤して、ようやくできた。
揚がったアナゴの天ぷらを並べ、薬味と天つゆ。
辛口の白ワインを空けて、4人分をカップに注いだ。
「塩、胡椒なんかも用意したけど、まずは天つゆで食べてね~」
「さあ食うぞ」
ソフィーがサクッといった。
アナゴは天ぷらにすると、柔らかな身が本領を発揮する。
かじると、サクッと音が響いた。
「お~マコト、身がふわふわだ~」
「うんま~」
2人で白ワインを飲んだ。
「はあ~~~」
ジョバンとアエラも食べた。
「…すごく美味しい」
「こんなの、街の高級食堂でしか食べられないんじゃないか…」
「気に入ったか」
「はい!」「すごいです」
揚げ物の匂いに人が集まってきた。
マコト&ソフィーは新作料理をギャラリーにもご馳走するつもりだが、まずはジョバンとアエラの昼ご飯。
マコト作の木製どんぶりにご飯をよそって、アナゴ天を中心にどさり。追加で揚げたエビ天、イカ天も並べた。
そうして、天つゆよりも濃く仕上げたタレをかけた。
こちらは辛口のワインみりんベースだ。
ジョバン&アエラだけでなく、集まってきた人もアナゴ天丼を見ている。
「食え」
若い2人は一心不乱に食べ出した。
マコト&ソフィーは目を合わせて笑った。
食べ終わった2人にも手伝って貰い、希望者にアナゴ天を振る舞った。
持っている魚を揚げて欲しいという人もいた。
ソフィーが快諾し、たちまち魚を3枚におろしてマコトが揚げた。
つゆとタレの作り方を聞いてきた人もいたがソフィーが説明した。
「悪いな。この黒い調味料はパートナーの魔力を練った錬金術でしか作れんのだよ」
それでみんな引き下がった。マコトは意外。不可解なことが錬金術の一言で片づく世界だと思った。
若い2人が帰る前に、彼らが面倒を見ている子供達への土産を持たせた。
2人に何度も礼を言われた。
マルゲーリといい、立て続けに好人物に出会えた。
マコトは思った。
「そろそろ、変な人が接触してくるのかな」
善人と悪人が半々の世界。幾らか心の準備ができてきた。




