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異世界でプレハブ小屋をもらうとチート機能が付くようです  作者: とみっしぇる


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58 子猫の価値とピクルス

イタリアン王国のサルターニア温泉地帯に到着した。


緩やかな山地にあり、登る道中の景観も素晴らしかった。


西海岸側にあるフレンツエの街から2日をかけて東の山間部に向かった。1日目の夕方は観光客、湯治のために温泉に行く人と帰る人でにぎわう、簡単な宿泊所に泊まった。


自然が作った『湯船』は美しかった。斜面では棚田のように露天風呂が出来上がっていた。上の浴槽から下の浴槽にお湯が流れ込んでいた。


「マコトの風呂もいいけど、こっちも気持ちいいな~」

「プレハブ小屋の中と違って開放感があるね」


温泉を堪能した。


ちなみにマコトはすでに、素材の採取は終えている。


温泉地に到着する前、少し山道を逸れると石灰岩、硫黄らしき物質のかけらがあった。100キロずつ確保している。


ソフィーは休憩所、宿泊所で話しかけてきた人に気さくに応じていた。


その人柄のおかげで、マコトが欲しい物が手に入った。


◇◇

話した人の中に、1年前に引退した大きな商会の元商会長がいた。


彼は病後療養中の妻の湯治のため、サルターニア温泉地帯に来ていた。


ソフィーと夫婦が風呂上がりの休憩所で話をしているときに、妻の具合が悪くなった。


ソフィーは人に見られていることを忘れ、収納腕輪からハイポーションを出して飲ませた。


次いでマコトが夫の方に病気の内容を聞き、空間収納から抗生剤を出して口に含ませると、一気に具合が良くなった。


30分もすると呼吸が整った。夫婦は驚いた。


「労咳にかかってから1年、治ったとお医者様に言われても残っていた胸のつかえが…」

「よかったぞ。たまたま薬が効いたか」


「いえ、あの…お名前は」

「彼は薬を作った凄腕錬金術師のマコト。私は同行者のソフィーだ」


「空間魔法…高位錬金術師マコトと冒険者ソフィー?」

 夫の方がつぶやいた。


「あ、申し訳ない。私はトロイ商会の隠居でゲドスと申す者です。妻に貴重な薬を分けていただき感謝のしようもごさいません」


そこからなぜ、マコト&ソフィーを知っているのか教えてくれた。


きっかけはマコト。


元商人として、価値ある物が眠っているという、ポルペイン帝国・魔の森の情報は定期的に仕入れていた。


その情報網に触れたのが、いきなり現れた凄腕錬金術師のマコト。


足取りが何度も消えたあと、ラフランス王国のボルビックの街に出没。女性と一緒だった。


その女性は誰かと探ると、自国の軍部が探している、子猫に変身できる獣人混じりの女性だった。ただ探す理由が、ろくなものじゃない。


「敗戦続きの我が国は軍部が暴走気味でして、自国の女帝アテリーナ様を亡き者にしようと目論む貴族まで出てくる始末です。そこで暗殺者を……」


現在、国を治める女帝アテリーナは安穏派。過激派ばかりの公爵を中心とした軍属貴族は女帝が邪魔。


最近も国境付近でミロ公爵が指揮した軍がラフランス軍に戦いを仕掛けた。


実際にはマコトの軽い報復が大変な効果を呼び、ミロ公爵は討ち取られた。そのままイタリアン軍は負けた。


その情報はまだ、女帝アテリーナをはじめ少数の人間しか知らない。マコトも自分が原因だと知ることはない。


だからマコトは軍部の動き警戒している。


「やっぱりか。ソフィーの猫変身の価値に気付いてるか」マコトは呟いた。


「どういうことだ。私の獣化は戦闘力もないに等しいぞ」


「だけど、それだけが戦い方じやない」

マコトは言い切った。


この世界の戦闘職は人間も獣人も脳筋で、戦いといえば正面からとなる。物理攻防力の高さが正義なのだ。


猫ソフィーを戦闘員として考えると弱い。けれど暗殺者なら別。知能が高いまま子猫になって女帝の寝室に忍び込み、戦闘力がある人間体に戻って首を絞めればいい。


ただ、マコトにはさらなる疑問。それほど価値があるのに、ボルドー銀山で奴隷狩りと戦ったあとソフィーの元仲間以外に誰も仕掛けてこない。


監視していたやつもいたのに、何もされていない。


「ゲドスさん、俺達って各方面から狙われてて、なんで誰も接触してこないんでしょか」


「マコトさんがポルペイン南部の魔の森から現れた要注意人物だからですよ」


「ええ…。俺、そんなに危なくないですよ」


「あなたは人間は殺めていませんが、ソフィーさんに危害を加えようとした人間は、手ひどく返り討ちにしていますよね」


ボルドー銀山に現れた奴隷狩りは全員が生きているが、再起不能だそうだ。


ソフィーの元仲間の時は脅しに使った大きな石がギリギリに落ちたから、彼らを押し潰そうとしたことになっていた。


調べた人間ほど、ソフィーを傷つけマコトを怒らせた時の恐ろしさも分かるようだ。


スライム錬金の完成形が見たいと言うと、透明袋に入った砂糖と干し肉をくれた。


値千金の品物を惜しげもなく手放せる。そして迫害される獣人女性を宝物のように扱っている。


ゲドスには目の前で笑うマコトが別の常識で生きてきた人間に見える。


迂闊な対応はできない。


◇◇

ゲドス夫妻には抗生剤を30錠渡し、使用上の注意を伝えた。謝礼品ももらった。


「あの…そんな物が貴重なお薬をいただいた恩返しになるのでしょうか」

「もちろん!」


もらったのは、マコトが探している物。ピクルスと酢だ。


夫人がキュウリのピクルスを漬けて持っていたが絶品だった。


使われたワインビネガーも殺菌剤代わりに携帯していた。美味だったのでビネガーももらった。


日本ならピクルスと上質な酢でマコト相場は3000円。渡した抗生剤は2000円程度でハイポーションは拾ったもの。


これなら等価交換だろうと思っている。


次の日、2回の倍々複製で4倍に増やしたピクルスを使って簡単な朝食。


塩味で焼いた牛バラ肉とタマネギ、そして薄切りピクルスをフランスパンにはさんだ。


少しマヨネーズを足して、簡単サンドの出来上がりだ。


「ソフィー、これなら歩きならでも食べられるだろ」


「温泉地の食堂よりうまい。立ち食いするには贅沢すぎる味だぞ」


笑うばかりのソフィーだけど、彼女といると欲しい物が次々と手に入る。


「上質なピクルスは意外と手に入らないと思ってたし、ソフィーには助けられるよ」


「そうか。役立ててよかった」



気楽なことを話しながら手を繋ぎ、新しい食材が待つ首都ローマンに向かい下山した。

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